犬が年をとるにつれて、排泄や食事のお世話を必要とする場面も増えていきます。老犬で寝たきりになった場合は、床ずれの管理など、さらなるケアが必要となるでしょう。

愛犬にできるだけ快適な生活を与え、飼い主さんにとっては負担の少ない介護が理想と言えますが、どのような心構えで、またどのような介護方法でケアをすればよいのでしょうか。

この記事では、寝たきりの老犬を介護するときに大切なことを、床ずれ、排泄、食事、散歩など日常のお世話に必要な項目ごとにまとめています。

寝たきりの老犬を介護するときのポイント

寝たきりの老犬を介護するときのポイントは、飼い主さんが率先して全てやってあげるのではなく、犬ができない部分のみサポートすることです。寝たきりといっても、そのレベルはさまざまで、自分でフードを食べられることもあれば、体を起こしてあげれば伏せの状態ができる、支えてあげれば歩けるなどの状態があります。完全に寝たきりの状態でなければ、無理のない範囲で犬自身にやらせてあげるようにしましょう。

また、老犬の介護生活は長く続くケースもあるので、完璧な介護を求めたり、一人で抱え込んだりせず、介護ストレスをためない工夫をすることも重要です。家族がいる場合は、交代で介護したり、家族がいない場合でも動物病院に犬を預けたりするなど、飼い主さんがリフレッシュする時間をつくりましょう。

寝たきりの老犬には床ずれ予防が必須

寝たきりの老犬で、一番介護が必要となる問題は「床ずれ」です。床ずれとは、縟瘡(じょくそう)とも呼ばれ、同じ姿勢で寝続けて長時間圧迫を受けたために皮膚の細胞が死んでしまう状態をいいます。肩や腰、頬など骨が出っ張っている部分に床ずれが生じやすく、一度できると治癒するのが大変です。

そこで、床ずれの対策として、数時間おきの寝返りに加え、床ずれ予防ができる介護用ベッドの利用をおすすめします。介護用ベッドは体圧分散できる、通気性がよい、洗えるといったタイプを選びましょう。とくに高反発タイプの介護用ベッドは体圧分散の効果が高く、一般的なベッドでの管理に比べて寝返りの回数を抑えられるなどのメリットがあります。

また、必要に応じてクッションを組み合わせれば、犬の体勢を変えやすく、愛犬が好きな寝方も作りやすくなるでしょう。

寝たきりの老犬を清潔に保つ工夫

寝たきりの老犬で、床ずれの次に問題となるのが「排泄」です。寝たまま排泄してしまうことも多く、そのままにしていると皮膚炎や感染症などの二次被害につながります。
体を支えて排泄できるようであれば、トイレやペットシーツの上に連れていき排泄の姿勢を保てるようにしてあげましょう。寝たきりの老犬が便秘になった場合は、排便できるようにマッサージや浣腸などの処置が必要となることもあるため、獣医師に相談するようにしてください。

また、老犬の体を清潔に保つために、排泄物で汚れやすいお尻まわりの毛を短くカットし、汚れた場合は部分的に洗浄するなどの工夫が必要です。
排泄の対応が難しい場合は、オムツを利用できますが、オムツかぶれや、排泄物が漏れる、オムツを嫌がるといった問題もあるため、愛犬の様子を見ながら使用するようにしましょう。

寝たきりの老犬の食事は誤嚥に注意

寝たきりの老犬がフードを食べてくれず「痩せてしまう」と焦ってしまうことはよくあります。老犬は食欲が低下しやすく、そもそもの消化吸収能力も低下しているので痩せてくることが多いです。しかし、食べなくなる原因に、病気や口の痛みなどが関係している場合もあるので「老犬だから」と決めつけず、まずは動物病院を受診するようにしてください。

老犬が自分で食べられるうちは、流動食ではなく、噛んで食べるフードを与えます。自分で食べられないときは、スプーンや動物用注射器などを利用して、口にフードを入れてあげましょう。

寝たきりの老犬に食事を与えるときは、誤嚥しないように注意する必要があります。
まず、食事のときは寝たままにせず、上半身を起こして食べさせるようにしてください。また、老犬は飲み込む力も弱くなっているので、流動食を与える場合、しっかりと飲み込んだことを確認してから次のフードを与えるようにしましょう。

寝たきりの老犬でもなるべく外に連れて行こう

老犬が寝たきりになると、一日中室内にいることが多くなります。体を支えて少しでも歩けるようであれば、筋力維持のために、歩行補助ハーネスなどを利用してお散歩させてあげましょう。全く歩けない場合でも、抱っこやペットカートを利用して公園に連れていくだけでもリフレッシュできます。

寝たきりの老犬は筋肉もこわばりやすいため、お散歩の前に軽くマッサージや関節の曲げ伸ばしなどストレッチを取り入れておくとよいでしょう。
午前中にお散歩に行けば、日光を浴びて生活サイクルを整える効果も期待できます。

ただし、老犬は体温調節が苦手なので、暑い時期や寒い時期は、お散歩に行く時間帯に注意が必要です。少しでも体調が良くないと感じたときは、お散歩に行くのを控えましょう。

寝たきりの老犬に声がけやマッサージなどの刺激も大切

高齢の犬では、認知症を発症するケースも珍しくありません。認知症を完全に予防するのは難しいものの、脳への刺激を与えることで予防効果を期待できます。
老犬が寝たきりになると、どうしても刺激のない毎日になりやすいので、意識的に声をかけたり、マッサージなどスキンシップをとったりして刺激を与えてあげましょう。

そのほか、歯磨きやブラッシング、爪切りなど老犬の体をケアすることも、適度な刺激になるのでおすすめです。ケアの際に、体が冷たくなっていないか、あるいは熱くなっていないか触って確かめ、部屋の温度・湿度管理にも気をつけるようにしましょう。

また、寝たきりの老犬は、生活リズムが崩れやすく、日中に長く寝て、その代わりに夜間は起きて吠えているなど昼夜逆転になる場合もあります。
なるべく朝は起こすようにして、日光浴をさせる、お散歩するなどの工夫も大切です。

老犬の介護に悩んだら専門家や動物病院に相談

老犬の介護は、精神的・身体的にも飼い主さんの負担になるケースが多いです。たとえば、周囲に介護について相談できる人がいない、あるいは夜泣きの対応で睡眠をとれないといったことから介護ストレスを抱えてしまう人もいるでしょう。

介護ストレスを感じた時の対処法として、獣医師への相談や老犬介護サービスの利用をおすすめします。動物病院で適切に治療を受けることで、夜泣きなどが改善する場合があります。また、デイケアや訪問介護など、さまざまな介護サービスを利用して、老犬のお世話に対する負担を減らすのもよいでしょう。

飼い主さん自身が不調を感じる場合は、専門家によるカウンセリングを受けることも検討してみてください。また、飼い主さんが自由に過ごせる時間をなるべく確保し、好きなことをするなど気分転換できるものを取り入れましょう。

まとめ

寝たきりの老犬を介護する方法や心構えについて解説しました。長寿の犬が増えてきているため、飼い主さんが介護をする機会も多くなっています。介護は長く続くケースもあるので、完璧を求めず、一人で抱え込まないことが大切です。

寝たきりの老犬を介護するときは、床ずれができやすいので、介護用ベッドを使用し、適度に寝返りさせるようにしましょう。排泄や食事、散歩は、愛犬ができない部分のみサポートすることを意識してみてください。介護ストレスを感じたら、専門家や動物病院への相談、介護サービスの利用などを検討しましょう。