ジャパンケネルクラブでは、国際畜犬連盟が公認している355犬種のうち、206犬種を犬の形態・用途別に1~10のグループに分けて公認しています。
今回ご紹介する10Gは、優れた視力と走力で獲物を追いつめる視覚ハウンドのグループ。分類されている11犬種は視覚的に獲物を追う優れた目と、抜群の走力を生み出すしなやかな体の持ち主です。
また、10Gの犬種はスラリとした抜群のスタイルを誇る美犬ぞろいなところも、注目ポイントですよ!
Contents
視覚ハウンド(サイトハウンド)は視力・動体視力ともに優れている
10Gの犬種に共通する特徴の一つは「視力の良さ」です。
そもそも犬は近視という定説がありますが、これは間違いではありません。人間の視力に例えると犬の視力はだいたい0.2~0.3程度。遠くのものにピントを合わせるのが下手くそです。
「でも、うちの犬は投げたボールを簡単にキャッチできますよ?」と思われたかたもいることでしょう。この能力は視力が良いのではなく、動体視力が優れているのです。
● 動体視力 → 移動する1つの目標物を視線を外さずに持続して識別する能力
● 視力 → 対象物を細部まで見分ける能力
ところが視覚ハウンドに限っては、動体視力に加えて視力までもが優れています。視覚ハウンドの頭部はマズルが細長く、目が正面より少し後ろに位置していることが特徴。これにより、対象物にピントを合わせて距離を測れるのです。
おまけに視覚ハウンドの視野は270度以上。犬の視野はおよそ200~250度なので、いかに広範囲を見渡せるのかがわかりますよね。この能力により、視覚ハウンドはロックオンした獲物をしっかり目で捉え、どこまでも追いかけていけるのです。
視覚ハウンド(サイトハウンド)の走り方はチーターと同じ
10Gに分類されている11犬種は、すべて長い四肢と引き締まったボディの持ち主です。
見るからに速く走れそうな体つきをしていますが、視覚ハウンドの優れた走力にはさらなる秘密が。それは「ダブルサスペンションギャロップ」と呼ばれる走り方です。
ダブルサスペンションギャロップとは、前脚と後脚それぞれを揃えるようにし、背骨をバネのようにしならせて一瞬体が浮いた状態で走る型のことをいいます。……といわれても、なかなか想像がつきにくいですよね。
この走り方は、チーターが全力で走るときと同じです。どうりで速く走れるわけですよね。ちなみに足の速い犬種1~5位までを、10Gの犬種が独占しています。
● 1位/グレーハウンド
● 2位/サルーキ
● 3位/スルーギ
● 4位/ボルゾイ
● 5位/ウィペット
10Gに分類されている11犬種
アイリッシュ・ウルフハウンド
原産地/アイルランド
用途/狼や鹿狩りの猟犬
テリアのように可愛らしい顔立ちをしていますが、体重は50kg以上、体高は80cmもある超大型犬です。狼狩りに使われていたので獰猛な性格と思いきや、基本的には温厚な性質の持ち主で、意外にも番犬には向きません。
アザワク
原産地/マリ共和国及びニジェール共和国の北部国境
用途/猟犬・肉食獣の撃退
日本においては数年おきに1頭が登録される程度の希少なサイトハウンドです。独立心旺盛で束縛されることが大嫌いなため、よほど犬を飼い慣れている人でないと、この犬種の良さを引き出すことは難しいでしょう。
アフガン・ハウンド
原産地/アフガニスタン
用途/山岳地帯での狩猟犬
シルキーなロングコートをなびかせる姿は、神々しいと表現されるほどに美しい犬です。「アフガンはアホガン」。これはアフガン・ハウンドに認められなかった人による悪口で、本当は自分で判断して獲物を追いつめていく、独立心旺盛な賢い犬種です。
イタリアン・グレーハウンド
原産地/イタリア
用途/レーシングドッグ
グレーハウンドを小型化したわけではなく、古代エジプトの宮廷に存在していた歴史ある犬種です。小型犬・陽気な性格・意外に丈夫といった良い条件が揃っているわりに、人気ランキングでは20位前後とやや低迷。日本では見た目の好き嫌いが分かれる犬種です。
ウィペット
原産地/イギリス
用途/野ウサギ狩りの猟犬・レーシングドッグ
労働者階級がドッグレースを楽しむ目的で、グレーハウンドに数種類を掛け合わせて小型に品種改良した比較的新しい犬種です。10G唯一の中型サイズのため日本の家屋でも比較的飼いやすいですが、中身はまごうかたなきスプリンター。かなりの運動量が必要です。
グレーハウンド
原産地/イギリス
用途/狩猟犬・レーシングドッグ
ドッグレースでお馴染みの大型犬種。犬界最速としても知られており、最高時速は70km以上といわれています。身体能力は素晴らしいですが性質は落ち着いており、実は家庭犬として理想的。しかし、残念ながら日本国内でのブリードはほぼ期待できません。
スパニッシュ・グレーハウンド
原産地/スペイン
用途/野ウサギなど小型獣を狩る猟犬
1999年以降では2009年に1頭だけJKC犬種別犬籍登録された希少犬種です。見た目はグレーハウンドとよく似ていますが、ドッグレースで活躍している犬のように急加速はできません。とはいえ時速50km程度は出せる走力の持ち主です。
サルーキ
原産地/中東(現在のイラク南部~パレスチナ・エジプト)
用途/狩猟犬
人に飼われている犬としては最古の犬種といわれており、その歴史は約7000年前の古代エジプト文明にまで遡ります。中東の暑く乾燥した気候に適応しているためシングルコートですが、耳やシッポの美しい飾り毛が特徴です。
スルーギ
原産地/モロッコ
用途/狩猟犬
スルーギは2000年~3000年ほど前から人と暮らしていたと考えられていますが、あまり詳しいことはわかっていません。日本ではサルーキに比べると圧倒的に知名度が低く、JKCの犬種別犬籍登録においても1999年以降で登録されたのは2004年の6頭だけです。
ボルゾイ
原産地/ロシア
用途/狩猟犬・疑似餌を追うレースドッグ
すらりとした四肢と美しい被毛が特徴の超大型犬です。狼狩りに使われてきたとされていますが、JKCの犬種用途では狼狩りより野ウサギやキツネを追う狩猟犬だったとの記載があります。跳躍力に優れており、一般家庭の塀程度なら簡単に飛び越えてしまう犬種です。
ディアハウンド
原産地/イギリス
用途/鹿狩りの猟犬・レーシングドッグ
アイリッシュ・ウルフハウンドを鹿狩り用に改良したと考えられている超大型犬です。運動量が豊富なため毎日しっかり運動をさせる必要はありますが、性格は温和で他の犬との相性も難しくありません。日本では一年おきに1頭登録される程度の希少な犬種です。
室内で10Gの犬種を飼うときに注意することは?
10Gの犬種を飼育するうえで欠かせないのは、四季を通じた空調の管理です。中東やアフリカなどが原産地の犬種は寒さが苦手なため、冬場の対策が欠かせません。また、ロシアやアイルランド、イギリスが原産地の犬種は夏場の暑さ対策が必須です。
また、10G犬種として日本で最も飼育されているイタリアン・グレーハウンドは、とにかく骨折が多いことで知られています。といっても、骨が弱い犬種だからではありません。
あまりにもジャンプ力に優れているため、普通の犬なら飛び越えられない高さのケージを軽々と飛び越えたり、ソファーなどからジャンプした際に、着地に失敗して転倒したりすることがあるからです。
そのため、床を滑りにくくするのはもちろんのこと、クッション性のある床材を敷き詰めておきたいところ。さらにケージは天井のあるタイプがおすすめです。
また、大型の10G犬種は屋外ではアクティブでも、家の中ではまったりくつろぐことを好みます。そのため、寝転ぶ際に擦れてヒジ等にタコができないよう、低めのソファーや毛足の長いラグを用意してあげましょう。
10G犬種との暮らしには安全管理の徹底が欠かせない
10Gの犬種は普段は物静かでも、獲物(と判断したもの)をロックオンした途端、全速力で追いかけていくことがあります。
そのため、屋外に連れ出したときはもちろんのこと、庭で遊ばせている際も油断は禁物!「これだけの高さがあれば大丈夫だろう」という塀を軽々と跳び越えてしまうのが10Gの犬種です。
不測の事態を招かないためにも、10G犬種との幸せなドッグライフには安全管理の徹底が必要不可欠ですよ!