ジャパンケネルクラブ(JKC)では、国際畜犬連盟(FCI)により公認された355犬種のうち、206犬種を犬の形態や用途別に分類し、1~10のグループに分けて公認しています。
今回ご紹介する2Gは、番犬・警護・作業を目的とした使役犬――働く犬が集められているグループです。
「大柄で体力自慢の犬」「マッチョで強そうな犬」「小さな体で害獣駆除をしてきた犬」等々、犬好きならワクワクすること間違いなし。日本では小型でおとなしい犬が好まれがちですが、2Gのアクティブな犬種にもぜひ注目してください。
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2Gには小型~大型まで番犬・警護・作業のスペシャリストがズラリ
2Gの「使役犬」は、犬種の持つ特徴によって次の三種類に大別することができます。
● 警戒心の強い番犬
● 訓練性能に優れた警護犬
● 筋肉質で力の強い作業犬
使役犬とは「人間のために働く犬」のことです。1Gの牧羊犬・牧畜犬も使役犬ですが、2Gの犬種が働く場面は、より多岐にわたっているといえるでしょう。
また、このグループは力の強い大型犬種が多いことも特徴の一つです。そのため、大型犬種が人気の欧米ではメジャーでも、日本人にとって2Gの犬種の多くはあまり馴染みがありません。
とはいえ、日本の人気犬種ランキングで常に10位以内に入るミニチュアシュナウザーも、実は2Gのメンバー。バラエティー豊かな2Gの犬種は、知れば知るほど魅力的です。
2Gの使役犬には「役に立っている」充実感が必要
JKCの犬種概要を見ていくと、2Gの犬種には次のような用途が記載されています。
● 護衛犬
● 防衛犬
● 番犬
● 警察犬
● 警備犬
● 追跡犬
● 荷物運搬犬
● 牧羊犬
● 牧畜犬
● 狩猟犬・大型獣猟犬
● ソリ犬
● 水難救助犬
字面を見ただけでも、なかなかに重厚なラインナップですよね。しかし、以下のような用途が記載されている犬種も少なくありません。
● 家庭犬
● 伴侶犬
● サービス犬
● 作業犬
● コンパニオンドッグ
● ユーティリティードッグ
● 愛玩犬
このように、かつては仕事をさせることが第一目的だった2Gの犬種も、いまでは多くが一般家庭の犬として暮らしています。
もともと、仕事をこなす訓練性能の良さや群れを守る警戒心を併せ持っているわけですから、家庭犬として優れているのはある意味当たり前ですよね。
しかし、どんなに家庭犬としてふさわしくても、使役犬たちの遺伝子には「仕事をする」ことが刻みこまれています。何かをすることによって飼い主の役に立つことが、使役犬に分類されている犬種の能力を引き出してくれるのは間違いありません。
ユーティリティードッグという表現は言い得て妙。というのも、ユーティティとは「役に立つ」という意味だからです。
もしも2Gの犬種を家族に迎え入れるなら、暇を持て余してストレスを貯めこむ前に、何か仕事をさせることを考えてみましょう。
もちろん、かつての犬たちのように本当の意味での仕事である必要はありません。お子さんの乗ったソリを引かせたり、庭や畑を荒らす獣を追い払う等々――。
ちょっとした仕事をこなすことが、2G犬種の充実感につながるはずです。
日本で飼われている2Gの犬種
2Gは「使役犬」という性質から、分類されている犬種の多くは中型~大型犬です。そのため、日本ではなかなかお目にかかれない犬種も多く、犬種一覧を眺めていても、なかなかピンとこないことも…。
しかし、日本でも飼育頭数の多い2Gの犬種には、家庭犬としてだけではなく実際の現場で使役犬として活躍している犬もいます。
ドーベルマン
原産地/ドイツ
用途/警備犬・作業犬・コンパニオンドッグ
筋肉ムキムキで強面の印象のあるドーベルマンですが、驚くほど家庭犬としても優秀な犬です。ただしそれは、きちんとシツケやトレーニングができている場合に限ります。
とても賢く訓練性能抜群で警戒心が強いこの犬種は、きちんと訓練しないと手の付けられない危険な犬になることも…。
また、かつては断耳・断尾されることが一般的でしたが、現在は動物愛護の観点から本来の垂れ耳・細く長い尾の個体も増えつつあります。
バーニーズマウンテンドッグ
原産地/スイス
用途/牽引用の犬・ガードドッグ・牛追い犬
主に山岳地帯で牛追い犬として活躍していたバーニーズマウンテンドッグは、とてつもない体力の持ち主です。
また、一般的に犬は子犬期は大暴れしても、1歳を迎える頃から落ち着きがみられるようになるといわれますが、この犬種に関しては当てはまらないと考えたほうがよいでしょう。
2歳を過ぎた大きな体で子犬のようにやんちゃに動き回り、家の中を破壊されることも珍しくありません。しかし、それでも一度飼ったらバーニーズ以外は考えられない人が続出するほど、性格の良い犬種として知られています。
ミニチュアシュナウザー
原産地/ドイツ
用途/家庭犬・愛玩犬
ここ数年、犬種の人気ランキングでは常に10位以内に入る小型犬種です。もともとは、農場を荒らすネズミなどの小型害獣を退治するために作出されました。
いまではネズミ退治に使われることはなくなりましたが、シュナウザーカットの特徴である長い眉毛とヒゲは、ネズミの反撃から顔を守るために生み出されたものです。
物覚えが良いのでトレーニングしやすい犬ですが、とても甘えん坊で常に家族の真ん中にいたがる性格のため、長時間の留守番には向きません。
ミニチュアピンシャー
原産地/ドイツ
用途/家庭犬・コンパニオンドッグ
ドーベルマンを小さくしたような姿をしていますが、ミニチュアピンシャーとドーベルマンは別の犬種です。
害獣駆除をしていた犬がミニチュアピンシャーの元になったといわれるように、体は小さくても相手に怯むということがありません。どんな相手に対しても果敢に向かっていく勇敢さは、時としてトラブルを引き起こす原因にもなります。
また、小型犬でも体力は中型犬から大型犬なみといわれるだけあり、ちょっとやそっとの運動ではなかなか満足しないことも…。しかし、小さな体からは想像もつかないほどタフでエネルギッシュだからこそ、魅力の塊ともいえる犬種です。
室内で2Gの犬種を飼うときに注意することは?
日本で飼育頭数の多い2Gの犬種は、ミニチュアシュナウザーやミニチュアピンシャーなどの小型犬がほとんどです。しかし、小型犬だからとあなどるのは厳禁!なぜなら、体は小さくても中身はまごうかたなき使役犬だからです。
特にミニチュアピンシャーは、見た目は小型犬でも体力は中型犬や大型犬なみ。毎日しっかり運動させてもなお、元気に室内を跳ね回るエネルギッシュな犬種です。そんな犬種が運動不足などのストレスを抱えてしまったら、どんなことになるかは簡単に想像できますよね。
超大型犬から小型犬まで、2Gの犬種は室内でも飼育できます。もちろん広々とした室内や庭があるに越したことはありませんが、日本の一般的な家屋でも飼育できないわけではありません。
ただし、そのためには精神面と肉体面の両面において、ストレスを貯めさせないことが必要不可欠です。
また、2Gの犬種を室内飼育するうえで大切なのは「まぁ、いいか」の精神です。というのも、2Gの犬たちは良く言えば大らか、悪く言うなら大雑把。何かを壊したりひっくり返してしまうのは日常茶飯事だからです。
2Gの特性を理解して家族に迎えるなら、壊されることもまた楽しい!
JKCの犬種別犬籍登録頭数(2022年)の大型犬部門には、2Gの犬種であるバーニーズマウンテンドッグ、ドーベルマン、グレートピレニーズが10位以内にランクインしています。
一般的な家屋ではなかなかの存在感を発揮する犬種ばかりですが、すぐそばに大型犬がいる生活にはドタバタがつきものです。何かを壊されてもそれを楽しむことが、2Gの犬種と暮らす極意なのかもしれませんね。