甘くて美味しいチョコレートは、私たちにとって身近な食べ物ですよね。しかし、犬にとっては危険な食べ物であり、中毒症状を引き起こす可能性があります。

そんな大げさな…と軽く考えてしまうのは危険!なぜなら、チョコレートの誤食が原因で犬が死亡した例もあるからです。

この記事では、なぜ犬はチョコレートを食べてはいけないのか、中毒を起こしたときの症状はどのようなものかについて詳しく解説しています。いざという時の備えにぜひご一読ください。

犬がチョコレートを食べると危険な理由

チョコレートの主原料であるカカオ豆には、テオブロミンというアルカロイド(有機化合物)の一種が含まれています。犬がチョコレートを食べてはいけない原因物質は、このテオブロミンです。

テオブロミンには血管拡張による血流促進・気管支の拡張・利尿作用といった、様々な作用が確認されています。この作用は人間にとっては良い効果をもたらしますが、犬が摂取した場合に同じような効果は期待できません。

なぜなら、人間の体内に入ったテオブロミンは肝臓で分解されて6時間程度で代謝されますが、犬の場合は18時間近くかかってしまうからです。

代謝に時間がかかるということは、その間ずっとテオブロミンの影響を受け続けることになります。

すると、犬の体はテオブロミンを排出しようと嘔吐や下痢を繰り返すことに。さらには神経・心臓・腎臓などが影響を受けてしまった場合、より重篤な症状を引き起こすことにつながってしまうのです。

血管の拡張効果等は適度であれば健康に役立ちますが、過ぎたるは及ばざるがごとし、というわけですね。

犬がチョコレートによる中毒症状を引き起こした時の症状

犬がチョコレートに含まれているテオブロミンを摂取すると、中毒を引き起こした場合には次のような症状が現れます。

軽度の症状
・下痢、嘔吐
・落ち着きをなくしてウロウロ歩き回る
・水をやたらと飲む

中程度の症状
・おしっこをもらす(失禁)
・異様に興奮する
・動悸が激しくなる
・寒くないのにガタガタ震える

重度の症状
・全身の痙攣
・不整脈
・昏睡状態
・突然の心停止

犬にチョコレートの中毒症状が現れるまでの時間

犬のチョコレート中毒が厄介なのは、食べてから症状が出るまでにある程度の時間がかかることです。早くても2~5時間程度、遅ければ半日~数日かかることもあります。

飼い主さんがそばにいられない時間帯に症状が現れる可能性を考えると、仮に口にしたのが少量だったとしても、油断は禁物といえるでしょう。

犬の体内からテオブロミンを排出するにはかなりの時間がかかり、血液中から完全に無くなるまでには3~4日かかるといわれています。

どの程度チョコレートを食べたら犬に中毒が起きるのか?

では、どの程度の量のテオブロミンを摂取してしまうと、犬の体に中毒症状が現れてくるのでしょうか。

およその目安としては次のとおりです。

• 体重1kgあたり90~100mg程度摂取すると中毒症状が現れる可能性あり
• 体重1kgあたり100~200mg程度摂取すると致死量に達する可能性あり

ただし、犬の体質やチョコレートを食べた際にどの程度食べ物が胃の中に残っているかによって、症状の出方には個体差が生じると考えられます。

チョコレートを食べたからといって、必ずしも中毒になるとは限りません。小さなチョコレートを1粒食べた程度で、テオブロミンの影響を受けるとは考えにくいのも事実です。

しかし、かなりの量を食べても症状が出なかった犬がいる一方で、ほんの少量を口にしただけで重篤な中毒症状が現れた犬もいます。

だからこそ、「犬にチョコレートは少しくらいなら大丈夫」ではなく「犬にチョコレートは絶対に食べさせない」――この考え方が大切な愛犬の命と健康を守るのです。

参考:チョコレートに含まれているテオブロミンの量
・一般的なミルクチョコレート100g/テオブロミン220~250mg
・高カカオチョコレート(カカオマス70%)100g/テオブロミン575~1125mg
・調理用チョコレート100g/テオブロミン529~2116mg
・ココアパウダー(脂肪分23%)10g/テオブロミン210mg

犬がチョコレートを食べたら家で応急処置をするより病院へ直行!

愛犬がチョコレートを食べてしまったとき、家庭で無理に吐かせようとするのはおすすめできません。なぜなら、上手に吐かせられないとかえって時間をとってしまい、その間にテオブロミンの吸収がどんどん進んでいくからです。

また、吐かせるために使用した塩やオキシドールが、かえって犬の体に害を及ぼしてしまう可能性も考えられます。

それよりも、まずは「どのような種類のチョコレート」を「どの程度食べた可能性があるのか」――この部分をしっかり確認し、そのうえで動物病院に連絡をしてどのように対処すべきか判断を仰ぎましょう。

テオブロミンには解毒剤がありません。そのため、動物病院での処置は体内に残っているテオブロミンの濃度を下げるための催吐処置や胃洗浄などが中心になります。

また、テオブロミンの影響は数日間続く可能性がありますので、自宅に戻ってからも引き続き愛犬の様子を観察することが大切です。そして何か気になる症状が現れた場合は、すぐ獣医師に連絡してください。

愛犬のチョコレート誤食を防ぐためにできること

犬にチョコレートを食べさせてはいけない――とわかっていても、不測の事態は起きるものです。まさかの事態を出来る限り避けるためにも、日頃から次のことに気をつけましょう。
「犬にチョコレートを食べさせてはいけない」を家族全員で共有する
お父さん、お母さんだけではなく小さなお子さんからお年寄りまで、家族全員で「犬がチョコレートを食べると病気になる」を合言葉にしましょう。

犬がいる場所ではチョコレートを食べない、チョコレートを食べるときは床に落としたり盗み食いされないように注意する――こういったことを家族全員で共有することが、愛犬の健康を守ります。
チョコレートを机の上などに出しっぱなしにしない
チョコレートの甘い香りに誘われた愛犬が盗み食いをしないよう、机の上などに出しっぱなしにするのはやめましょう。

また、お菓子をしまっている戸棚の位置によって、犬がこっそり開けてしまうこともあります。食いしん坊の犬は、時として飼い主さんが驚くほどの執念で隠してある食べ物を探し出してしまうものです。

盗み食いによる事故を防ぐためにも、絶対に犬が届かない場所にしまうことを習慣づけておきましょう。

どうしても机の上に出しておきたい場合は、ブレッドケースなどを利用するのがおすすめです。素敵なデザインのものを選べばおしゃれなインテリアにもなりますし、チョコレート以外の食品も収納できて便利ですよ。

ハイカカオチョコレートやココアはテオブロミンの含有量多め!

ハイカカオタイプのチョコレートは、アンチエイジングやダイエット効果で注目を集めていますよね。その効果こそ、テオブロミンの作用によるものです。

私たち人間にとって血糖値改善や活性酸素の抑制に力を発揮してくれるテオブロミンが、犬の体には毒として作用してしまう…。なんとも皮肉な話ですよね。

また、ココアパウダーにもテオブロミンが多く含まれていますので、チョコレートと同じく犬が口にしないように注意が必要です。

チョコレートやココアを使ったお菓子やパンにも思った以上のテオブロミンが含まれていることがありますので、絶対にあげないようにしましょう。