新たに犬を家族に迎えるとしたら、明るい性格の犬や穏やかで落ち着いた性質の持ち主が好まれる傾向にあります。

一方で、性格の悪い犬を飼いたいというかたは、そう多くはないでしょう。ゼロとまでは言わないものの、かなりの少数派であることだけは間違いなさそうです。

この記事では、「この犬性格悪い!」と言われてしまう理由について、様々な角度から考察しています。性格が悪そうに見える犬にも言い分があることを知るだけでも、犬の見え方が変わるかもしれません。

「この犬性格悪い!」という判断は人間的な感覚によるもの

犬がどのような態度をとったときに、「この犬性格悪い!」と人は感じるでしょうか?

● ちょっとしたことで唸られたり牙をむかれたりと、攻撃的な態度をとられる
● こちらが何もしていないのにしつこくキャンキャン吠えられる
● いきなり噛みついてくる
● 何度も顔を合わせているのに一向に懐かない

確かにこのような態度をとられたら、「この犬性格ワルっ!」となっても不思議ではありません。こちらが犬好きであればあるほど、大好きな犬に拒絶されているようで正直なところ気分はよくないですよね。

しかしこのような態度をとる犬は、その多くが臆病です。不安や恐怖心から必要以上に攻撃的になっていることがほとんどと言えるでしょう。つまり、最悪の事態から身を守ろうとする警戒心が行き過ぎているだけで、性格そのものが悪いわけではありません。

たとえば体重5kgの小型犬から見れば、私たち人間は巨人です。怖いと思われても不思議はないですよね。私たちだって森でヒグマに遭遇したら、大声で怒鳴ったり走って逃げるのは悪手とわかっていても、パニックのあまりやらかしてしまいそう。

そんな姿を見てヒグマに「大騒ぎして、この人間性格ワルっ!」と思われたら「いやいや、そうじゃないでしょう?」と反論したくなりますよね。性格悪い!と思われている犬達も、もしかしたら同じ気持ちかもしれません。

チワワも柴犬も性格が悪いわけではない

「チワワ 性格悪い」「柴犬 性格悪い」――こんな単語の組み合わせが関連ワードにあがってくることがあります。

どちらもその理由は前項で述べたようなものですが…。

チワワも柴犬も、性格が悪いから唸り声をあげたり牙をむいているわけではありません。チワワは体は小さくても勇敢な犬です。大好きな飼い主を守ろうとするあまり、必要以上に攻撃的になってしまうこともあるでしょう。

さらには、もともと気が強く我がままになりやすい性質のチワワを、飼い主がきちんとしつけずに甘やかした結果増長してしまった、というパターンも少なくなさそうです。

また、柴犬はDNA解析によって最もオオカミに近い犬種であることが判明しています。態度に野性味が強くても不思議ではないですし、そもそも日本犬は全般的に愛想がないことで知られていますよね。

これは悪口ではなく、単に日本犬に多い特性を述べているに過ぎません。むしろ、このベタベタしすぎないさらっとした態度が魅力的だと欧米でも評価されています。

うちの犬は性格が悪い?もう少し深読みすると見えてくるものとは

犬にも性格の良し悪しはあるか?という問いかけに対し、多くの飼い主が「ある」と答えています。

1. 愛犬(♀)は夫や息子には甘えるのに妻に対してだけ態度が悪い。
2. 多頭飼育をしている中にオモチャを独占する犬がいて、他の犬が持っているものもすべて奪っていく。そのわりに、その後オモチャで遊ぶわけではない。
3. 2匹飼っているうちの1匹が寝ているもう1匹の上に必ず座るので、いつも嫌がられている。
4. 実家の犬が帰省のたびに自分にだけ牙をむいて唸り声をあげる。

なるほど、どの犬も状況だけ見れば性格が悪いと言いたくなりますよね。しかし、次のように考えると違うものが見えてくるはずです。

1. 犬は嗅覚が優れており、人間のフェロモンを嗅ぎ分けるので異性に懐きやすい。
2. オモチャを奪いとったら追いかけてきてほしいのに、誰も遊びに乗ってくれない。
3. 2匹のうち1匹は体をくっつけていたいタイプで、もう1匹はひとりで静かに休みたいタイプである。
4. たまに来るだけの奴が、飼い主(実家の親)の関心をさらっていくのでおもしろくない。

犬が言葉を話せない以上は、もちろんすべて推測でしかありません。もしかしたら、本当に性格が悪くて意地悪をしているだけという可能性もあります。

しかし人間的な感覚だけで判断していると、犬の行動の裏側にあるものを見誤ってしまうかもしれません。犬達は時に人間臭い行動をとることもありますが、人間とは確実に異なる生き物なのです。

シツケやトレーニングが一筋縄ではいかない犬種

使役犬や牧羊犬の多くは、人間社会の中で働くことを目的に改良が重ねられてきた歴史を持ちます。そのため、教えられたことを覚えるのが得意――シツケやトレーニングが入りやすい性質の犬種が多いのです。

一方、原始的な犬やテリア・嗅覚ハウンド・視覚ハウンド等の猟犬は、その犬種が持つ性質を研ぎすます形で改良されてきました。そのため、自身の判断で行動を決めたがる性質が強く、シツケやトレーニングに時間がかかります。

シツケやトレーニングが思い通りに進まないと「この犬性格悪い!」と叫びたくなりますが、そういう性質の犬だと理解してじっくり取り組むしかありません。

次にあげる3犬種は、シツケやトレーニングに時間はかかるものの、時間をかけるかいのある素晴らしい犬種です。

アフガン・ハウンド

風になびく長く美しい被毛と、すらりとした体躯のスタイリッシュな大型犬。凛とした威厳のある立ち姿は、美しいを通り越してもはや高貴と表現したくなるほどです。

聖書の創世記に描かれているノアの箱船に乗った犬はアフガン・ハウンドだといわれるほど、古くから存在しています。自分の目で獲物を見つけて自身の判断で追いかける猟犬のため、人間に命令されて動くタイプではありません。

自分が認めた飼い主には従いますが、それ以外の人のことは無視するような態度が「性格が悪い」と言われてしまう所以なのでしょう。

ジャック・ラッセル・テリア

1995年公開の映画『マスク』のマイロ役として登場してからというもの、一気に日本でも人気が高まりました。マイロのあまりの可愛さに飼いたい人が続出しましたが、愛らしい見た目に反して中身は頑固で負けず嫌いなテリアの王道を行く小型犬です。

やりたくないことは頑としてやろうとせず、自分の興味をひたすら追いかけるマイペース気質の持ち主。何かをロックオンしたとたん飼い主を振り切って走り出すことも珍しくなく、シツケやトレーニングは一筋縄ではいきません。

この性質を性格が悪いと表現しているうちは、ジャックの良さは理解できないでしょう。

ミニチュア・ブルテリア

ユーモラスな顔立ちと、ガッチリした骨格にしっかり筋肉のついた体が特徴的な中型犬です。飼い主に対しては愛情深い犬ですが、興奮しやすく時に癇癪を起こしたりと、シツケやトレーニングには根気と忍耐が必要。

個性的な見た目だけでこの犬種を選んでしまうと、想像以上の頑固さに手を焼くことになるでしょう。しっかり自分の意思があるからこその性質ですが、そのせいで性格が悪いとレッテルを貼られてしまうことがあります。

性格が悪いとあきらめる前に部屋の模様替えで興奮させない工夫を

郵便配達や宅配便業者が来るたびに、愛犬がギャンギャン吠えまくるので恥ずかしい…。そんな時は、ダメもとで部屋の模様替えをしてみるといいですよ。

ちょっとしたことでいちいち大騒ぎする犬は、何かに不安や恐怖を感じています。であれば、まずは不用意に屋外の様子や玄関が見えないよう、ケージの設置位置を変えたり家具を配置し直してみましょう。

たったそれだけのことで、もしかしたら愛犬の注意がそらせるかもしれません。「うちの子は性格が悪いから…」とあきらめるのは、やれることをすべて試した後でもいいはずです。