犬の便秘は、見た目の深刻さが下痢に比べてあまり派手ではありません。そのため、どうしても気づくのが遅れてしまいがちです。

しかし、発見が遅れれば遅れるほどウンチはどんどん固くなり、なんらかの処置を始めるまで愛犬は苦しい思いをすることになるでしょう。

このコラムでは、犬の便秘の目安をはじめとして、便秘の原因や対処法についても詳しく解説しています。

「うちの犬の排便回数は、もしかして少ない?」と感じている飼い主さんは、ぜひ参考にしてください。

愛犬が便秘と判断する目安は回数じゃない!

犬の一般的な排便回数は、1日の食事の回数±1~2回程度といわれています。

とはいえ、年齢・食べているもの・散歩や運動の状況によって排便回数は異なるため、「正常な排便は1日〇回」と決まっているわけではありません。

それでも本来なら、少なくとも1日に1回以上は排便があるはずです。もしもまる2日排便がなかったとしたら、これは明らかに便秘と判断できるでしょう。

しかし、毎日1回は排便があるからといって、油断は禁物です。なぜなら、毎日排便があったとしても「便秘」あるいは「便秘になりかけている」場合があるからです。

<便秘が疑われる便の状態と犬の行動>

● いつもの便よりコロコロとして水分が少ない。
● 正常なやわらかさの便の中にカチカチした部分が混ざっている。
● 排便の姿勢をとってからウンチが出るまでの時間が以前より長い。
● 排便姿勢でかなりいきんでいるのにウンチが出てこない。
● 排便時に鳴き声をあげる。
● 以前に比べて食欲が低下している。

大腸には便の水分を吸収する働きがあり、これによってちょうど良い固さの便が作られています。

しかし、便秘の犬は便が長時間大腸内にとどまってしまうため、水分が必要以上に吸収されることによってカチカチ便が作られてしまうことに…。

愛犬のウンチが以前より固くなった、あるいは排便に時間がかかるようになったと感じたら、仮に毎日排便があったとしても便秘を疑いましょう。

犬が便秘になる5つの原因

犬が便秘になる原因は、大きく分けると次の5つの可能性が考えられます。

環境の変化や精神的ストレスが原因の便秘

環境の変化やなんらかの精神的ストレスによって犬の排便リズムに狂いが生じると、便秘になることがあります。

● 飼い主が変わった。

● なんらかの事情で他所に預けられた。
● 住み慣れた場所から引っ越した。
● 赤ちゃんや別のペットが家族に加わった。

また、精神的なストレスを強く感じる出来事も、犬の便秘の原因です。

● 聞きなれない音(工事・花火・雷など)に怯えている。
● トイレトレーニングの失敗でトイレそのものに強いストレスを感じている。

飼い主さんが犬のために良かれと思ってしていることや、この程度なら問題ないはずと考えていることが、実は犬にとって大きなストレスになっているのかもしれません。

運動不足や加齢による衰えが原因の便秘

犬が本来必要としている運動量が足りないと、便秘になることがあります。

● 運動量が足りない、あるいは加齢による消化機能の低下で腸の蠕動運動が弱い。(蠕動(ぜんどう)運動 / 腸管の収縮と弛緩で便を肛門に向かって押し出す動き)
● 運動不足や加齢による衰えで足腰の筋力が低下し、排便時に踏ん張る力が不足している。

毎日散歩に連れ出していても、その犬が必要としているだけの運動量に足りない場合があります。

特に牧羊犬・使役犬・猟犬といった活動的なタイプの犬種は注意が必要。飼い主さんが考えている以上に、強い強度の運動を必要としているのかもしれません。

また、これまでは排便に何も問題がなかった犬も、加齢による衰えによって便秘をしやすくなります。

水分不足が原因の便秘

水分摂取量の不足は、犬が便秘になる大きな原因の一つです。

● 気温が低い時期になり、夏場ほどは水を飲まなくなった。
● 以前からあまり自分で水を飲もうとしない。
● 留守番の時間が長いなど、好きなときに新鮮な水を飲みたいだけ飲めない環境にいる。

水分摂取量が足りないと便は硬くなり、腸内をスムーズに移動できません。その結果、便秘になりやすくなってしまうのです。
食事内容や量が原因の便秘
栄養バランスに偏りがある食事や質の悪い食べ物は、犬の便秘を引き起こす原因です。

また、加齢などによる影響で基礎代謝が低下すると食事の量そのものが減り、便の材料が不足することで便秘になることもあります。

● 食べ物に含まれている食物繊維の量が足りない。
● 穀物が多すぎるフードや添加物・化学物質の影響で消化機能が低下している。
● カルシウムを摂取し過ぎている。

例えば、おやつ代わりに骨をかじらせていると、まれに便がカチカチになって糞詰まりのような状態になることがあります。そのようなときは、少し控えるようにしましょう。

病気が原因の便秘

なんらかの病気によって結腸が詰まった状態になると(閉塞)、便が通過できなくなるため便秘になります。

● 腫瘍・ポリープ
● 会陰(えいん)ヘルニアによる直腸憩室
● 前立腺肥大
● 椎間板ヘルニア

病気が原因の便秘は、早期発見と早期治療開始がなにより重要です。少しでもおかしいと感じたら、迷わず動物病院を受診しましょう。

犬の便秘を解消したい!自宅でできる4つの対処法

犬の便秘は、生活環境や食事内容の見直しによって改善できることがあります。まずはなぜ便秘になったのかを考えてから、対処法を試してみましょう。

水分をしっかり摂取させる

直接的な水分不足が原因でなかったとしても、カチカチに硬くなった便を柔らかくするには、しっかりした水分摂取が必要です。

● ドッグフードをドライの状態で食べさせている場合は、お湯でふやかしたりスープやミルクをかけたりするなどして、水分摂取量を多くする。
● 食事にウェットフードを取り入れる。
● おやつ代わりに水分の多い野菜や果物を与える。
● 好きなときに新鮮な水が飲みたいだけ飲めるように環境を整える。

食事内容を見直す

便には食べているものの内容が反映されます。そのため、ドッグフードと手作りご飯のどちらが主食であっても、食事内容を見直すことは便秘解消に効果的です。

● ドッグフードを高食物繊維タイプに変えて排便を促す。
● 穀物の含有量が多いドッグフードをやめる。
● 手作りご飯に食物繊維を多く含んだ野菜を取り入れる。
● 手作りご飯に白米を使っている場合は、玄米に変更する。

毎日しっかり適度に運動させる

腸の蠕動運動を促すためにも、毎日の適度な運動や散歩は必須です。牧羊犬・使役犬・猟犬といった活動的な犬種は、日常的な散歩に加えて適度に走らせることが、便秘解消につながりやすくなります。

老犬の便秘も歩かせることで腸の蠕動運動が刺激され、さらには排便時に踏ん張るだけの筋力回復も期待できるでしょう。

ただし、老犬の場合は運動のさせすぎに注意してください。足腰に痛みが出ない程度に楽しく歩かせるのが一番です。

お腹のマッサージ

下腹部のマッサージは犬の便秘解消に効果的です。

おへそ部分に手のひらをあて、「の」の字を書くようにして時計回りに優しくマッサージします。この時、あらかじめ手のひらを温めておくと、腸の蠕動運動促進と血行改善に効果的です。

ただし、お腹を見せるのを嫌がる犬に無理矢理マッサージすると、かえってストレスになることも。あくまでも犬がリラックスした状態で行うことが大切です。

犬の理想的な便はバナナ程度のやわらかさ

愛犬がウンチをしたとき、ペットシーツに跡がつかない硬めの便は、飼い主さん的には片付けやすいですよね。

しかし、健康な犬の便はペットシーツにほんの少し跡がつく、バナナ程度のやわらかさがあるものです。

愛犬のウンチがなんとなく硬いと感じたら、早めに対処をすることが便秘を予防します。