ジャパンケネルクラブ(JKC)では、国際畜犬連盟(FCI)により公認された355犬種のうち206犬種を犬の形態や用途別に分類し、1~10のグループに分けて公認しています。
今回ご紹介するのは「原始的な犬とスピッツ」が属している第5グループ(5G)です。
原始的な犬と言われてもなんだかピンとこないかもしれませんが、私たち日本人にとって馴染み深い日本犬の多くは、このカテゴリーに分類されています。
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5Gに分類されているのは犬の祖先であるオオカミに近い原始的な犬種
5Gに分類されている原始的な犬とは、遺伝子的に犬の祖先であるオオカミに近い犬のことです。
犬の祖先については「オオカミだ」「いや、オオカミとコヨーテの混血だ」「ディンゴが混ざっている」等々、いろいろな仮説がたてられてきました。
しかし、近年の動物行動学・生物学・分子系統学と遺伝子研究の成果により、オオカミ以外のイヌ属の遺伝子はわずかであることが判明しています。
とはいえ、いくらオオカミという共通の祖先を持っていても、現在の性質や形態に至るまでの道のりは、犬種によって様々です。何から何まで品種改良を重ねた結果いまの姿にたどりついた犬種がいる一方、大きく性質を変えることなく現代まで続いてきた犬種もいます。
5Gに分類されているのは、まさしく後者。古くから人と暮らしながらも、形態や性質を大幅に変えることなく命をつないできた犬種です。
「遺伝子的にオオカミに近い」とは、見た目のことだけじゃない
遺伝子的にオオカミと近いだけあり、5Gには体の特徴や気質などにオオカミを彷彿とさせる犬種が揃っています。
オオカミを思わせる犬種といえば、真っ先にシベリアンハスキーが思い浮かびますよね。シベリアンハスキーは、もちろん5Gに分類されている犬種です。
しかし、オオカミとは似ても似つかない外見のチャウチャウやポメラニアンもまた、5Gに分類されています。
なんとも不思議な気がしますが、この2犬種にはジャーマンスピッツという石器時代から続く古い犬種が関わっており、それが遺伝子に影響しているのは間違いなさそうです。
「原始的な犬=遺伝子的にオオカミに近い」とは、見た目のことだけを言っているのではないことがよくわかりますよね。これぞまさしく遺伝子の妙、といったところです。
原始的な犬に共通するオオカミから受け継いだ気質とは?
5Gに分類されている原始的な犬には、オオカミから性質や身体能力を受け継いでいるものが多くみられます。
● 群れのリーダーに対して忠実に従う
● 警戒心が強く自立心旺盛
● 戦闘能力に優れている
こうした性質や身体能力を受け継いでいる原始的な犬の多くは、猟犬や番犬として古くから重宝されてきました。
群れのリーダーに忠実で、戦闘能力に優れている――。なんだかとても飼いやすい気がしますが、良い犬に育てるには飼い主がきちんと群れのリーダーになることが必要です。
正しく主従関係が築けないと、5Gの犬は飼い主をリーダーとは認めてくれません。リーダー不在の犬は総じて精神的に不安定になります。オオカミと遺伝子的に近い原始的な犬は、なおのことストレスをため込むことになるでしょう。
世界各国の5Gに分類されている原始的な犬
遺伝子的にオオカミに近いと聞くと、なんとなくシベリアンハスキーやアラスカンマラミュートといった、見た目がオオカミ寄りの犬をイメージしがちですよね。
しかし、原始的な犬は主に北半球を中心に、いろいろな原産地の犬がいます。中でも注目してほしいのは日本が原産地の原始的な犬。
日本犬には文化財保護法に基づき6犬種が天然記念物として指定されていますが、そのすべてが5Gに分類されています。
日本が原産地の原始的な犬
日本が原産地の5Gの犬種は全部で8種類です。
● 秋田犬
● 甲斐犬
● 紀州犬
● 四国犬
● 柴犬
● 北海道犬
上記の6種類が天然記念物に指定されている犬種です。「あれ、8種類じゃないの?」と思われたかたもいらっしゃることでしょう。
● アメリカン・アキタ
● 日本スピッツ
上記の2犬種は日本が原産地の原始的な犬ですが、天然記念物には指定されていません。
アメリカンなのにアメリカン・アキタは日本が原産地の犬種
アメリカン・アキタの元になったのは日本の秋田犬です。第二次世界大戦後に進駐軍が多くの秋田犬をアメリカに持ち帰り、その後独自の発展を遂げたことで別犬種として登録されました。
柴犬は最もオオカミに近い!?
アメリカの大学が行った調査によると、5000匹以上の犬の遺伝子を調べた結果、オオカミとの類似性を最も多く持っていたのは柴犬だという結果が出ました。見た目だけならハスキーやマラミュートのほうがオオカミに似ているのに、つくづく遺伝子は不思議です。
アメリカ大陸が原産地の原始的な犬
アメリカ大陸が原産地の5Gの犬種は全部で4種類です。
● アラスカンマラミュート(アメリカ合衆国)
● シベリアンハスキー(アメリカ合衆国)
● ショロイツクインツレ(メキシコ)
● ペルービアン・ヘアレス・ドッグ(ペルー)
アメリカ合衆国が原産地のアラスカンマラミュートとシベリアンハスキーは、極寒の地でも生きられる保温性に優れた被毛の持ち主です。
これに対し、ショロイツクインツレとペルービアン・ヘアレス・ドッグはヘアレスとコーテッドの両方が存在しています。かなり両極端ですよね。
ヨーロッパが原産地の原始的な犬
ヨーロッパが原産地の5Gの犬種は全部で10種類です。
● イビザン・ハウンド(スペイン)
● キースホンド(ドイツ)
● グリーンランド・ドッグ(グリーンランド)
● サモエド(ロシア)
● ジャーマン・スピッツ(ドイツ)
● チルネコ・デルエトナ(イタリア)
● ノルウェジアン・エルクハウンド・グレー(ノルウェー)
● ファラオ・ハウンド(マルタ)
● ポメラニアン(ドイツ)
● ラポニアン・ハーダー(フィンランド)
上記犬種の中で日本でも知名度が高いのは、サモエドとポメラニアンぐらいでしょう。その他の犬種は、よほどの犬好きでもほとんど聞いたことのないレア犬種のオンパレード。
日本国内のドッグショーでもまずお目にかかれないため、もしも実物を見られたらかなりラッキーですよ!
アジアが原産地の原始的な犬
アジアが原産地の5Gの犬種は全部で4種類です。
● コリア・ジンドー・ドッグ(韓国)
● タイ・リッジバック・ドッグ(タイ)
● タイワン・ドッグ(台湾)
● チャウ・チャウ(中国)
コリア・ジンドー・ドッグは日本犬と似たフォルムです。そしてタイワン・ドッグはどちらかといえばタイ・リッジバック・ドッグに特徴が似通っています。
しかし、コリア・ジンドー・ドッグとタイ・リッジバック・ドッグは輸送や交通難の点から他の地域まで広げた交配が難しく、あまり交雑せずに血を受け継いできた可能性が高そうです。
アフリカが原産地の原始的な犬
アフリカが原産地の5Gの犬種は1種類のみです。
● バセンジー(中央アフリカ)
吠えない犬として知られているバセンジーですが、実際は笑い声のようにも聞こえる奇妙な高い声で鳴きます。
室内で原始的な犬を飼うなら抜け毛対策をしっかり考えよう
日本で飼育されている原始的な犬は、日本犬・サモエド・ハスキーなどの、いわゆるダブルコートで抜け毛がとても多い犬種ばかりです。
そのため、お家の中でこれらの犬種と暮らすのであれば、抜け毛の問題を避けて通ることはできません。換毛期の抜け毛はすさまじいですが、換毛期以外にもかなりの抜け毛を覚悟しておくべきでしょう。
だからこそ、原始的な犬を室内飼育するなら掃除のしやすさは必須です。
床の上に物を置きすぎると掃除機がかけにくくなるため、収納に工夫をこらすなどしてササっと掃除ができるようにしておくと、愛犬の抜け毛によるストレスを軽減できますよ!