一般社団法人ペットフード協会の調査によると、いまや日本で飼育されている犬の54%がシニア犬といわれています。愛犬の長生きは飼い主にとって間違いなく嬉しいことですが、いつかは直面する老犬介護のことを考えないわけにはいきません。

この記事では、老犬介護を無理なく楽しく続けることをテーマに解説しています。老犬と楽しく暮らすお部屋作りのポイントや、介護を楽にしてくれる便利グッズもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

老犬と快適に暮らすお部屋作りは早めの準備が大事!

愛犬が年老いてからもずっと快適に暮らせるよう、加齢による体の衰えがはっきり現れてくる前に、老犬のことを考えたお部屋作りを始めましょう。

というのも、シニア期に入ってからの転倒やスリップによる怪我は、自力で立てなくなるほどの深刻な後遺症を残してしまう原因になりかねないからです。

犬も年をとるにつれて動きが緩慢になるものですが、どんなにゆっくりになろうと自力で歩けるか否かは老犬期のQOLに大きく関わります。(QOL/生活の質)

足腰にかかる負担を出来る限り軽減するためにも、愛犬の加齢を実感する前に次のような準備をしておきましょう。

ソファーをロータイプに変える。
ソファーやベッドに上がる際は補助階段(ドッグステップ)を使うように習慣をつけさせる。
床材をクッション性のあるものにする。
部屋の中の段差を出来るだけ無くし、バリアフリー化を図っておく。
一階と二階を自由に行き来できないよう、ペットゲートを設置する。

シニア期と呼ばれる年齢になったのに、うちの子は以前と何も変わらない――。一見しただけでは若い頃と何も変わらないように見えたとしても、愛犬の体は加齢によって確実に衰えています。

愛犬がいつまでも穏やかに暮らせるよう、できることからどんどん始めていくことが、楽しい老犬介護につながっていくのです。

老犬が快適に暮らすお部屋作りのポイント

食事や排せつの補助など愛犬になんらかの介護が必要になったら、室内の安全性確保はもちろんのこと、より突っ込んだ快適性にも目を向けましょう。

暑さ寒さに鈍くなっていることを前提とした空調管理

犬も人間と同じように、加齢による影響で暑さ寒さに対する反応が鈍くなっていきます。ハァハァしていないからまだ大丈夫と思っていたら、実は熱中症の一歩手前ということも。

空調管理は犬の年代に関わらず大切なポイントですが、寝たきりや自力で立ち上がることが困難になった犬を介護している場合は、より注意深く愛犬の様子を見守ることが大切です。

飼い主の気配が近くに感じられる寝床の位置

老犬になると、成犬の頃にくらべて寂しがりになることがあります。そのため、老犬を介護する際はいつでも飼い主の気配が感じられることを念頭に、ケージや寝床の設置場所を考えましょう。

愛犬が飼い主の気配を感じやすいということは、飼い主も愛犬の変化に気づきやすいというメリットがあります。

昼と夜をしっかり認識させる照明の工夫

認知症の犬を介護していると、いつの間にか昼夜が逆転してしまうことは珍しくありません。夜鳴きで飼い主の生活リズムが崩れてしまわないように、意識的に昼夜を愛犬に認識させるようにしましょう。

朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を感じさせ、日中は昼寝をしていても部屋は明るいままにしておきます。そのうえで就寝時間が近づいたら部屋の照明をできるだけ落とし、昼と夜の差をしっかり認識させることが大切です。

汚すことを前提にしたお部屋作り

老犬介護ではネショやお漏らし等、排泄の問題に直面することが多々あります。また、胃腸の機能低下による嘔吐や下痢・軟便といった問題が生じることも珍しくありません。

どんなに愛犬のことが大切でも、忙しい時に焦って汚れものの始末をすることは、飼い主に強いストレスを与えることになるでしょう。だからこそ、老犬介護が始まったらお部屋の中は汚れることを前提に準備しておくことが大切です。

床材が掃除しやすい素材であれば、汚れても慌てずに済みますよね。部屋のあちこちに掃除用具を用意しておけば、あたふた取りに走る必要もありません。

また、寝床を複数用意しておくことにより、オネショや嘔吐で汚れた時もさっと交換することができます。汚しやすいものは複数用意しておくと、かなりストレスを軽減できますよ。

老犬介護の大変さを軽減してくれるお役立ちアイテム

小型犬は小さいから介護が必要になっても大したことない……、というのは老犬介護を経験したことのない人の考え方です。たとえ極小サイズの犬だとしても、老犬介護には特有の大変さがあります。

ましてや中型犬、大型犬ともなれば、物理的な負担が増えることは想像に難くありません。無理なく老犬介護を続けていくためにも、介護に役立つアイテムをどんどん活用していきましょう。

オムツ……自力でトイレに行ける犬も、就寝時だけはオムツを着用することで、オネショや尿漏れの始末を軽減することができます。

ドライシャンプー……介護が必要な老犬は何かと体が汚れます。容易にシャンプーできないときは、ドライシャンプーを利用しましょう。悪臭の原因となる汚れがなくなるだけで、介護する飼い主の気持ちは楽になるはずです。

シリコンスプーン……自発的に食べようとしなくても、口の中に食べ物を入れると食欲を取り戻せることがあります。その際は舌や歯茎を傷つけないよう、柔らかなシリコン素材のスプーンがおすすめです。

シリンジ……食べ物をスプーンで口の中に入れても吐き出してしまうときは、シリンジで流動食を飲み込ませる方が確実です。水に溶かした薬剤を飲ませるのにも便利ですよ。

高反発マット……寝ている時間が多くなった老犬には、体が沈み込み過ぎない高反発マットのほうが立ち上がりやすいのでおすすめです。

低反発マット……寝たきりになった犬の介護には、床ずれ防止のためにも低反発マットのように体に負担のかかりにくい寝床を用意しましょう。

U字型の介護クッション……寝たきりになった犬の頭を持ち上げた状態で固定できると、飼い主の姿が認識しやすくなるため不安を抑える効果が期待できます。

歩行補助ハーネス……弱った足腰を支えるハーネスを使うことにより、自力で排泄しやすくなります。飼い主も排泄補助のために腰をかがめる必要がありません。また、散歩の際にも自力で歩かせてあげることができます。

老犬介護に疲れたときは…

どんなに可愛がっている愛犬であろうと、老犬介護は時に飼い主さんの気力と体力を大きく削ってしまいます。もしも「疲れた」と感じた時は、ひとりで抱え込まずに誰かの手を借りましょう。

飼い主さんが辛いと、愛犬はその気持ちを敏感に感じ取ってしまいます。老犬介護を無理なく続けていくためにも、飼い主さんは必要に応じて休むべきなのです。

かかりつけの動物病院

認知症による夜鳴きに悩まされている場合は、迷わずかかりつけの獣医師に相談しましょう。認知症の症状緩和薬を使うことで、老犬の不安を抑えて睡眠サイクルを改善できる可能性があります。

ペットシッター

ペットシッターに手伝いを依頼することで、飼い主さんが休息をとる時間を確保することができます。寝たきりの中型犬や大型犬は動物病院に連れていくのも一苦労ですが、送迎や受診代行サービスを利用すれば飼い主さんは体の負担をかなり軽減できるはずです。

老犬向けのデイケアやショートステイサービス

老犬ホームやペットホテルの中には、老犬向けのデイケアやショートステイサービスを提供しているところがあります。くたびれた時は介護のプロにお任せし、しっかり体を休めましょう。

飼い主さんが元気を取り戻すことは、間違いなく愛犬の幸せにつながります。