メロンを食べようとしたら、甘い香りに誘われた愛犬に「ちょうだい」とねだられた――。こんな経験をお持ちの飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
甘く柔らかな果肉が口当たりの良いメロンは、犬が食べても大丈夫なフルーツです。ブドウやサクランボ(種)等のように、犬の体に害を及ぼす恐れのある成分は含まれていません。
このコラムでは、犬にメロンを食べさせるメリットとデメリット、与える際の適量や注意点等について詳しく解説していきます。
Contents
犬にメロンを食べさせるときに注意すること
メロンには犬の体に害を及ぼすような成分は含まれていません。
しかし、だからといって愛犬が欲しがるだけ与えていたら、体調不良の原因になることもあります。これはメロンに限ったことではありません。食べ物はすべて適量を守ることが大切です。
メロンの果肉と果汁以外は犬に与えない
あたりまえのことですが、メロンの果肉と果汁以外を愛犬に与えるのはNGです。
特に皮の部分は硬いため、嘔吐や下痢といった消化不良の原因になります。さらには食道や腸に詰まってしまうと、窒息や腸閉塞を起こす危険性も。
また、種の部分も犬の胃腸は消化できません。消化器に余計な負担をかけないためにも、メロンの皮と種は絶対に食べさせないようにしましょう。
メロンは飲み込んでも危険性のない大きさにしてから犬に与える
適度に熟れて甘みのあるメロンの果肉は、それほど硬いとは感じませんよね。しかし、犬は丸飲みすることの多い生き物です。
ほとんど噛まずに飲み込んでしまうことをあらかじめ想定し、食道に詰まらないように小さくカットしてから与えるようにしましょう。
犬のメロンアレルギーに注意!
メロンに含まれているタンパク質分解酵素「ククミシン」は、アレルゲンとなる可能性が指摘されています。
愛犬に初めてメロンを食べさせる際はごく少量を与え、下痢・嘔吐・呼吸がしづらい・体の痒み・発疹・目の充血といった症状が出ないかを確認しましょう。
愛犬にブタクサ・ヨモギ・ニワトコ・シラカバ・スギなどのアレルギーがある場合は、メロンに対してアレルギー反応を示すかもしれません。そういった体質の犬にはメロンを食べさせないほうが安全です。
犬の健康にメリットが期待できるメロンの成分
メロンの約88~90%は水分です。しかし残りの約10~12%の中には、犬の体に良い効果が期待できる成分がいくつも含まれています。
また、100gあたり42kcalと比較的低カロリーなところもメロンの魅力といえるでしょう。
犬の体にメリットのあるメロンの成分:食物繊維
メロンに含まれている食物繊維の量は、野菜などと比べて多いとはいえません。しかし、だからこそ犬の腸に刺激を与えすぎないところがメリットといえるのではないでしょうか。
というのも、食物繊維の量が多すぎると、かえって下痢や便秘の原因になることがあるからです。
むしろ注目すべきは、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれていることでしょう。メロンに含まれている水溶性食物繊維ペクチンは血糖値の急上昇を抑制し、コレステロール排出を促します。
また、不溶性食物繊維は善玉菌のエサとなるため、腸内環境改善が期待できるのです。
犬の体にメリットのあるメロンの成分:カリウム
メロンはバナナ、夏みかんに次いでカリウムを多く含んでいるフルーツです。
カリウムは細胞の浸透圧を維持するうえで欠かすことのできないミネラルの一種。神経伝達や心臓機能の調節、筋肉の収縮といった生命活動維持に欠かせません。
そんなカリウムには水に溶けだしてしまう性質がありますが、メロンは犬も生のまま食べられる果物です。カリウム摂取に役立つ食材といえるでしょう。
犬の体にメリットのあるメロンの成分:GABA(γ-アミノ酪酸)
メロンにはGABA(γ-アミノ酪酸)というアミノ酸が豊富に含まれています。
GABAは脳や脊髄で神経の興奮を鎮めて落ち着かせる神経伝達物質で、ストレス緩和や血圧上昇を抑える効果が期待できます。
神経過敏になりやすいワンちゃんは、一度試してみる価値があるのではないでしょうか。
犬がメロンを食べるときに気をつけたいデメリット
メロンには健康な犬の体に害になるような成分は含まれていません。
しかし、犬の体の状態によっては過剰摂取になりやすい成分や、中毒を引き起こす可能性のある成分が含まれていることを知っておきましょう。
腎臓病・心臓病の犬はカリウムの過剰摂取に注意
腎臓病や心臓病の犬にメロンを食べさせる場合は、カリウムの過剰摂取にならないように注意が必要です。
健康な犬であれば、カリウムは腎臓で濾過されたあとに尿として排出されます。
ところが腎機能に問題があると、余分なカリウムが処理しきれません。その結果、血液中のカリウム濃度が上昇し、高カリウム血症を引き起こしてしまうのです。
高カリウム血症は四肢のしびれ・筋力低下・吐き気や嘔吐・脈拍異常といった体調不良の原因になります。最悪は死亡してしまう危険性もあるため、充分に注意しましょう。
熟れ過ぎのメロンに注意!犬に中毒症状を引き起こすククルビタシン
ククルビタシンとは、メロンなどのウリ科の植物に含まれている生体物質の一種で、苦味物質としても知られています。
メロンに含まれるククルビタシンは皮とヘタの部分に多く、熟れるにしたがって量が増えていくのが特徴です。
そのため、熟れ過ぎたメロンを食べた犬が嘔吐や下痢をしたら、ククルビタシンによる中毒症状が疑われます。
ただし、メロンに含まれているククルビタシンと犬の中毒症状の関連については、まだ詳細がわかっていません。だからといって安易に考えず、熟し過ぎたメロンを愛犬に食べさせるのはやめておきましょう。
犬に食べさせても問題のないメロンの適量
犬にオヤツやトッピングとして何かを与えるときは、1日に必要な総カロリー(食事とオヤツの合計)の10%以内が目安とされています。
とはいえ、メロンは実のところ無理をしてまで犬に食べさせる必要のない食材です。そのため、食事の栄養バランスを崩さないためにも、安全を期して5%程度にとどめておいたほうがよいでしょう。
メロンの糖質量はバナナの半分以下ですが、食べさせ過ぎれば肥満、中性脂肪の増加、血糖値上昇といった体調不良を呼び込む原因になります。
甘味のあるメロンを好む犬は多いですが、喜ぶからといって目安を超えた量を食べさせてしまうのは絶対にNGです。むしろ少ないくらいのほうが、メロンをより安全に犬に食べさせられるのは間違いありません。
1日あたりのメロン摂取量の目安
● 小型犬(2~5kg)45~90g程度
● 中型犬(6~15kg)100~200g程度
● 大型犬(20kg以上)250g~
上記はあくまでも可食部分の目安です。愛犬の体質や体調を考慮し、もしも食べさせたあとになんらかの体調異変が起きたときは、すぐに動物病院を受診しましょう。
メロンは犬が喜ぶフルーツだからこそ適量を守ることが大切
甘味を感じることのできる犬にとって、メロンはとても魅力的なフルーツです。愛犬が美味しそうにメロンを頬張る姿を見ていると、飼い主さんも嬉しくなりますよね。
しかし、喜ぶからといって適量以上を与えてしまえば、メロンが体調不良の引き金になるかもしれません。
食事の栄養バランスを崩すことがないようにメロンの適量を守ることが、犬の食生活をより豊かにしてくれるのではないでしょうか。