愛犬やよその犬を見ていると、まるまると太っていて可愛らしいなぁと思えるような場面ってありますよね。
しかし可愛いからといって太っているまま何もケアしなかったり、どんどん太っていくとなると、人と同じように犬も健康リスクが高まってしまいます。

このコラムでは、犬のダイエットが必要になる判断基準や適切な体重管理について紹介していきます。

犬にもダイエットって必要なの?

人間も太り過ぎていると医学的には「肥満症」という病気と見なされます。
ただ、太っていること自体が問題というよりも、肥満によって引き起こされる様々な病気や炎症があるため、根本的な要因となっている肥満を解消しておくのが重要といえるでしょう。

肥満によるリスク

肥満によって具体的にどのような健康リスクがあるのかを知っておきましょう。

①関節炎

支えなければならない体重が増えると、それだけ負担が増えることになります。
犬は四足歩行なので、腰や膝だけではなく肩や肘にも負担が掛かり、関節炎を引き起こす可能性があります。
歩くときに痛みをかばうように歪んだ歩き方などをしていくと、今度は偏った部分にさらなる負担が掛かって悪化していく可能性が出てきます。
愛犬が痛みに苦しむ思せずに過ごせるようなケアをするのは、飼い主にとって需要な責任の一つといえるでしょう。

②糖尿病・高血圧・腎臓病

これらの病気は特効薬などで完治するものではなく、あくまで症状を抑えたり進行を遅らせながら付き合っていかなければならないものです。
程度によってはインスリン注射や血圧薬の投与など、長い期間つらい治療を続けなければならないことになります。
ただしいずれも、食事(栄養)と運動によって適正体重をキープすることで予防できるケースが多いと言われています。

③がん

医療の発達によってペットの寿命も昔より伸びており、近年ではペットの高齢化に伴って「がん」が死因の上位に入ってきています。
そして肥満によって引き起こされる慢性炎症と、発がんの因果関係が注目されています。
がんの死亡リスクや抗がん剤治療の大変さなどについては、もはや説明は不要でしょう。

ダイエットが必要な基準は?(適正体重の出し方など)

犬も肥満だと健康リスクが大きいということはお分かりいただけたと思います。
では、次に気になるのは「自分の愛犬にダイエットが必要かどうか」でしょう。
明らかに同じ犬種と思えないくらい太っていれば分かりやすいですが、「標準より太っているのは分かるけど、ダイエットする程でもないんじゃないかな…」というケースは意外とあるのではないでしょうか。

①体重の目安(計算方法)

最もシンプルなのは体重を計ってあげることでしょう。
その犬種の標準体重と愛犬の体重差はどれくらいなのか、これである程度の判断ができます。
目安として、標準体重から+30%を超えていたら肥満といえます。
標準体重に1.3をかけてあげると、ボーダーラインが見えるということになります。

たとえばチワワなどの小型犬として、標準体重が2,500g(2.5kg)だとしたら
2,500×1.3=3,250
つまり、3,250g(3.25kg)より重ければ肥満と判断します。

②BCS(Body Condition Score)による測定

なかなか体重を計らせてくれないような犬の場合は、数字以外の判断方法も有効です。
犬の体重管理において最もポピュラーな基準として、BCS(ボディ・コンディション・スコア)というものがあります。
痩せすぎ~太りすぎまで、結果を5段階または9段階に分けて見るものです。
ここでは5段階に分けてご紹介します。

<測定方法>
・横からウエストのくびれ具合いを見る
・上からウエストのくびれ具合いを見る
・肋骨がどれくらい浮き出ているか、なでてみる
・ウエストのくぎれ具合いを触って確認する
・腰の骨がどれくらい浮き出ているか、触ってみる

<判定結果>
【BCS 1】痩せ
 肋骨や骨盤などが見た目でわかる。
 腰のくびれや、お腹から腰にかけての吊り上がりが顕著。
 触ることのできる脂肪がほとんどない。

【BCS 2】やや痩せ
 肋骨や骨盤などを触って確認できる。
 腰のくびれは上から見て顕著で、お腹から腰にかけての吊り上がりが明瞭。

【BCS 3】理想体重
 腰のくびれは上から見て分かる。
 お腹から腰にかけての吊り上がりは横から見て分かる。
 過度な脂肪の感覚がなく、肋骨が触れる。

【BCS 4】やや肥満
 腰のくびれは上から見れば分かるが、顕著ではない。
 お腹から腰にかけての吊り上がりがやや見られる。
 脂肪は多めだが、肋骨を触ることはできる。

【BCS 5】肥満
 腰やお尻のあたりに脂肪が沈着しており、くびれはほとんどない。
 お腹の吊り上がりはない、もしくは垂れ下がっている。
 厚い脂肪におおわれており、肋骨が容易に触れない。

この中でBCS 4~5に当てはまる場合には、計画的にダイエットを始めてあげたほうがいいでしょう。
また、もともとダイエットという言葉は「痩せる」という意味だけではなく、「適切で健康的な食事」という意味を持っているので、BCS 1~2に当てはまる場合には、栄養の偏りや食事量、運動量などを見直して、理想体重に近づくための「増量」をサポートしてあげましょう。

③獣医師に相談する

同じ犬種でも、個体差が大きく一概に体重だけで判断できないものもあります。
また、毛の長い犬種では見た目や触った感触が分かりづらいということもあるでしょう。
そこで、一番確実なのは獣医師さんに見てもらうことです。
ダイエットが必要かどうか判断してもらい、体重管理の具体的な方法やスケジュールも相談してみましょう。
健康状態に問題がないかチェックしてもらうこともできるので、愛犬に無理なく安心してダイエットをさせることができるでしょう。

ダイエットの注意点

ダイエットを始めたはいいものの、誤った方法やペースによって残念ながら愛犬が命を落としてしまうといったケースがあります。
そんな悲惨な状況にならないためにも、以下の点に気を付けておきましょう。

①食事面

それまで与えていたドッグフードからダイエットフードに切り替えるという方法がありますが、急に全ての食事をダイエットフードに切り替えるのではなく、徐々に段階を踏んで切り替えていく移行期間を設けましょう。
まずは全体の4分の1程度をダイエットフードに、3日目からは2分の1程度を、5日目からは4分の3程度を、というように、少なくとも一週間程度は移行期間としてあげましょう。
もちろん、急に食事量を減らすことは厳禁です!
身体的な負担だけでなく、ストレスも大きくなってしまいます。

また、ダイエットフードに切り替えてから3ヶ月以内に体重変化が見られない場合には、食事量やフードの配合(種類)を見直す必要があるでしょう。
しっかりと経過観察をしていくことも忘れないようにしましょう。

②運動面

一般的には1日あたり30分程度の運動時間を設けることが推奨されています。
また、人間が「散歩」と「ウォーキング」など目的によって歩くスピードを変えるように、犬の散歩もダイエット用のスピードの目安があります。
愛犬の大きさや年齢、健康状態によっても変わってきますが、アメリカのペット肥満予防協会が推奨しているのは、30分間で3.2km歩く程度のスピードです。
ぜひ参考にしてみてください。

なお、犬種や身体能力や興味関心によって、散歩以外の運動も工夫して取り入れてあげると良いでしょう。
ボール遊びや水泳なんかは楽しみながら運動できますよね。
何かしらの理由で屋外で運動できない犬には、トレッドミルのような器具が有効だったりします。

運動面においても、やはり急激な変化(運動量の増加)は避けましょう。
目標の運動量に満たなくても、焦らず徐々に増やしていく姿勢が大切です。

人間も犬も、適切な栄養や食事量、運動量を維持することで健康的に過ごしていくこと、それが本来の「ダイエット」です。
くれぐれも無理をさせないように、獣医師と相談しながら楽しいペットライフを送りましょう!