愛犬が突然くしゃみをしたら、「風邪?鼻に何か入った?」とまずは思いますよね。
その後体調にこれといった問題が起きなければ、むしろくしゃみをした姿が可愛くて、微笑ましく感じることもあるでしょう。

しかし、毎日くしゃみをする、くしゃみが止まらない、くしゃみをすると鼻血が出るといったケースは明らかに異変のサインです。

この記事では犬がくしゃみをする原因や、様子見をしてよい場合と病院を受診したほうがよいくしゃみの見分け方について解説しています。

犬がくしゃみをする主な原因は「刺激」「アレルギー」「病気」

犬がくしゃみをすること自体は、特に珍しいわけではありません。
しかし、必ずなんらかの原因があるからくしゃみをしています。

そこで、まずは犬がくしゃみをする主な原因について考えてみましょう。

犬がくしゃみをする原因①異物が鼻に入った刺激

なんらかの異物が鼻に入ってしまったとき、排除しようとする防御反応の一つでくしゃみをすることがあります。

● 草の種
● 砂やホコリ
● 食べ物のかけら

鼻に入った異物が原因でくしゃみをしている場合、異物が排出されればくしゃみは治まるはずです。

しかし、なかなかくしゃみが治まらない、あるいは鼻水の状態に変化が生じたら、異物が自力で排出できず炎症を起こしている可能性も…。

何かおかしいと感じたら、早めに動物病院を受診するようにしましょう。

犬がくしゃみをする原因②においや煙などの刺激

犬の嗅覚は人間の3千~1万倍も優れており、刺激臭に関しては1億倍も感知できるといわれています。

そのため、私たち人間が「良い香り」と感じているものが、犬にとってはくしゃみを連発させる刺激臭になってしまうことも…。

● 香水
● お香の香りや煙
● タバコの副流煙とにおい
● 殺虫剤や蚊取り線香の殺虫成分
● ハーブの香り
● スパイスの香り

愛犬がくしゃみを連発するときは、何か原因になるものがないかをしっかり確認しましょう。

犬がくしゃみをする原因③アレルギー

なんらかのアレルギーが原因になっている場合も、症状の一つとしてくしゃみをすることがあります。

● 花粉
● ハウスダスト
● 食べ物

くしゃみの原因がアレルギーの場合、皮膚の痒みや赤み・耳の痒み・目の痒みや腫れ・軟便や下痢といった症状を伴うことがほとんどです。

きちんと原因を特定して適切な処置をするためにも、愛犬がくしゃみをする原因にアレルギーが疑われる場合は、動物病院でアレルギー検査を受けるようにしましょう。

犬がくしゃみをする原因④病気

愛犬が次のようなくしゃみをしていたら、病気の可能性が疑われます。

● 尋常ではないほどくしゃみを連発することがある
● 数日にわたってくしゃみが続いている
● 鼻水に膿や血のようなものが混ざっている
● いびきをかくようになった、あるいはいびきがひどくなった

くしゃみの原因が病気だとしたら、早期に治療を始めることが早期の完治につながります。まずはかかりつけの動物病院を受診し、しっかり原因を突き止めることが大切です。

※個別の病気については次章で解説しています。

くしゃみや鼻水を伴う犬の病気

くしゃみや鼻水程度だから、たいしたことはないだろう――などと軽く考えてしまうのはNG。
というのも、放置すると命をおびやかすかもしれない厄介な病気の可能性があるからです。

まずはしっかり原因を特定し、一刻も早く適切な治療を開始しましょう。

くしゃみを伴う犬の病気:特発性鼻炎

鼻の粘膜が炎症を起こしている状態です。
種などの異物混入・アレルギー・細菌感染・真菌感染・腫瘍など様々な原因が考えられますが、原因が特定できない場合も少なくありません。

症状
・くしゃみ
・鼻水の増加
・粘り気の強い鼻水
・膿や血の混じった鼻水

くしゃみを伴う犬の病気:ウイルス性鼻炎

パラインフルエンザウイルス、犬アデノウイルス2型、気管支敗血症菌(ボルデテラ菌)、犬ジステンパーウイルスなどに感染することで引き起こされる鼻粘膜の炎症です。

多くの場合、くしゃみはウイルス感染症の症状の一つでしかありません。
ウイルス感染が原因の鼻炎は、より重篤な症状を併発する可能性が高いと考えたほうがよいでしょう。

特に犬ジステンパーウイルスは致死率・伝染率ともに高いため、注意が必要。
多くのウイルス性鼻炎は伝染病予防ワクチン接種で予防することが可能です。

症状
・くしゃみ
・乾いた咳
・発熱
・下痢
・痙攣発作

くしゃみを伴う犬の病気:歯周病

歯周病の進行により、くしゃみが止まらなくなることがあります。

特に上あごの犬歯が歯周病にかかっている場合は注意が必要。
歯根部分が鼻腔の近くに位置しているため、歯根の細菌感染が鼻腔にまで広がると、激しいくしゃみが引き起こされてしまうのです。

症状
・くしゃみが止まらない
・鼻からの出血

犬の逆くしゃみとくしゃみの違い

くしゃみとよく似た症状に、「逆くしゃみ」と呼ばれる吸気発作性呼吸があります。
ただし、くしゃみと逆くしゃみは空気の出入りが真逆のため、実はまったく別の症状です。

● くしゃみ → 鼻や口から空気を吸い、外に向かって激しく吐き出す呼吸運動
● 逆くしゃみ → 鼻から空気を激しく吸い込み続ける発作性呼吸

逆くしゃみの原因

犬が逆くしゃみをする原因は、はっきり特定されていません。
アレルギー・加齢による鼻の奥の筋肉のたるみ・鼻孔の狭さなどが原因で引き起こされるのではないかと考えられています。

逆くしゃみを起こしやすい犬種

主に小型の短頭犬種など、いびきをかきやすいタイプの犬に多くみられます。
チワワ・パグ・シーズー・ペキニーズ・フレンチブルドッグなどが代表的な犬種としてあげられますが、短頭犬種でなければ起こらないわけではありません。

近年はトイプードルやパピヨンなどの逆くしゃみが比較的多く報告されています。

愛犬が逆くしゃみを起こしたら

逆くしゃみが始まるとかなり苦しそうに見えますが、実は呼吸が苦しくなることはあまりありません。
多くの場合は数分以内に治まり、その後は体調を崩すことなくいつも通りに戻ります。

ただし、あまりにも長時間逆くしゃみ状態が続いたり、なんらかの体調不良が伴ったりする場合は病気の可能性を考えたほうがよいでしょう。

逆くしゃみだからと楽観視するのではなく、早い段階でかかりつけの動物病院に相談したほうがより安心です。

病院に連れていく?様子見してもいい?くしゃみの見分け方

愛犬がくしゃみをしたからといって、必ずしも病気とは限りません。
まずは健康状態をしっかりチェックし、そのうえで判断するようにしましょう。

様子見をしてもよいくしゃみ

● 明らかに異物(種・砂・ホコリなど)が原因と判明しており、数回クシャミをした程度で治まっている
● タバコ・お香・香水などくしゃみの原因に心当たりがある

病気の疑いがあるくしゃみ

● 食欲が落ちている
● 鼻水の状態がいつもと違う(色がついている・粘り気がある・血が混ざっている)
● 咳を併発している
● 発熱・下痢・嘔吐などの症状が見られる
● 顔をしきりにこすっている
● 子犬がクシャミを連発している

愛犬のくしゃみが心配なときは、早めに動物病院で相談を

私たち人間と同様に、犬も比較的よくくしゃみをする生き物です。
その多くは鼻にちょっとした異物が入るなど、私たちがくしゃみをする原因と大差ありません。
しかし、だからといって軽く考えてしまうと、重篤な原因を見落とすこともあります。

「なんだか近頃は、よくくしゃみをするな」と感じたら、まずはかかりつけの動物病院を受診しましょう。
仮に何も問題がなくて心配のし過ぎだったとしても、気にすることはありません。
最悪なのは、本当は重篤な病気のサインだったのに、見逃してしまうことです。