ジャパンケネルクラブでは、国際畜犬連盟が公認している355犬種のうち、206犬種を犬の形態・用途別に1~10のグループに分けて公認しています。

今回ご紹介する6Gは、鋭敏な嗅覚で獲物をどこまでも追跡し、見つけると大きな吠声でハンターに知らせる嗅覚ハウンドのグループです。

驚くほどの集中力と大胆不敵な行動力を併せ持つ嗅覚ハウンドには、玄人好みの犬種がずらり。クセモノ揃いの6Gにぜひ注目してください。

6Gに分類されている嗅覚ハウンドは声の大きな追跡名人

6Gに分類されている嗅覚ハウンド(セントハウンド)最大の特徴は、獲物のニオイをどこまでも追跡する鋭敏な嗅覚と、驚くほどの集中力です。さらには獲物を見つけたときの大きな吠声も、6G犬種の持ち味といえるでしょう。

そんな6Gに分類されている嗅覚ハウンドは、全部で11犬種です。

● アメリカン・フォックスハウンド
● グランド・バセット・グリフォン・バンデーン
● ダルメシアン
● バセット・ハウンド
● ハリア
● ビーグル
● プチ・バセット・グリフォン・バンデーン
● ブラック・アンド・タン・クーンハウンド
● ブラッドハウンド
● ポルスレーヌ
● ローデシアン・リッジバック

日本でもお馴染みの犬種から、図鑑でしかお目にかかれない珍犬種まで、個性豊かな面々が揃っています。

かつては猟犬として大活躍していた6Gの犬種ですが、その多くは今では愛される家庭犬となりました。とはいえ、抜群の嗅覚と集中力を活かし、いまも実際の現場で活躍中です。

特に、空港などで動植物検疫探知犬として働くビーグルの姿は、テレビ番組などでもよく取り上げられていますよね。

嗅覚ハウンドは何かに集中すると飼い主の声が聞こえなくなることも…

6Gの嗅覚ハウンドは、総じて安定した気質の持ち主といわれています。しかし、だからといって大人しいわけではありません。

獲物を追跡する過程で足場が悪くなっても、イバラなどの茂みが立ちふさがったとしても、平気で突っ切っていく勇敢さと大胆さを持ち合わせています。

また、多くの猟犬と一緒に獲物を追跡してきた歴史から、人や動物など比較的いろいろな相手に対して友好な態度で接することができる犬です。

こうした性質は家庭犬として好ましいことは間違いありませんが、優れた嗅覚と集中力の高さを持つがゆえに、長所であるはずの性質が少々裏目に出てしまうことも…。

というのも、ニオイに集中するあまり、往々にして飼い主の声が届かなくなってしまうことがあるからです。そのため、6Gの犬種には「飼い主のコマンドに集中する」トレーニングが欠かせません。

6Gの嗅覚ハウンドが垂れ耳ばかりなのはなぜ?

6Gに分類されている11犬種は、すべて垂れ耳です。これは嗅覚ハウンドが獲物のニオイを追跡し、隠れ場所から追い立てる際に巣穴へと潜り込むためだといわれています。

垂れ耳のほうが獲物の巣穴に突入する際、耳の中に土が入りにくいというわけですね。

また、立ち耳と垂れ耳を比べた場合、立ち耳のほうが聴覚に優れているのは間違いありません。そのため、聴覚より嗅覚に集中させる目的で、垂れ耳の犬を優先的に交配したとも考えられています。

日本で飼われている6Gの犬種

6Gに分類されている11犬種の中で、2002年以降から毎年ジャパンケネルクラブ(JKC)に犬籍登録されているのは次の4犬種です。

ビーグル

原産地/イギリス
用途/獣猟犬・使役犬・家庭犬

6G犬種の中で、日本での人気ナンバーワンはビーグルです。大きな垂れ耳と愛らしい顔立ちに、天真爛漫で愛情深く友好的な性格。スヌーピーのモデルになったことでも知られるこの犬種は、まさに理想的な家庭犬といえそうですよね。

ただし、ビーグルを飼ううえで最も気をつけなければいけないのはその食欲です。食いしん坊という言葉では済まされないほど、ビーグルは食べ物に執着する傾向にあります。そのため、きちんと体重の管理をしなければ、あっという間に肥満体型になることも…。

また、散歩中の拾い食いやゴミ箱のイタズラなど、ビーグルは食にまつわる問題で飼い主を悩ませることがあります。

ダルメシアン

原産地/クロアチア・ダルメシア地方
用途/同伴犬、家庭犬

ダルメシアンは馬車の伴走犬としての歴史がよく知られているため、6Gの嗅覚ハウンドに分類されているのはなんだか不思議な気がしますよね。

実際のところ、ダルメシアンの起源については不明な点が多く、様々な説が存在しています。とはいえ、猟犬やネズミ駆除に使われたり馬車と併走して人や荷物を護るなど、マルチに活躍してきた犬であるのは間違いありません。

明るく元気で人や動物に対して友好的なダルメシアンですが、ある程度飼い主を選ぶ犬ともいえるでしょう。というのも、馬車と併走できる体力と走力の持ち主のため、毎日しっかり運動させる必要があるからです。

バセット・ハウンド

原産地/イギリス
用途/獣猟犬・家庭犬

長い垂れ耳、シワの寄った胴長短足の体、だるんと垂れた口元など、バセット・ハウンドは実に個性的な見た目の犬です。

そして見た目そのままに、とてもマイペースでのんびり屋の犬種といえるでしょう。同じく胴長短足のダックスフンドは見た目に反してとても俊敏に動ける犬ですが、この犬は活発に動くことをあまり好みません。

基本的に温厚な犬ですが、だからといって従順ではないところが、バセット・ハウンドの特徴ともいえそうです。

嗅覚が鋭敏な6G犬種の中でも屈指の嗅覚を誇るため、ニオイに夢中になると飼い主の声が耳に入らないことも…。そのため、バセット・ハウンドには嗅ぐのをやめさせるトレーニングが必要です。

プチ・バセット・グリフォン・バンデーン

原産地/フランス
用途/野ウサギ狩りの猟犬・家庭犬

大きな垂れ耳、胴長に短めの四肢、硬めでフサフサした被毛に人懐っこそうな顔立ちと、可愛らしさ満載のプチ・バセット・グリフォン・バンデーン。

しかし、この犬はJKCの犬種解説に「山野では悪魔、家の中では天使」と記載されているほど、中身はまごうかたなき猟犬です。

天真爛漫で元気いっぱい、飼い主に対しても愛情深く接する犬ですが、だからといって従順なわけではありません。怒られようが叱られようが、やりたくないことはやりたくない!という頑固な一面を持っています。

そのため、子犬の頃から一貫したトレーニングを続け、飼い主が主導権を持ち続けることが大切です。

室内で6Gの犬種を飼うときに注意することは?

嗅覚に優れた6Gの犬種を室内飼育するなら、誤飲や誤食に注意する必要があります。イタズラされないように食べ物を隠したとしても、ちょっとやそっとでは嗅覚ハウンドの鼻を誤魔化すことはできません。

食べ物のニオイにつられてゴミ箱をひっくり返す、食品庫に入り込んで盗み食いをするといったイタズラは、6G犬種の得意技です。

体に害のないものをお腹いっぱい盗み食いした程度なら、数日間の下痢くらいで済むかもしれません。しかし、竹串や爪楊枝、あるいはタマネギの皮など犬が絶対に口にしてはいけないものまで食べてしまうと、最悪は命にかかわることも…。

6Gの犬種を室内飼育するなら、机の上などに食べ物を出しっぱなしにしないことと、頑丈なゴミ箱の用意が必須です。

6Gの犬種は食いしん坊!悪癖を叱るよりイタズラされない工夫を

犬の多くは食いしん坊ですが、6Gの犬種の食欲は「執着」と呼ぶべきレベルです。食べ物のニオイにつられた愛犬にイタズラをさせないよう、日頃から食品の管理は徹底しましょう。

ゴミ箱をひっくり返されたりするとつい叱りたくなりますが、6Gの犬種は怒られても少々のことではへこたれません。

嗅覚ハウンドがニオイを追跡してしまうのは本能のなせる業。悪癖を叱るより、イタズラをされないように気をつけるほうがずっと建設的です。