ジャパンケネルクラブでは、国際畜犬連盟により公認された355犬種のうち、206犬種を1~10のグループに分けて公認しています。

基本的にどのグループも犬種が複数属しているものですが、今回ご紹介する4Gに限っては、なんと「ダックスフンド」一犬種のみ。

それだけダックスフンドという犬種には、他とは異なる特徴が盛りだくさんなのでしょう。

この記事では、誰もが知っているメジャーな犬種のダックスフンドについて、いろいろな角度からご紹介していきます。

ダックスフンド?それともダックスフント?

JKCの4Gには「ダックスフンド」と記載されています。しかし、「あれ、ダックスフントじゃないの?」と思われたかたもいらっしゃることでしょう。

「ダックスフンド」と「ダックスフント」のどちらが正しいのかといえば――実は両方とも正解です。

「Dachshund」は英語読みすると「ダックスフンド」ですが、ドイツ語読みすると「ダックスフント」になります。

ダックスフンドの原産地はドイツなので「ダックスフント」が本家本元と言えなくもありません。しかし、JKCの登録が「ダックスフンド」とされていることもあり、日本では「ダックスフンド」のほうが一般的です。

ダックスフンドと名づけられたのはアナグマを狩る猟犬だから

Dachshundの「Dachs」はアナグマで、「Hund」は犬を意味するドイツ語です。つまり、ダックスフンドを直訳するとアナグマ犬となるわけですね。

アナグマはイタチ科の食肉類で、ヨーロッパのほぼ全域に生息しています。地面に穴を掘って巣穴の中で暮らす生態のため、アナグマを狩るには巣穴に潜り込まなければなりません。

だからこそ、アナグマを穴から追い立てる役回りとして、ダックスフンドの胴長短足のフォルムがとても有効なのです。

とはいえ、ダックスフンドの元になった犬は胴の長さも足の長さもごく普通でした。それを現在のような体型にまで確立させたのは、ダックスフンドの繁殖に熱心だったDeutsche Teckelklub(ジャーマンダックスフンドクラブ)の並々ならぬ努力と厳しい基準によるものです。

ダックスフンドのサイズは3種類

4Gに属している犬種はダックスフンドだけですが、サイズは3種類に分類されています。
スタンダード・ダックスフンド
・胸囲/オス37cm以上47cm以下 メス35cm以上45cm以下
・体重/9~12kg
ミニチュア・ダックスフンド
・胸囲/オス32cm以上37cm以下 メス30cm以上35cm以下
・体重/5kg以下
カニンヘン・ダックスフンド
・胸囲/オス27cm以上32cm以下 メス25cm以上30cm以下
・体重/3.2~3.5kg

JKCの犬種標準のサイズ欄には、多くの場合「体高」が記載されています。しかし、ダックスフンドのサイズ欄には「胸囲」のみが記されており、これはなかなかのレアケースといえるでしょう。

(※胸囲だけではサイズ感がつかみにくいため、体重については一般的な認識をもとにおおよその数値を記載しています)

ダックスフンドの体高

ダックスフンドは胴長短足でさえあれば、どのような体型でも良いわけではありません。理想とされる体高(地面から背中までの高さ)と胴の長さ(体長)の比率は次の通りです。

体高1:体長1.7~1.8

この比率はブリーディングをするうえで重要な指針となります。

なぜならダックスフンドの特徴である胴長短足を追い求めるあまり、理想の比率より体高が短い、あるいは体長が長くなり過ぎると危険だからです。

長すぎる胴や短すぎる足は成長後の足腰に過度の負担をかけてしまうため、椎間板ヘルニアが重症化して歩けなくなるリスクが高まります。

ダックスフンドの毛質と抜け毛の関係

ダックスフンドには、大きく分けて3種類の毛質があります。

● スムースヘアード → なめらな手触りでビロードのように艶のある短毛
● ロングヘアード → 柔らかくわずかにウェーブのある艶やかな長毛
● ワイヤーヘアード → スムースより長くロングより短い粗めの剛毛

スムース、ロング、ワイヤーの3種類とも、ダックスフンドの被毛はすべてダブルコートです。そのため、どの毛質も抜け毛の量はかなり多く、抜け毛の少ないダックスフンドはいません。

ロングコートのダックスが一番抜け毛が多いと思われがちですが、これは単に1本1本の被毛が長いため、他の毛質よりたくさん抜けているように見えています。反対にワイヤーヘアードの抜け毛は比較的少なく見えますが、抜け毛が生えている毛に絡んで落ちにくいからです。

抜け落ちる毛が少ないからといって被毛の手入れを怠ると、あっという間に毛玉ができることになるでしょう。毛玉は取り除くのに手間がかかるのはもちろん、犬に痛い思いをさせることもあります。

では、スムースヘアードならロングやワイヤーのように抜け毛で苦労しないかといえば、残念ながらそんなに都合よくはいきません。スムースの被毛は生えてから抜け落ちるまでのサイクルが短いため、想像している以上にパラパラ抜け落ちるのです。

つまり、どの毛質のダックスフンドを飼ったとしても、こまめな被毛のお手入れは欠かせない、というわけですね。

ダックスフンドの性格は毛質によって違う?

ダックスフンドの好奇心旺盛で人懐っこい性格は、非常に家庭犬向きといえるでしょう。しかし、毛質の違いによって性格や性質にはそれぞれの傾向があるといわれています。

その理由は、スムース、ロング、ワイヤーそれぞれを作出する過程で、使われた犬種に違いがあるからです。
スムースヘアードの性格
スムースヘアードには作出の過程でピンシャー系の犬が使われました。ダックスフンドの中では最も古株であり、猟犬として活躍してきた歴史があります。

そのため猟犬としての性質が強く、勇敢で活発な性質の持ち主です。しかしその反面意思を曲げない頑固さもあり、時として無駄吠えが多くなったり少々攻撃的になることも…。

また、小動物を追いかけたくなる本能が強いことも、猟犬の気質が強いスムースの特徴といえるでしょう。
ロングヘアードの性格
ロングヘアードには作出の過程でスパニエル系の犬が使われました。スパニエルは鳥猟犬のため、アナグマを追いつめるときのように直接獲物と対峙することがありません。

その影響から、ダックスフンドの中では最も温和な性格をしているといわれています。

3種類のコートの中で最もロングヘアードの人気が高いのは、明るく素直な性格が家庭犬として理想的だからなのでしょう。
ワイヤーヘアードの性格
ワイヤーヘアードには作出の過程でシュナウザーやテリア系の犬が使われました。あの独特の粗い毛質を見れば、なるほどという感じがしますよね。

また、シュナウザーやテリア種の影響を受けているのは毛質だけではありません。頑固なところやちょっとしたことにはひるまない気の強さも、しっかり受け継いでいます。

とはいえ、きちんとしつけることで従順にふるまえる犬でもあるため、飼い主を飽きさせない性質の持ち主ともいえるでしょう。

ダックスフンドを飼うならフローリングにはマットを敷こう

ダックスフンドは胴長短足という独特の体型から、椎間板ヘルニアを発症しやすい犬種です。滑りやすい床材の室内で暮らしていると、歩くたびに踏ん張らなければならず、その動きがダックスフンドの足腰に負担をかけることに…。

また、活発に走り回っているうちによろけたり転倒することで、足腰が立たなくなるほど椎間板ヘルニアが重症化することもあります。

ダックスフンドを家族に迎えると決めたら、床材の見直しは必須です。フローリングの場合は滑り止め効果のあるマットを敷くだけでも、かなり足腰の負担を軽減できますよ。