犬も人間と同じ哺乳類なので、おならをする場面を見た経験はみなさんあるのではないでしょうか。
あなたの愛犬はどんなおならをしますか?
音が大きい?ニオイが強い?あまり出ない?
今回のコラムでは、そんな犬の「おなら」にフォーカスを当てて、注意しておきたい点やいろいろと気になる雑学まで幅広くご紹介していきます!
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犬のおならはなぜ出るの?
人間と同じですが、主に呼吸や食事をするときに体内に取り込んだ空気がガスとして溜まっていくので、それを体外に排出するときに「おなら」になります。
また、血液中のガスが腸内に出てくることでもガス量は増えますし、腸で食物が分解されるときにもガスが発生します。
特に犬は「パンティング」といって体温調整をするために舌を出してハァハァと口呼吸をするため、人間よりも多くの空気を体内に取り込むことになります。
つまり、もともと体内になかった(外から取り込んだり化学反応で発生したりした)空気やガスを外に出しているのが「おなら」の正体です。
おならをすることで、体内の空気やガスの量を正常に保っているんですね。
おならをする頻度はどれくらいがいいの?
犬種によっても異なりますし、その日の過ごし方や摂取したものなどによっても変化するので、厳密に「何回でないとおかしい」ということはありませんが、以前の回数よりも明らかに増えたといった変化がある場合、体調が悪化している可能性もあります。
人がいないとき、気付かない状況でおならをしていることもあるので、なかなか正確に回数を数えることは出来ませんが、変化があったときに早めに気付けるように意識をしておきたいところです。
犬種としては、パグやフレンチブルドッグなどの短頭種は他の犬種よりも空気を取り込みやすいので、おならの回数は多い傾向にあります。
また、ゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーなどの大型犬は口が大きいため、やはり空気を多く取り込みやすい犬種です。
授乳期ぐらいの子犬も、飲んだり食べたりするペースがまだコントロールできず早食いになったりすることで取り込む空気の量が多くなりやすいです。
特性でいうと、早食いする子や興奮しやすい子、消化されにくい物を普段から食べている子は、それだけ多くの空気を取り込んだりガスが発生したりするので、やはりおならの回数は多めになります。
ここに挙げたような犬は一般的におならが多いということになりますが、多いこと自体は特に問題ありません。
先ほども述べたように、ある時期から明らかに回数が増えたなどの「変化の度合い」の方が重要です。
「今日は回数が多いね」といった短期的な変化は気にしなくてもいいでしょう。
また、空気を取り込んで排出する量や回数が多くなるというケースでは、ニオイはあまりしないのが特徴です。
換気扇がしっかり機能しているようなイメージですね。
逆に言うと、短頭種や大型犬、子犬や早食いをする犬でもおならの回数が少ない場合は、本来排出しないといけない量の空気やガスが体内に溜まってしまっている可能性があります。
おならが少ない場合は便秘になっていることが考えられますが、おならが溜まっていくことで腸からガスが吸収されて腸内環境が悪化し、さらに便秘になりやすくなるという悪循環になってしまいます。
愛犬の犬種や特徴を踏まえて「あれ?」と思ったら念のため動物病院で診てもらうことをおすすめします。
ニオイが強いのは大丈夫?
うちの子、すごくおならが臭いんだけど大丈夫かしら…?と心配になるほどのニオイを放つ犬もいると思います。
回数も気になりますが、ニオイについて知っておきたいポイントをご紹介します。
標準的なおならは99%が酸素や二酸化炭素、メタンガスなどの「無臭ガス」で、残りの1%が「悪臭ガス」(アンモニアなど)となっています。
この悪臭ガスの割合や質がニオイを左右します。
①ニオイの原因
おならのニオイを決める原因は大きく分けて三つあります。
一つ目は食べ物を消化するときに発生するガスです。
食べるもの(消化されるもの)によって、発生するガスのニオイも変わってきます。
動物性タンパク質(肉類)を消化するときに発生するガスはとても強いニオイを発しますが、でんぷん類(イモなど)を消化するときに発生するガスはほとんどニオイがありません。
また、消化されにくいものを食べると大腸の中で発酵が進み、これも悪臭を放つ原因になります。
二つ目は腸内細菌です。
一口に腸内細菌といっても、腸内にいる細菌の種類は数百種類にも上ります。
その中で、善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌など)よりも悪玉菌(ウェルシュ菌など)が優勢になる程増殖してしまうと、悪臭を放つことになります。
悪玉菌の栄養源はタンパク質や脂質なので、やはり肉類を多く摂取していると腸内環境的にもニオイの強いおならが出やすい体質になっていきます。
善玉菌の栄養源は食物繊維やオリゴ糖などで、これらを分解するときに生まれるガスは無臭ガスとなります。
また、老化によっても腸内細菌のバランスが崩れて悪玉菌が増えやすくなり、ニオイが強くなる場合があります。
三つ目は病気です。
ここではおならのニオイに影響する病気の主な例を7つご紹介します。
・便秘
腸内に便が長時間溜まっていると、悪玉菌が増えておならのニオイが強くなっていきます。
便秘になる原因は食事以外にも、大腸がんやポリープ、前立腺肥大などによって便が出づらくなっているケースもあります。
もし愛犬の便が平たくつぶれていたりする場合は、そういった病気になっている可能性があるため、動物病院での受診をおすすめします。
・寄生虫
回虫などの寄生虫が腸内(腸管)に寄生してしまうと、腸内環境を乱したり、傷つけて炎症を引き起こしたりするので、これもおならのニオイが強くなる原因のひとつです。
・膵外分泌不全
膵臓の機能低下がおならのニオイを強くする場合もあります。
食べたものを腸で効率よく吸収できるように、消化酵素を分泌してくれる機能が膵臓にはあります。
この機能が正常に働かないと、食べたものの分解や吸収がうまくできず、吸収できなかった食べ物が腸内に残り、腸内細菌のバランスが崩れておならのニオイが強くなります。
便の色が薄い(白っぽい)、食べても太らない(痩せている)、便が柔らかい(下痢や軟便が多い)、食べ物ではない物を食べたがる(石・土など)といった様子が見られる場合は、膵外分泌不全の可能性があります。
ジャーマン・シェパードやコーギーなどは膵外分泌不全になりやすい犬種なので、便の色や体重に注意して観察してみましょう。
・腫瘍/ポリープ
腫瘍やポリープといった「できもの」が直腸にできてしまうと、便を出すのに邪魔になってしまい、おならだけはよく出るという状態になることもあります。
踏ん張っても便がなかなか出ていない、便の中に血が混じっているといった様子が頻繁に見られる場合は、一度動物病院で受診されることをおすすめします。
・イレウス
腸が麻痺して動かなくなることを「イレウス」といいます。イレウスになると、本来なら便と一緒に出ていくはずの腸内細菌が残ることで、腸内バランスが崩れておならが臭くなることがあります。
イレウスにはウイルス感染や食物アレルギー、膵臓の炎症など、様々な原因が考えられます。
腹痛のサインの一つとして、プレイングポーズ(胸は床につけてお尻だけ上げて伸びるポーズ)が挙げられるので、頻繁に見られる場合は受診を検討しましょう。
・腸閉塞
犬には異物を誤飲して腸を詰まらせてしまうケースが多く見られます。
完全に詰まってしまうと嘔吐が多くなりますが、完全には詰まっていない場合、腸の中で長時間溜まったままの物が腸内バランスを崩し、おならが臭くなることがあります。
②おならが臭くなりがちな犬種
この犬種は絶対におならが臭い、というわけではありませんが、腸の病気にかかりやすいためにニオイがきつくなりやすい犬種というものはあります。
柴犬、パグ、フレンチブルドッグ、ヨークシャーテリア、ダックスフントなどは炎症性腸疾患、ポリープ、大腸炎などにかかりやすい犬種となるので、これらの犬種でおならのニオイが気になる場合は病気の可能性を疑った方がいいかもしれません。
③ニオイをやわらげるには?
おならのニオイを軽減するために必要なことは、腸内環境を整える(善玉菌を増やして悪玉菌を減らす)ということになります。
・消化しやすい食べ物を与える
食べた物がなかなか消化されずに腸内に長時間残ることでニオイが強くなるということは、消化されやすいものを食べることで効果が見られます。
なお、良質なタンパク質で脂肪分の少ない食べ物を食事として与えるのがおすすめです。
・水をこまめに飲ませる
人間でも便秘予防として水分を摂る人は少なくないですが、やはり便通が滞ることでおならのニオイが強くなりやすいため、体重1kgあたり80~100mlの水を毎日飲ませるのが望ましいでしょう。
犬によっては、飲みたい時に水がないとなかなか水を飲まない場合もあるので、そういう犬には水飲み場をいくつか作ってあげるとよいでしょう。
また、ご飯をお湯でふやかしたり、ウェットフードにしてあげるのも無理なく水分摂取量を増やすのに効果的なのでおすすめです。
・運動でストレス解消
運動不足は犬にとってストレスとなり、その影響で消化管(腸)の働きが低下しやすくなります。
そのため腸内に食べ物が長時間溜まっておならのニオイが強くなることがあります。
散歩などの適度な運動を定期的に行うことで、ストレス解消だけでなく排便のリズムを整える効果もあるので、愛犬の運動量や頻度にも気をつけてみましょう。
今回はおならのニオイに注目しましたが、犬のおならが臭かったときに、ただ「あ~くさい!」と言うのではなく、体調がよくない可能性を考えて心配して、健康な状態に戻るようサポートしてあげられるようになりたいですね。