犬を飼っていると、いろいろな悩みに直面するものです。中でも突然噛みつく、激しく吠えたてる等の攻撃的な行動は、時として深刻な問題に発展することもあります。

犬の性格が攻撃的になる原因は様々です。しつけや環境の問題など、飼い主の努力で改善が見込まれることもあれば、獣医師の助けなしには対処できない原因も…。

この記事では、犬の性格が攻撃的になる原因をいろいろな角度から考察しています。愛犬の行動に悩んでいるかたは、ぜひ参考にしてください。

その昔、攻撃的な行動は犬が生き延びるために必要だった

噛みつく、唸る、激しく吠えたてる等の攻撃的な行動は、犬が生き延びるために必要なものでした。野生で暮らす犬にしてみれば、命を脅かす外敵には近づいてほしくないに決まっていますよね。だからこそ、追い払うために攻撃的な行動をとるわけですが…。

人間社会の中で暮らす家庭犬の攻撃的な行動は、生き延びるどころか、むしろ犬の命を脅かしかねません。というのも、攻撃された相手の被害状況によっては、最悪の場合殺処分もありうるからです。

また、犬が攻撃した対象が無傷だったからといって、問題がないわけではありません。攻撃的な態度をとられた相手は物理的な傷を負わなかったとしても、精神的にはかなり不愉快な思いをすることになるからです。

となると、現代を生きる犬達にとって、攻撃的な性格にメリットはないと言っても過言ではないでしょう。だからこそ、愛犬の攻撃的な性格に悩んでいる飼い主さんは、きちんと原因を探って適切な対処をする必要があるのです。

犬の性格が攻撃的になる6つの要因と対処法

攻撃的になった愛犬の性格を改善するにあたって、まずは要因を見つけなければ適切な対処をすることはできません。

とはいえ、飼い主の犬への日常的な接し方が、攻撃的な性格の引き金を引いてしまった可能性もあります。多少耳に痛い内容があるかもしれませんが、ここはひとつしっかり向き合っていきましょう。

①犬の性格が攻撃的になる要因:社会化が足りない

犬の攻撃的な行動の根底にあるのは、相手に近づいてほしくない、どこかへ消えてほしいという恐怖や不安です。

子犬時代に適切な社会化期を過ごせなかった犬は、他の犬や人間とどう接すればいいのかわかりません。そのため、他者に対する怯えが転じて攻撃的な行動をとってしまうのです。

改善のポイント
子犬の社会化に比べて時間はかかるものの、成犬の社会化も不可能ではありません。

まずは毎日散歩で外へ連れ出す → 不特定多数の人や犬とすれ違えるようになる → 友人や知人に協力を仰いでゆっくり人慣れさせていく……というように、じっくり時間をかけて他者に対する恐怖を取り除いてあげましょう。

➁犬の性格が攻撃的になる要因:甘やかした結果の不適切なしつけ

子犬の頃の甘やかしが、攻撃的な性格の原因になることがあります。

例えば誰かにワンワン吠えたてているにも関わらず、「〇〇ちゃん吠えちゃダメ」と優しく声をかけるようなことです。子犬は相手を追い払おうとしているのに、飼い主から優しく声をかけられたら、「今の行動を褒められた」と解釈しても不思議ではありません。

かと言って、子犬が吠えるたびに「うるさい!」感情的に怒鳴りつけることは、子犬を恐怖で委縮させることになるでしょう。あるいは「飼い主も一緒になって吠えてくれている!」と、勘違いするかもしれません。

改善のポイント
飼い主と犬の適切な主従関係を作ることから始める必要があります。

とはいえ我流のしつけで失敗しているわけですから、ここはひとつドッグトレーナー等プロのアドバイスを受けましょう。飼い主さんの「愛犬との向き合い方」をしっかり見つめ直さない限り、愛犬の攻撃的な性格は改善しません。

③犬の性格が攻撃的になる要因:運動不足によるストレス

犬にとって屋外を歩いたり走ったりして心地よく疲労することは、健全な肉体と精神を保つうえで必要不可欠です。そのため、運動不足の犬はストレスが溜まりやすく、その状態が続くと攻撃的な行動をとりやすくなります。

改善のポイント
まずは毎日しっかり散歩に連れ出すことが先決。そして時にはドッグラン等で思う存分走らせたり、他所の犬と交流させるなどし、犬が肉体的・精神的に「楽しい」と感じる機会をたくさん作ってあげましょう。

④犬の性格が攻撃的になる要因:精神的なストレス

「長時間の留守番」「引っ越しで環境が変わった」「新しい犬や猫を家族に迎えた」「飼い主に子どもが生まれた」などのように、なんらかの変化や寂しいという感情が精神的に強りストレスを与え、犬の性格を攻撃的にしてしまうことがあります。

改善のポイント
留守番時に夢中になれるオモチャやオヤツを用意する、新たな環境に慣れるまではできるだけ一緒に過ごす時間を増やす、後輩犬や後輩猫より尊重していることをきちんと態度で示す等、愛犬に目を向ける時間を少しでも増やすことから始めましょう。

また、愛犬の居場所を落ち着いて休める場所に設置しなおすことも、精神的なストレス緩和につながります。

⑤犬の性格が攻撃的になる要因:縄張り意識

犬にとって家とその周辺は自分の縄張りです。そのため、縄張りに不用意に近づく他者を警戒するあまり、攻撃的な行動に出ることも…。

また、オモチャやオヤツなど自分の所有物(と認識しているもの)を奪われる際に攻撃的になる犬も少なくありません。

改善のポイント
犬が自分の縄張りだと主張している場所は、本来飼い主の縄張りでなければなりません。そのため、まずは適切な主従関係を作ることから始める必要があります。

同様に、オモチャやオヤツの所有権は飼い主のもの。オモチャやオヤツはあくまでも飼い主から貸与されているのであり、「ちょうだい」と命じたらすぐに返却するようにトレーニングすることが大切です。

⑥犬の性格が攻撃的になる要因:病気やケガによる痛みや不調

ケガや病気が原因で痛みや体の不調を感じている犬は、身を守ろうと攻撃的な態度に出ることがあります。

抱き上げたり体を触った時に突然噛みつくようになった犬は、もしかしたら体のどこかに痛みを感じているのかもしれません。また、寄生虫感染や皮膚病などで痒みを感じていると、イライラが高じていつもより攻撃的になることがあります。

体の状態にはこれといって異常がなく、攻撃的になる理由がまったく思い当たらないとしたら、認知症や脳腫瘍など脳になんらかの原因がある可能性も…。

改善のポイント
まずはかかりつけの獣医師に相談し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。仮に完治が期待できない疾患だったとしても、早期に発見して早期に治療を開始することで、生活の質(QOL)を向上させることができます。

愛犬の性格が攻撃的と感じたらお部屋作りにも一工夫を

愛犬の性格が攻撃的と感じたら、原因は何であれお部屋作りにも一工夫しましょう。なぜならせっかく改善に向けて頑張り始めても、愛犬が落ち着いて過ごせるお部屋作りをしておかないと、効果があがりにくくなってしまうからです。

• ケージやサークルなど、犬の居場所は足音やドアの開閉が少ない落ち着いた場所に設置する。
• 窓の外が見えないように、犬の目線の高さを考えて家具を配置する。
• 来客への咬傷事故を避けるためにも、いきなり玄関に出られないようにペットゲート等を設置しておく。

ちょっとした工夫をすることで、犬が不必要にイライラすることを防げるはずです。

トレーニングやしつけのし直しと並行して、お家の中を犬が安心して過ごせる環境にすることが、穏やかなドッグライフを手に入れる第一歩ですよ!