優しい性格の犬といえば、多くの人が考える「犬」の理想的な姿ですよね。

かつては家畜と呼ばれた犬が時代とともにペットとなり、今では家族の一員と呼ばれるようになりました。だからこそ、誰に対しても穏やかに接することができる優しい性格の犬こそが、家庭犬の理想像と言えるのでしょう。

では、特定の犬種を選ばなければ優しい犬に出会えないのかといえば、決してそんなことはありません。大切なのは優しい犬に育つ環境であり、何より飼い主との信頼関係が重要です。

犬を優しい性格に育てるために必要なこと

優しい性格の犬とは、次のような性質を持った犬のことだと考えます。

● 何事に対しても神経質になり過ぎない。
● 滅多なことでは攻撃的な態度をとることがない。
● 人や動物に対して友好的に振る舞うことができる。
● 自分より弱い相手に対して寛容な態度をとることができる。

このような性質を持つ犬であれば、「優しい性格」と表現することができるはずです。

では、上記のような性質を持つ犬に育てるには、飼い主としてどのように愛犬と接していくべきでしょうか。

● 子犬の頃から外界(慣れている家の中以外)の音やニオイを経験させることにより、未知の物に対する警戒心を必要以上に強くさせない。
● 知らない人や知らない犬と適切に触れ合わせることで、他者との交流の仕方を子犬期からきちんと学ばせていく。
● 毎日飼い主と楽しく触れ合うことで、不安による精神的ストレスをためさせない。
● 毎日適切な散歩や運動をすることで、運動不足が原因のストレスをためさせない。
● フセ・コイ・マテといった基礎的な服従訓練を、きちんと理解できるようになるまでしっかり反復練習させる。

こういったことをきちんと実施していくことにより、犬と飼い主の信頼関係は強くなっていくはずです。

飼い主にしっかり愛情を注がれている犬は、余計な不安を抱く必要がありません。だからこそ、のびのびと優しい性格の犬に育つことができるのです。

優しい性格の犬に育てやすい犬種7選

どんな犬でも優しい性格の犬に育つ可能性はあります。とはいえ、犬種それぞれが持つ性質の違いにより、優しい性格の犬に育てやすいタイプがいることは間違いありません。

この章では、誰からも愛される優しい性格の犬に育てやすい犬種をご紹介します。

ゴールデン・レトリーバー

微笑んでいるような優しい顔立ちと、金色の長いコートが美しい大型犬です。とても遊び好きで甘えん坊な犬種ですが、トレーニングをきちんとすることによって、落ち着いた行動がとれるようになります。

小さな子どもやお年寄りのいるお家でも比較的飼いやすい大型犬種ですが、少々寂しがり屋が過ぎてしまう一面も。毎日しっかりスキンシップをとることが、この犬を優しい性格の犬でいさせるポイントといえるでしょう。

ラブラドール・レトリーバー

盲導犬にこの犬種が多いことからもわかるように、とても優しい性格の持ち主です。ただし、多くの人がイメージするような優しい性格の犬に育つまでには、しっかりとしたトレーニングが欠かせません。

もともとはエネルギーの塊のような犬種のため、訓練をしないまま成犬になれば、力の強さと遊び好きな性質が暴走することになるでしょう。しっかり訓練するには努力と時間が必要ですが、やればやるだけ優しい性格の犬に育つ、とても能力の高い犬種です。

ボクサー

見た目はちょっとコワモテですが、意外なほどに落ち着いた振る舞いができる犬種です。日本ではいまひとつマイナーではあるものの、欧米では子守をさせるほど子どもと仲良くできることで知られています。

とはいえ、そういったボクサーの良い性質を伸ばすには、のびのび暮らせる環境が必要なのは間違いありません。とても頭が良く運動が大好きな犬種のため、ストレスをためさせない生活が、ボクサーを飼い主思いの優しい犬にするのです。

フレンチ・ブルドッグ

鼻ぺちゃのブサカワで、ここ数年は特に人気の高い犬種です。家族のことが大好きで、遊び好き、甘えん坊な一面も魅力的。とはいえ、あまり物事を過敏に捉え過ぎないおおらかなところこそが、優しい性格といわれる理由なのでしょう。

のんびり屋のわりにいきなりスイッチが入ったように興奮してしまうなど、かなりユニークな性質の持ち主。しかし、実はひとりきりの留守番が苦手といったデリケートなところも。家族の真ん中にいさせることが、この犬種を優しい犬にするコツかもしれません。

ビーグル

たくさんの犬と徒党を組んで猟をしてきたことから、とにかくコミュニケーション能力が抜群です。ちょっとしたことではイライラしないおおらかな性質のため、子どもと仲良くすることも得意といえるでしょう。

ただし、獲物を探させるために空腹の時間を長くした歴史がいまだに影響しているのか、食欲旺盛過ぎるところが玉にキズ。かといって欲しがるだけ与えれば肥満一直線のため、イライラさせない程度にきちんと食べさせ、しっかり運動させることが大切です。

キャバリア・キングチャールズ・スパニエル

驚くほど友好的で穏やかな性質の持ち主です。人懐っこさには定評がある一方、数ある犬種の中でも一二を争うほど警戒心が薄いことでも知られています。

小さな子どもからお年寄りまで幅広く仲良くできるので、優しい性格の犬と暮らしたい人には最適な犬種といえるでしょう。ただし、飼い主家族が留守の間は番犬をしてほしいという願いは、あまり叶えてくれそうにありません。

徳川綱吉の時代には江戸城でお座敷犬として飼われていた歴史ある小型犬です。高貴な方々が抱っこをするために存在していたといって過言ではないこの犬種は、とても物静かで落ち着いた性格をしています。

必要とする運動量も多くないのでお年寄りだけの家庭でも飼いやすい犬ですが、小さな子どもとの同居は少し注意が必要かもしれません。というのも、狆は分別のつかない幼児にケガをさせられてしまうほど、本格的におとなしい犬だからです。

優しい性格の犬を室内飼育する際のポイント

小さな子どもやお年寄りがいる家庭、あるいは多頭飼育など、優しい性格の犬なら安心して家族の一員にお迎えできますよね。

とはいえ、優しい性格の犬だからこそ、気をつけたほうがよいこともあります。

たとえば、まだ分別のつかない小さなお子さんの相手をしていると、犬はいろいろなことを我慢しなければなりません。だからこそ、犬を休ませてあげられるようにケージやトイレの設置場所はできるだけ邪魔の入らない静かな場所を選ぶことが大切です。

また、優しい性格の犬だとしても、犬としての本能が失われているわけではありません。もしも愛犬が食いしん坊な犬種なら、ゴミ箱や食品庫をイタズラされないようにしっかり対策しておきましょう。

誤飲や誤食事故を引き起こさないためにも、台所には入れないようにゲートを設置するなどし、物理的に近づけないようにするのが一番安全です。

愛犬との信頼関係こそが楽しいドッグライフへの近道

優しい性格の犬に育てやすい犬種がいるのは事実ですが、どんな性格の犬に成長するのかは環境次第――すなわち飼い主さんにかかっていると言っても過言ではありません。

犬は人間より寿命の短い生き物ですが、それでも10年以上という長い時間を共に過ごす家族の一員です。信頼関係を正しく築くことが愛犬を優しい性格の犬にするのはもちろん、最高のドッグライフを送る唯一の方法とも言えますよね。