愛犬のオシッコに血が混ざっていたら、誰だってギョッとしますよね。
これは血尿に違いない!と思いつつも、元気があって食欲もいつも通りであれば、なんとなく様子見をしたくなるかもしれません。
しかし、血尿をしたからには必ず原因があるはずです。
病気の可能性と病気ではない可能性の両方が考えられますが、いずれにしろ、まずは動物病院を受診しましょう。
この記事では、犬が血尿をする原因について、病気と病気以外の両面から解説していきます。
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犬の血尿はオシッコが真っ赤っか――とは限らない
血尿といえば、赤いオシッコをするイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、混ざっている血液の量によって、見た目の印象は様々です。
● オシッコ全体が真っ赤に見える→出血量がかなり多い
● オシッコ全体がピンク色、または濃いオレンジ色に見える→真っ赤に染まるほどの出血量ではないが、少ないとはいえない
● オシッコに点々と赤い染みがある→出血量が少ない
真っ赤に染まった尿であれば、見るからに血液が混ざっていそうに見えますよね。
しかし、中にはピンク色やオレンジ色、あるいは少量の赤い色が混ざっているだけといったケースもあります。
そのため、すぐには血尿だとわからず対処が遅れてしまうこともありますが、犬が血尿をする原因には次のような病気が疑われます。
● 膀胱炎
● 尿路結石症
● 膀胱腫瘍
● 腎臓腫瘍
● 急性腎不全
● 子宮蓄膿症
● 前立腺炎
● 前立腺腫瘍
血尿の原因が上記のような病気の場合、出血量が多いと腫瘍、出血量が少なければただの炎症というような、単純な判断をすべきではありません。
そのため、オシッコの変色度合いが大きくても小さくても、まずは速やかに動物病院を受診したほうがいいのです。
また、青色のトイレシーツや炭入り(カーボンタイプ)のトイレシーツなどは、オシッコの色が緑色に寄ってしまったり、グレーがかって見えることがあります。
すると、尿の色を正確に判断することが難しくなるため、注意が必要です。
白色以外のトイレシーツを使っている場合は、オシッコをした部分にティッシュペーパーを押しあてて尿を移し、白色をバックにした状態で尿の色をしっかりと確認するようにしたほうがよいでしょう。
犬の血尿で病気が原因じゃないのはヒートの出血だけ
避妊手術をしていないメス犬は、子犬から成犬へと成長していく過程で、いずれ発情出血を迎えることになります。
この場合の出血は、尿道ではなく陰部から出血しているので、血尿とは別物です。
しかし、ペットシーツ上では血尿のように見えてしまうため、飼い主さんが血尿だと勘違いしてしまうことは珍しくありません。
大慌て手動物病院を受診した結果、「発情期を迎えました」と獣医師から教えられることも。
あとから笑い話になりそうですが、仮にそのようなことがあったとしても気にする必要はありません。
なぜなら、病気による血尿ではなくヒートの発情出血だったとしても、体が正しく成長しているかを獣医師に判断してもらえる良い機会になるからです。
ただし、避妊手術をしていないからヒートの出血だと安易に判断してしまうのは禁物。
なぜなら、避妊をしていない5歳以下の若いメス犬が血尿をしている場合、子宮蓄膿症の可能性が考えられるからです。
また、避妊手術をしていない5歳以上のメス犬の場合は、子宮蓄膿症に加えて膀胱腫瘍の可能性も疑われます。
膀胱腫瘍は急性腎不全につながる恐れがあるため、とにかく血尿に気づいたらただちに動物病院を受診するようにしましょう。
犬が血尿をした場合、ヒートによる出血以外はすべて病気が原因です。
● メス犬の血尿→ヒートによる出血は病気ではない
● メス犬の血尿→ヒートではない出血は病気が原因
● オス犬の血尿→病気が原因
血尿の原因となる病気
ここでは犬が血尿をする病気について、具体的に見ていきましょう。
(オス犬特有の病気とメス犬特有の病気については次章でとりあげています)
膀胱炎
細菌感染や結石などが原因で、膀胱内に炎症が起きる病気です。膀胱炎はオスもかかりますが、尿道が短いメスは細菌が侵入しやすく、よりかかりやすいといえるでしょう。
症状
● 頻尿(短い間隔で何度もトイレに行く)
● 尿の色が濃くなる
● 血尿
● 排尿の際に痛みで鳴き声をあげる
● 尿のニオイがきつくなる
● 発熱
尿路結石
腎臓から尿管までの上部尿路、または膀胱から尿道出口までの下部尿路のどこかにできた結石が原因で症状を引き起こします。
症状
● 頻尿
● 血尿
● 排尿の際に痛みで鳴き声をあげる
● 発熱
● 食欲不振
膀胱腫瘍
膀胱内に腫瘍ができる病気で、その多くは移行上皮癌と呼ばれる悪性腫瘍です。肺や骨に転移することもあります。
症状
● 血尿
● 頻尿
● 排尿困難(オシッコがでない)
● 尿漏れ
● 咳や呼吸困難(肺に転移した場合)
● 足を痛がる(骨に転移した場合)
腎臓腫瘍
腎臓にできる腫瘍で、その多くが悪性腫瘍です。
症状
● 血尿
● 腹部の疼痛感
● 食欲低下
● 元気消失
● 貧血
急性腎不全
腎機能の急激な低下により、腎臓が正常に働かなくなる病気です。症状
● 血尿
● 嘔吐
● 下痢
● 尿毒症
オスだけが血尿をする病気と、メスだけが血尿をする病気
血尿をする病気にはオス犬しかかからないもの、あるいはメス犬しかかからないものもあります。
血尿が症状として表れるオス犬だけがかかる病気
● 前立腺炎……前立腺が細菌に感染することで発症する病気です。5歳未満の去勢手術をしていないオス犬がかかりやすいといわれています。
● 前立腺腫瘍……10歳以上のオス犬がかかりやすい病気で、そのほとんどは悪性であることが指摘されています。
血尿が症状として表れるメス犬だけがかかる病気
● 子宮蓄膿症……子宮内の細菌感染が原因で、子宮内に膿がたまる病気です。避妊手術をしていない老犬に多い病気とされていますが、5歳未満の若い犬にも発症がみられます。
血尿ではないのに尿が赤くなる病気
血尿のような色味のオシッコをしたとしても、尿路の病気が原因ではない「血色素尿(ヘモグロビン尿)」である可能性もあります。
血色素尿(ヘモグロビン尿)とは
中毒や細菌感染など、なんらかの原因で血液中の赤血球が破壊(溶血)されたことにより、赤血球内のヘモグロビン(血色素)が尿の中に流出してしまった現象です。
オシッコが赤く染まるため、一見すると血尿のように見えますが、血尿ではありません。
しかし、血尿とは別物だからといって症状が軽いわけではなく、むしろ血尿より危険な状態ともいえるでしょう。早急に動物病院を受診して一刻も早く処置を始めないと、命に関わる危険性があります。
血色素尿の原因
● タマネギ中毒
● バベシア症などの細菌感染
血色素尿は赤血球が破壊されているため、貧血を引き起こすだけではなく腎臓の機能にも悪影響を及ぼします。
血尿のような症状に加えて食欲不振、嘔吐、下痢、呼吸困難などがみられた場合は、血色素尿の可能性を考えたほうがよいでしょう。
おかしいと感じたら迷わず動物病院を受診しよう
犬が血尿をすることは、実はそれほど珍しいことではありません。その多くは膀胱炎や尿道結石であり、適切な服薬と食事の改善によって早期の感知を目指すことができます。しかし、犬の血尿がよくあることだからといって軽く考えてしまうと、重篤な病気を見逃してしまうことも…。
犬のオシッコに血液が混ざっているとき、病気が原因でないケースは避妊をしていないメス犬の発情出血だけです。
愛犬のオシッコがいつもとは違うと感じたら、迷わずかかりつけの動物病院を受診しましょう。早期に発見できれば、たとえ原因が重篤なものであっても完治の可能性は高くなります。