ジャパンケネルクラブでは、国際畜犬連盟が公認している355犬種のうち、206犬種を犬の形態・用途別に1~10のグループに分けて公認しています。
今回ご紹介する9Gは、愛玩目的で飼育されるコンパニオン・ドッグとトイ・ドッグのグループ。飼育されている犬の7割以上が小型犬の日本では、「この犬知ってる!」という犬種が最も多く属しています。
10年以上にわたって人気犬種ランキングの上位を独占しているトイ・プードルもチワワも、このグループですよ!
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9Gの犬種は来歴が多種多様!
JKCの犬種グループ分けによると、9Gは「家庭犬、伴侶や愛玩目的の犬」と記載されています。となると、ひたすら可愛がるためだけに作出された犬種のグループと考えたくなりますよね。
実際に、高貴な人々のステイタスや抱き犬として、あるいは湯たんぽとして婦人の寝床に入っていたなどの、ザ・愛玩犬という犬種も数多く属しています。
しかし、よくよく起源を紐解いてみると、「かつてはこんなワイルドに働いていたのに?」と言いたくなるような来歴の犬種も。このあたりが、実は9Gの面白いところなのかもしれません。
愛玩犬と呼ぶには意外な来歴を持つ犬種
● チベタン・テリア……家畜の保護、ポイントをする猟犬
● プードル……鳥猟犬
● プラシュスキー・クリサジーク……ネズミ駆除
● プチ・ブラバンソン・ブリュッセル・グリフォン・ベルジアン・グリフォン……馬小屋へのげっ歯類動物の侵入防止
● マルチーズ……港の倉庫や船倉に生息するネズミの駆除
この犬種も9Gなの?ちょっとカオスな犬種の分類
9Gにはスパニエルやテリアなど、猟犬の名前を持つ犬種も多く属しています。
● キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
● キング・チャールズ・スパニエル
● チベタン・スパニエル
● チベタン・テリア
● ボストン・テリア
スパニエルは鳥猟犬ですが、チベタン・スパニエルは鳥猟犬として使われた歴史が見当たりません。にもかかわらず、スパニエルとつけられています。この犬種は歴史が古く、文献がないことに加えて研究が進んでいないため、来歴に関して詳しいことはわかっていません。
また、犬種初期の段階では鳥猟犬として使われていたとしても、途中から容姿を重視した交配が重ねられた結果、堂々たる愛玩犬となった犬種もいます。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルとキング・チャールズ・スパニエルはその代表格。その昔は猟犬として活躍していたのかもしれませんが、高貴な人々に愛されたことで、愛玩犬としての王道を歩み始めました。
9Gに属しているテリアに関しても、同じことがいえます。本来テリアとは、地中に生息する小動物を狩るために改良された品種のはず。しかし、チベタン・テリアはタイプがスクエアでテリアに似ているから、という理由でテリアと呼ばれるようになりました。
ボストン・テリアはブルドッグとブル・テリアによって作出された犬種のため、名前にテリアが付くのはわからなくもありません。しかし小動物を狩るために使われたことはなく、名前と来歴がなんだかややこしいことになっています。
日本で飼われている9Gの犬種
日本では、飼育されている犬の7割以上が小型犬。そのため、他のグループに比べて9Gにはお馴染みの犬種が多いことが特徴です。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
原産地/イギリス
用途/コンパニオン及び愛玩犬
人懐っこく愛情深い犬種で、小さな子どもや他の動物とも仲良くできる性質の持ち主。家庭犬として理想的な犬ですが、友好的過ぎて番犬には向かないといわれています。
シー・ズー
原産地/チベット(中国)
用途/コンパニオン・ドッグ
人の言うことをよく理解し、家族に寄り添うような性質の持ち主。表情や行動などが妙に人間くさいと言われるほど、家族のことをよく見ている犬種です。
チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
原産地/中国
用途/コンパニオン・ドッグ
ヘアレス(無毛)で有名な犬種ですが、実はシルキーな美しいコートのパウダーパフ(有毛)もいます。攻撃的なところが少なく、とても飼いやすい犬種です。
チワワ
原産地/メキシコ
用途/コンパニオン・ドッグ
極小犬種として知られていますが、小さな体に大型犬のハートを持つといわれるほど、怖いもの知らずなところも。そのため、小さくても番犬がしっかりこなせる犬種です。
パグ
原産地/中国
用途/コンパニオン・ドッグ
つぶれた鼻とシワの多い顔は、ブサカワの代名詞ともいえそう。何とも言えない愛嬌の持ち主で、のんびり屋のように思われがちですが、実はかなりエネルギッシュな犬種です。
パピヨン
原産地/フランス、ベルギー
用途/愛玩犬
飾り毛のついた大きな立ち耳と、シルキーなコートが優美な美しい犬種。基本的には落ち着いた性質の持ち主ですが、時々神経質に過ぎる個体もいるため注意が必要です。
ビション・フリーゼ
原産地/フランス、ベルギー
用途/コンパニオン・ドッグ
頭部を大きな丸型に整えるビションカットで一躍有名になりました。とても人懐っこく順応性の高い性質の持ち主で、コンパニオン・ドッグの名にふさわしい犬種です。
プードル
原産地/フランス
用途/コンパニオン・ドッグ
10年以上前から人気ナンバーワンの座を独占している犬種。スタンダード・ミニチュア・トイの3サイズありますが、日本ではトイ・プードルが圧倒的な人気を集めています。
フレンチ・ブルドッグ
原産地/フランス
用途/コンパニオン、番犬
ブサカワでお馴染みの短頭犬種の中で、最も人気のある犬種です。おっとりしているイメージがありますが、飼い主すら驚くほどのパワフルな一面を隠し持っています。
ペキニーズ
原産地/中国
用途/コンパニオン・ドッグ
犬でありながら猫のような性格と評されるほど、マイペースなところがあります。たいていの犬はオスよりメスの方が小さいですが、この犬種はオスよりメスの方がやや大きめです。
ボストン・テリア
原産地/アメリカ
用途/コンパニオン・ドッグ
白と黒のコンビネーションが魅力の、アメリカ犬界の紳士と呼ばれている犬種。基本的には飼いやすい犬ですが、興奮するとなかなか治まらないのはテリア由来の気質なのでしょう。
マルチーズ
原産地/中央地中海沿岸地域
用途/コンパニオン&トイ
純白の長い被毛とつぶらな黒い瞳が魅力的な犬種です。明るく人懐っこい性格の持ち主ですが、意外なまでにちょっとしたことで怒り出す、短気な一面も持ち合わせています。
室内で9Gの犬種を飼うときに注意することは?
9Gに属している犬種は伴侶や愛玩目的の犬達ですが、だからといって身体能力が他のグループの犬種に劣るわけではありません。
チワワは極小犬種として知られていますが、ソファやテーブルに飛び乗るのはお手の物。トイ・プードルに至っては、80cmの高さのフェンスを軽々と飛び越えてしまうことも…。
9Gの犬達はヌイグルミのように可愛らしい見た目をしていても、中身はまごうかたなき犬なのです。
小型犬に多くみられる家庭内での事故には、次のような原因が指摘されています。
1. 誤飲・誤食
2. ソファやベッドからの落下
3. スリップによる転倒
4. 家電やコンセントが原因の感電
5. 熱中症
上記からもわかるように、9Gの犬種を飼うなら床を滑りにくくするのはもちろんのこと、ゴミ箱やコード類を隠すなど、中型犬や大型犬を飼うのと何ら変わりありません。
身体能力が高くても低くても、犬と暮らすなら転倒事故の回避は急務!
愛犬と幸せに暮らすなら、家の中を犬仕様にすることが必要です。身体能力の高い犬はジャンプをしたり家中を爆走したりと、スリップや転倒の危険が付き物なのは簡単に想像できますよね。
しかし、身体能力がそれほど高くない犬種だとしても、同様に滑りやすい床は危険です。
たとえば、狆は古くから抱き犬として珍重されてきた歴史を持つこともあり、それほど身体能力が高いとはいえません。そのため、プードルやチワワのようにエネルギッシュな動きをすることは少ないですが、この犬種にとっても滑る床は大敵。
というのも、狆は先天的に股関節の浅い犬が多いからです。そのため、ちょっとしたスリップや転倒が関節の病気や脱臼の原因になることも…。
9Gの犬種を生涯元気いっぱいに過ごさせるには、室内を犬仕様に整えることが大切です。