ジャパンケネルクラブでは、国際畜犬連盟が公認している355犬種のうち、206犬種を犬の形態・用途別に1~10のグループに分けて公認しています。

今回ご紹介する7Gのポインター・セターは、どちらも獲物を見つけた際の行動に特徴のある犬種のグループ。静かにポイント(片方の前足を上げる)をする、あるいはセット(伏せ)をすることで、獲物の位置をハンターに教える鳥猟犬のグループを紹介します。

同じ鳥猟犬であるポインターとセター(セッター)の違い

ポインターとセターはどちらも鳥猟で活躍していた猟犬です。獲物を見つけるとハンターに知らせるところまでは同じですが、知らせ方に違いがあります。

● ポインター → 獲物を見つけると立ち止まり、少し身をかがめて片方の前足を上げる(ポインティング)
● セター → 獲物を見つけると伏せ(セット)の姿勢をとる

この行動の違いから、それぞれ「ポインター」「セター(セッター)」という名前がつけられているのです。

ポインターとセターにはもう一つの鳥猟犬スパニエルが関わっている

セターとポインターは、ともに作出の過程でスパニエル系の犬が使われています。

スパニエルはスペイン系の猟犬がもとになっている鳥猟犬です。陸上での鳥猟に使われる犬と、水辺に生息する鳥を狩る水禽猟に使われる犬に大別されますが、どちらもハンターが狙いやすいように、獲物の鳥を飛び立たせる役割を担っていました。

この獲物と対峙しないスパニエルの習性が、セターとポインターに共通する獲物を見つけても興奮せずに示すことができる性質に、大きく影響しているといわれています。

セターの出発点

鳥猟に使っていたスパニエルの中に、獲物を見つけた際、伏せ(セット)をする犬が現れました。この性質を引き継ぐように交配を重ねた結果、作出されたのがセターのはじまりといわれています。

ポインターの出発点

スペインやポルトガルで猟に使われていた土着の犬が、ポインターの基礎と考えられています。初期のポインターは気質的に獰猛なところがあり、訓練のしにくい犬でした。そこで気質の穏やかなセターを掛け合わせ、訓練性の良いポインターが作出されたのです。

7GのHRP犬種は庶民の味方の万能プレイヤー

HRP犬種のHRPとは、「獲物を追跡して仕留める=Hunt」「獲物を見つけてハンターに知らせる=Point」「仕留めた獲物を回収する=Retrieve」の頭文字です。

その昔、鳥猟には複数の鳥猟犬が必要でした。

1. 獲物の場所を知らせる役割のポインターやセター
2. ハンターが狙いやすいように獲物を飛び立たせる役割のスパニエル
3. 撃ち落とした獲物を回収する役割のレトリーバー

鳥猟犬とひと口に呼んではいても、このように犬の性質によって役割はかなり細分化されていました。そのため、狩りにはこれらの役割をこなす犬を、複数頭連れていく必要があったのです。

当然のことながらお金がかかる話であり、それだけの犬を用意できたのは裕福な貴族だけでした。だからこそ、中世の貴族は狩猟を最高級の娯楽として楽しんでいたわけですが…。

貴族のように娯楽で狩りをするのではなく、生活の糧として獲物を獲りたい庶民にとって、役割ごとに犬を用意するような余裕はありません。

そこで複数の役割をこなせるオールマイティな犬が求められ、その結果作出されたのが「HRP犬種」と呼ばれる犬たちです。

多目的な用途で使われる7Gの犬種

● ジャーマン・ショートヘアード・ポインター
● ジャーマン・ワイアーヘアード・ポインター
● ショートヘアード・ハンガリアン・ビズラ
● スモール・ミュンスターレンダー
● ブリタニー・スパニエル
● ラージ・ミュンスターレンダー
● ワイマラナー

これらの犬種は、ドッグスポーツの中でもフィールドトライアルで活躍を見せています。

※フィールドトライアルとは/河川敷などの決められたフィールド内で、隠されている鳥を一定時間内に探し出す等の競技

日本で飼われている7Gの犬種

7Gに分類されている14犬種の中で、日本でも比較的登録数のあるワイマラナー、アイリッシュ・セター、ブリタニー・スパニエルの3犬種をご紹介します。

ワイマラナー

原産地/ドイツ
用途/多目的の狩猟犬及びポインティング・ドッグ

筋肉質で引き締まった体躯とつややかなブルーグレーの被毛は気品があり、貴族的な美しさを持つといわれている犬種です。

HRP犬種としても知られているように、とにかく学習能力の高い犬種。飼い主に対してはとても愛情深い性質ですが、誰に対しても愛想が良いわけではありません。

また、孤高な見た目に反して甘えん坊で寂しがりやなところがあるため、毎日しっかり触れ合いの時間を確保することが大切です。抜群の体力を誇るこの犬種の魅力を引き出すためにも、充分な運動量を確保することが求められます。

アイリッシュ・セター

原産地/アイルランド
用途/ガンドッグ・家庭犬

マホガニーレッドとも呼ばれている赤みを帯びたブラウンの被毛が、見惚れるほど美しい犬種です。ツンとすましたような表情に見えがちですが、中身はかなりのお調子者。喜ぶあまりはしゃぎすぎてしまい、家具を壊してしまうことも珍しくありません。

人懐っこくて陽気な性格の犬が多いですが、だからといって従順とは言い難い面も。叱られても多少のことでは落ち込まないところもあり、トレーニングには根気と忍耐が必要です。

遊び好きが高じて小型犬などを追いかけているうちに、狩猟本能が刺激されてしまうことがあります。不測の事態を避けるためにも、呼び戻しなどの基礎的なトレーニングと、飼い主による管理は必須といえるでしょう。

ブリタニー・スパニエル

原産地/フランス
用途/鳥猟犬

大型犬の多い7Gの中では、比較的小ぶりな中型の鳥猟犬です。日本ではまだまだ珍しい犬種ではあるものの、それでも7G犬種の中ではワイマラナー、アイリッシュ・セターに次ぐ犬籍登録数があります。

この犬種は嗅覚に優れているのはもちろんのこと、ポインティング能力や回収能力にも秀でており、まさに万能犬の名にふさわしい鳥猟犬です。

7G犬種は明るくて元気いっぱいなわりにとかく繊細なところがありますが、ブリタニー・スパニエルは精神的に安定している犬が多く、小さな子どもや他の犬とも上手に接することができるタイプといえるでしょう。

室内で7Gの犬種を飼うときに注意することは?

ポインターやセターは、家庭犬として飼われていても狩猟本能は失われていません。そのため、きちんと行動を制御するための服従トレーニングをする必要があります。

そこを怠ると、エネルギッシュな鳥猟犬は室内で大暴れすることも珍しくなく、家具を壊したりカーテンをボロボロにしたりと、手が付けられなくなることも…。家の中を不必要に破壊されないためにも、知的欲求を満たせるトレーニングと日々の運動が欠かせません。

とはいえ、どんなにきちんとトレーニングをしたとしても、機敏な性質を持つ鳥猟犬は、ちょっとしたことでダイナミックに動いてしまうことがあります。そのため、家具の配置や素材などに充分留意することが、7Gの犬と楽しく暮らすポイントといえるでしょう。

鳥猟犬は獲物を追いかけたくなる犬なので、呼び戻し訓練は徹底的に!

7Gのポインター・セターは、どの犬も好奇心旺盛でエネルギーにあふれています。とても賢い反面、一筋縄ではいかない頑固さも併せ持っているため、子犬の頃からしっかり服従訓練をすることが大切です。

また、猟犬の性質として獲物を追いかけたくなる衝動に駆られることがありますので、呼び戻しなどの基礎訓練はしっかり入れておきましょう。