日本の住宅は、欧米に比べて基本的に隣近所との距離が近いですよね。だからこそ、犬を家族に迎えるにあたって「近所迷惑にならない」ことは、重要なポイントといえます。

となると、出来るだけおとなしい性格の犬を飼いたいと考えるのは、飼い主の心情として普通のことかもしれません。

この記事では、おとなしい犬とはどのような性質の犬であるかを、いろいろな角度から考察しています。おとなしい性格の犬を家族に迎えたいかたは、ぜひ参考にしてください。

おとなしい性格の犬とはどのような性質を持った犬のこと?

人間に対して「おとなしい性格」と表現するとしたら、次のような方のことをいいますよね。

● あまり目立たずいつも物静か
● 相手に対して不必要に逆らわない
● 相手や物事に自分から積極的にかかわることが少ない

これをそのまま犬にあてはめても、「おとなしい性格の犬」のイメージはつかみにくいような…。そこで、上記の表現を犬の性質に置き換えてみましょう。

● 不用意に興奮することなくいつも落ち着いていられる
● 飼い主の指示をよく聞き、きちんと従う
● 飼い主に対し四六時中ベタベタしようとはしない

上記のような性質を広い意味で「おとなしい性格の犬」と考えれば、犬種選びの参考になるはずです。

犬種の特性でおとなしい犬と、訓練によっておとなしくなった犬の違い

「おとなしい性格の犬」と一括りに呼んでいますが、その性質は大きく分けて次のような違いがあります。

1. 犬種の性質的にもともとあまり騒々しいところが少ないため、おとなしい性格とされている。
2. 訓練やしつけにより、飼い主が愛犬の行動をきちんと制御できているのでおとなしくしていられる。

同じおとなしい性格の犬でも、1と2では性質がまったく異なります。だからこそ、おとなしい性格の犬を探すにあたり、この違いをしっかり把握しておくことが重要です。

犬種には「このような犬である」というイメージがつきものですが、そこだけを切り取って鵜呑みにしてしまうと、「こんなはずではなかった」と後悔することも…。

おとなしい性格とされている犬種の中には、適切なトレーニングやシツケなしでは、おとなしいどころか大暴れして手が付けられない犬に成長してしまうことすらあり得るのです。

タイプ別にみるおとなしい性格の犬種9選

「おとなしい性格の犬」は、次の3タイプに分かれます。ここでは代表的な犬種を3種類ずつご紹介しますので、犬種選びの参考にしてください。
適切な訓練でどんな時でも落ち着いていられる訓練性能の高い犬種

ゴールデン・レトリーバー

従順で温厚な性格の大型犬ですが、生まれながらにおとなしいわけではありません。きちんとしつけないと噛み癖や飛びつき癖に悩まされることも。しかし、しっかりトレーニングしたこの犬種は、聞き分けがよく愛情深い理想的な家庭犬へと成長します。

室内飼育のワンポイント
美しい金色の被毛はとにかく抜け毛が多いので、掃除がしやすいようになるべく床に物を置かないようにしましょう。

ラブラドール・レトリーバー

盲導犬で知られている犬種ですが、生まれつき大人しいわけではありません。本来は元気の塊のようなアクティブな犬なので、しっかりトレーニングしないと元気が暴走して家の中を破壊されてしまうこともあります。

室内飼育のワンポイント
股関節形成不全の多発犬種のため、フローリングなどの滑りやすい床は要注意!カーペットやタイルマットなどで足腰に優しい環境を整えてあげましょう。

スタンダード・プードル

プードルの中で一番大きいサイズです。大型犬だけあってトイよりゆったりした性格ですが、好奇心旺盛で遊び好きなところは変わりません。また、賢いからこそきちんとシツケができない飼い主の甘さを見抜いてしまうところがあります。

室内飼育のワンポイント
いきなり水たまりに飛び込んでしまうなど、ヌイグルミのような見た目に反してかなりアクティブです。いつでもきれいに洗えるように、お風呂はワンコ仕様にしておきましょう。
おとなしい性格とされているが実はかなりマイペースな犬種

バセンジー

吠えない犬として有名ですが、まったく吠えないわけではありません。ヤゥヤゥのような独特の声で鳴くことがあります。人を威嚇することのない性格がおとなしいとされていますが、人に命令されることを好みません。良くも悪くもかなりマイペースな犬です。

室内飼育のポイント
かなりきれい好きな犬のため、ケージの掃除はこまめにしましょう。また、寝床とトイレが近いと嫌がる傾向にあるので、できるだけ離れた場所に設置することをおすすめします。

チャウチャウ

とても物静かな犬種で、飼い主に対する愛情表現もさらっとしています。また、自分のしたいこととしたくないことがはっきりしているので、あれこれ命令されるのはかなり苦手。散歩に行きたくないとテコでも動かない、とても面白い性質の持ち主です。

室内飼育のポイント
モコモコの見た目からわかるように、豊かな被毛は寒さに強いダブルコートです。その分暑さにはかなり弱いため、一年を通して室温の調節を考えたほうがよいでしょう。

ブルドッグ

闘犬だった歴史とコワモテから、家の中で大暴れしそうに見えますよね。しかし実際は驚くほど温和な性質の持ち主です。また、おとなしいを通り越して、もはやものぐさとも言えるほど動きたがりません。マイペース過ぎるこの犬にはしっかりした健康管理が必要です。

室内飼育のポイント
動くのイヤ+呼吸器が弱く、夏場は確実に運動不足になります。家の中をある程度歩かせるためにも、家具を上手に配置して大好きなご飯にたどり着くまでの距離を稼ぎましょう。
生来の気質がおとなしい&おっとりタイプの犬種

シーズー

温和でフレンドリーな性格の犬が多く、運動欲求もそれほど高くないので高齢者だけの家庭でも飼いやすい犬種です。飼い主の言葉をよく聞き、飼い主の行動をよく見ている犬なので、たくさん話しかければ話しかけるほど人に寄り添ってくれるでしょう。

室内飼育のポイント
大きな眼球はケガをしやすいので、衝突事故を避けるためにも出来るだけ床の上には物を置かないようにしましょう。

数ある犬種の中でもトップクラスの物静かな犬種です。もともとの性格としておっとりしているため、力加減ができない幼児や活発な性質の同居犬がいる家庭は要注意。狆は誰かをケガさせるより、ケガをさせられることの多い犬種です。

室内飼育のポイント
生まれつき股関節が浅い個体が多いため、転倒は大けがにつながることがあります。狆の細い骨格を守るためにも、何をおいても床材にはこだわってあげましょう。

キャバリア・キングチャールズ・スパニエル

犬界随一のフレンドリーな犬種です。誰とでも仲良くできる愛想の良さは素晴らしいですが、警戒心が薄いので番犬には向きません。また、スキンシップが大好きなのでたくさんの人から可愛がられる環境こそが、この犬種を輝かせてくれます。

室内飼育のポイント
ダブルコートで特に下毛が多いため、抜け毛の量に驚愕する飼い主は少なくありません。毛は抜け落ちるものという前提で、掃除道具をすぐ手の届くところに準備しておきましょう。

愛犬をおとなしい性格に育てるには飼い主との信頼関係が大事

どんなに訓練性能の高い犬種であろうと、適切なシツケと訓練をしなければ落ち着いた犬には成長しません。

これは、基本的に物静かな犬種にも同じことが言えます。飼い主との信頼関係がきちんと築けなければ、せっかくのおっとりした性質も日常的なストレスによって歪められてしまうことに…。

愛犬をおとなしい性格の犬に育てるには、飼い主との信頼関係が重要なのは間違いありません。飼い主が正しく群れのリーダーになることが、愛犬をおとなしい性格にするのです。