ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種3Gには、キツネやネズミなどの小型獣を狩ることを目的に改良された、テリア種のみ32犬種がラインナップされています。
1G・2Gではいろいろなバリエーションの犬種名が並んでいますが、3Gに分類されている犬種名には、最後に必ず「テリア」とついているのが特徴です。
日本では数種類のテリアしか知名度は高くありませんが、世の中にはもっともっとたくさんのテリア種が存在しています。
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「テリア」そのものは有名だけど、日本ではあまり人気がない?
「テリア」という言葉はフランス語で、その語源は土や大地を意味するラテン語のテラといわれています。テリア種は、地中に生息するネズミやアナグマを狩るために改良された、土掘りが得意な猟犬です。
まさしく、テリアの名を冠するのにふさわしい犬といえますよね。
日本では小型犬のイメージが強いですが、テリア種には中型犬や大型犬もいます。欧米に比べると日本は住環境の問題で中型犬や大型犬を飼いにくいため、小型犬中心になってしまうのは仕方がないことなのでしょう。
ちなみに、JKCの犬種別犬籍登録数(2022年)で20位以内に入っているテリア種は、ヨークシャーテリアとジャックラッセルテリアの2犬種のみです。
30位以内まで広げるとボストンテリアの名がありますが、この犬種が分類されているのは3Gではなく9Gの愛玩犬グループ。なんともややこしい話ですよね。
さて、テリア種には小型犬が多いわりに、日本での人気はどうもいまひとつ。その理由は、猟犬としての資質が時として強く出過ぎてしまうところにあると考えられます。
テリアは明るく活発な猟犬だけど、頑固なところが玉にキズ
テリアはキツネ・ネズミ・アナグマなどの小型獣を狩るために、様々な改良が重ねられてきた歴史を持つ猟犬です。
そのため、すばしっこく逃げ回る獣を追いつめる敏捷さはもちろんのこと、獲物に反撃されてもひるまない闘争心と警戒心の強さも併せ持っています。
この闘争心と警戒心の強さは番犬にぴったりですが、家庭犬の素養としては「頑固で言うことを聞かない」「自己主張が強い」などのネガティブな要因になってしまうことも…。
初めて犬を飼う人にテリアは難しい――といわれることがありますが、こうした性質を考えればあながち間違いではなさそうです。
とはいえ、テリアは基本的に明るく遊び好きで活発な犬種。しっかりシツケて飼い主と適切な主従関係を築くことができれば、素晴らしい家庭犬になることは間違いありません。
才気あふれるテリア種を家族の一員として良い犬に育てられるかは、ひとえに飼い主さんのシツケに対する本気度が試されているといえるでしょう。
日本で飼育頭数の多いテリア種
この章では、日本で飼育されている代表的なテリア種を、JKCの犬種別犬籍登録数の多い順に5種類紹介します。すべて原産地がイギリスであることからもわかるように、テリア種の多くはイギリスで作出されました。
しかし、イギリス以外にアイルランド・アメリカ・オーストラリア・ドイツ・チェコ・日本が原産地のテリアもいます。日本ではあまり知名度が高くないことが残念ですが…。
ヨークシャーテリア(ヨーキー)
原産地/イギリス
ダーク・スチール・ブルーと呼ばれる独特な毛色が美しいヨーキーは「動く宝石」と呼ばれています。日本で最も人気のあるテリアといっても過言ではないでしょう。
ヌイグルミのように可愛らしい顔立ちは上品でおっとりとした性格に見えますが、中身はちゃんとテリアです。甘えん坊で寂しがり屋の反面警戒心が強く、何事にも簡単にひるむことはありません。
しかし、この見た目と性質のギャップこそ、ヨーキー最大の魅力といえます。
ジャックラッセルテリア
原産地/イギリス(改良国オーストラリア)
1994年に公開された映画『マスク』のマイロ役で日本でも人気が高まったジャックラッセルテリアは、一見すると愛くるしさの塊です。
しかし、優れた身体能力に加えて一度食らいついたら離そうとしない頑固な性質は、これぞまさしくテリア種と呼べるものでしょう。家庭犬として飼われていても、狩猟本能をかなり色濃く残している犬種です。
また、小さな体からは想像もつかないほどの体力の持ち主でもあります。大型犬を飼ったつもりで運動させないとパワーがあり余ってしまい、手が付けられなくなるかもしれません。
ウエストハイランドホワイトテリア(ウエスティ)
原産地/イギリス
全身を覆う真っ白な被毛、黒いつぶらな瞳、ピンと立った耳とシッポが可愛らしいテリアです。好奇心いっぱいに動き回る姿は見るからに愛らしく、陽気な性格と相まって家庭犬に向いたテリアといえるでしょう。
しかし、そこは腐ってもテリア。マイペースを通り越して頑固なところもあり、陽気だからといって誰にでも愛嬌をふりまくわけではありません。
ピュアホワイトの被毛を常に美しく保つためにも、日頃から体に触られることにしっかり慣らしておくことが大切です。
ノーフォークテリア
原産地/イギリス
ノーフォークテリア最大の特徴は、耳が垂れていることです。立ち耳もいると勘違いされることがありますが、耳が立っているのはノーリッチテリアであり、ノーフォークテリアではありません。
この2犬種はかつては同じ犬種として扱われていましたが、1964年に分割されてからは別犬種として公認されています。
ノーフォークテリアは何事にも物怖じしない豪胆な気質の持ち主ですが、興味のあるものを追いかけはじめたとたん、周囲が見えなくなることも…。とはいえケンカ好きというわけではなく、基本的には愛らしい性格の持ち主です。
ミニチュアブルテリア
原産地/イギリス
筋肉質の体、卵型の頭部、ユーモラスな顔立ちが特徴的なテリアです。
飼い主に対して非常に愛情深い犬ですが、興奮しやすい性質が玉に瑕といえるでしょう。ちょっとしたことで頑固さが先走ってしまうことがあるため、子犬の頃からしっかりシツケることがなによりも重要です。
ミニチュアブルテリアと暮らすなら、この犬種は猟犬だけではなく闘犬としてのルーツも併せ持っていることを忘れるべきではありません。
気が乗らないと頑固な気質が前面に出てトレーニングを嫌がることもあるため、飼い主には常に冷静さと根気のよさが求められます。
室内でテリア種を飼うときに注意すべきこと
テリア種の犬はもともと小型獣の猟犬であり、基本的にとてもアグレッシブな性質の持ち主です。だからこそ、室内飼育をするうえで気をつけなければいけないことがあります。
床をすべりにくくしておく
家の中でも激しく走り回ったり、やたらとジャンプすることがあります。
電化製品のコードやコンセントを隠しておく
感電による事故を防ぐためにも、コード類やコンセントはあらかじめ見えない工夫をしておくことが必要です。
テリアの身体能力を低く見積もらない
「ここなら届くはずがない」という高さでも、ジャンプ力抜群のテリア種には届いてしまうことがあります。
同じ部屋に小さな生き物を同居させない
小鳥・ハムスター・ウサギなどのペットはテリアの狩猟本能を刺激します。不測の事態を招かないためにも、テリアと小動物を同じ部屋で飼育するのはやめておきましょう。
テリアの良さは本気でシツケをしてこそ引き出される
3Gに分類されているテリア種に共通しているのは、猟犬としての活発さと抜群の体力、そして時には頑固になってしまうほどの意志の強さです。
そういった性質から扱いにくいというネガティブなイメージをもたれることもありますが、テリア種本来の魅力を引き出すには、中途半端なシツケでは足りません。
テリアの多くはとても可愛い見た目をしていますが、本当の良さは内面の性質に隠されています。