桃は日本神話や西遊記にも登場する、古来より邪気を払う仙果として親しまれてきた縁起の良い果物です。

甘くてジューシーな桃を食べようとしたら、愛犬にチョーダイとねだられたことのある飼い主さんもいらっしゃることでしょう。桃の果肉には犬が中毒を起こす成分は含まれていないので、犬も食べられる果物です。

「不老長寿の実」とも呼ばれている桃を上手に取り入れて、愛犬の健康な体作りに役立てていきましょう。

桃に含まれている犬の体に良い効果が期待できる成分

桃の果肉部分の約88%は水分ですが、いろいろな栄養素も含まれています。中でも犬の健康増進に効果が期待できる成分を3つご紹介しますので、愛犬に与える際の参考にしてください。

犬の体に良い成分:①カテキン

カテキンといえば緑茶ですが、実は桃にも含まれています。桃を食べているとき、わずかな渋みを感じたことのあるかたもいらっしゃることでしょう。その渋みの正体こそがカテキンです。

桃のカテキンは皮と皮の下に多く含まれていますが、皮は犬の胃腸では消化しにくいのでおすすめできません。犬に桃を与える際は、薄めに皮を剥くのが一番です。

カテキンの効果
・抗酸化作用(老化の抑制、病気予防)
・歯肉炎の鎮静作用

犬の体に良い成分:➁ナイアシン(ビタミンB3)

ナイアシンは水溶性ビタミンB群の中のビタミンB3のことです。ニコチン酸とニコチンアミドの総称ですが、タバコのニコチンとは異なります。

犬は体内でアミノ酸の一種トリプトファンからナイアシンを合成できますが、合成できる量は多いとはいえません。実際は1日の必要量に満たないことがほとんどで、食事から摂取することが望ましい成分の一つです。

ナイアシンの効果
・セラミドの合成促進
・粘膜の健康維持と皮膚の乾燥防止

犬の体に良い成分:③ペクチン(水溶性食物繊維)

桃には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方がバランス良く含まれています。

中でも注目したいのは、水溶性食物繊維のペクチンです。ペクチンは腸内細菌(善玉菌)のエサになるため、腸内環境改善に役立ちます。

ペクチンの効果
・お腹の調子を整える
・総コレステロール値上昇の抑制

番外編:体を温める作用――東洋医学で桃は温性

果物といえば体を冷やすイメージがありますが、桃は東洋医学では体を温める作用があるとされています。

犬は基本的に暑がりですが、空調の効いた室内では思った以上に体が冷えていることも…。特に寒がりな犬は、体を穏やかに温める桃の力で冷えを取り除いてあげましょう。

犬が食べても問題ない桃の適量とは

桃は犬の健康増進に役立つ成分がたくさん含まれています。しかし、だからといって欲しがるだけ与えていたら、肥満や体調不良の原因になることも。また、ペクチンの過剰摂取で下痢をする可能性も考えられます。

どんなに体に良い食べ物も、適量を守ってこそパワーを発揮するものです。

この章では犬の体重別に、食べても問題のない1日の適量について解説しています。桃を与える際の参考にしてください。

(適量を算出するにあたり、桃は以下の平均的なサイズを目安にしました)

桃全体の重さ/237g
皮と種を取り除いた可食部分の重さ/200g
可食部分全体のカロリー/約76kcal

● 体重4kg未満の超小型犬 → 1/8カット1きれ(25g)
● 体重5kg~9kgの小型犬 → 1/8カット3きれ(75g)
● 体重10kg~20kgの中型犬 → 1/4カット3きれ(150g)
● 体重25kg以上の大型犬 → 1/4カット3きれ+1/8カット1きれ(175g)

ただし、上記はあくまでも目安の量です。体格や体質によって、どの程度の量が最適なのかは犬個々によって違いがあります。

愛犬に初めて桃を食べさせる時は、上記の目安より少量から試してください。体調や便の状態を確認しつつ、愛犬にとっての適量を探っていく――これが美味しく桃を楽しむための秘訣です。

犬に桃を与えるときに注意しなければいけないこと

愛犬に桃を与える時は、必ず次のことに注意してください。

犬に桃を与えるときの注意点:①種と皮を取り除き果肉部分だけ与える

桃の種には青酸配糖体の一種アミグダリンが含まれているので注意が必要です。アミグダリンが犬の体内に入ると胃酸と反応して毒性の強いシアン化水素(青酸)に変化し、中毒を引き起こす危険性があります。

また、種を丸飲みすると腸閉塞の原因になる恐れがあります。誤食防止のためにも種はしっかり廃棄してください。不用意にゴミ箱に捨ててしまうと、イタズラした際に飲み込んでしまうかもしれません。
・皮は食べられるが犬には向かない
桃の皮には中毒を引き起こすような成分は含まれていませんが、犬の胃腸では消化が困難です。カテキンが多く含まれている部位なので捨てるのはもったいない気もしますが、犬に食べさせるのはやめておきましょう。

どうしても食べさせたい場合は、ミキサーなどで粉々に粉砕する一手間を忘れずに。

犬に桃を与えるときの注意点:➁アレルギー反応に注意

イチゴ、リンゴ、サクランボなどのバラ科の果物が体質的に合わない犬は、桃にもアレルギー反応を示す可能性があります。

微量ではあるものの桃にはタンパク質が含まれていますので、食後に下痢や嘔吐、あるいは皮膚の赤みや痒みなどの症状が見られた場合、桃を与えるのはやめておきましょう。

桃の果汁で床がベタベタ!簡単にきれいにできる方法2選

愛犬に桃をおすそわけしたら、果汁で床がベタベタになることがあります。これは桃に含まれている糖分が原因。果物の果汁汚れはなかなかに厄介で、水拭きしただけではベタベタがとれないことも…。

中性洗剤などを使えばきれいになりますが、犬が床をなめる可能性を考えるとあまり洗剤は使いたくありませんよね。

そんなときにおすすめの方法を2つご紹介しますので、ぜひ試してみてください。

熱めのお湯でしぼった雑巾で拭き取る

ベタベタの原因である糖分は、お湯が熱ければ熱いほど簡単に溶けてきれいに拭き取ることができます。

熱湯までは必要ありませんので、ゴム手袋をしていれば容易に耐えられる60度ぐらいのお湯で雑巾を絞って拭き取ると、意外なほど簡単にベタベタ汚れが落とせますよ。

重曹を溶かした水で拭き取る

重曹を溶かした水をベタベタ汚れにスプレーしてから拭き取るという方法も効果的です。桃の汁のベタベタだけではなく、皮脂などの油汚れもサラサラになってきれいに落とすことができますよ。

重曹には「純度95~98%の掃除用」と「純度98~99%の食用」があります。愛犬が床を舐める可能性を考えたら、食用を使ったほうがより安心といえるでしょう。

住まいの汚れを落とすのに便利な重曹ですが、基本的には水に溶けにくい性質です。きれいにベタベタ汚れが落とせたと思ったら、フローリングなどに白っぽく拭き残しが浮き上がってしまうことも。

そんなときはクエン酸を溶かした水で拭きあげるときれいにできますので、重曹とクエン酸の両方を用意しておくと便利です。

縁起の良い桃のパワーで愛犬の健康長寿を目指そう

桃は古来より縁起の良い果実とされてきた、まさに開運パワー全開の果物です。

神の実と呼ばれる理由には諸説ありますが、もしかしたらお腹を整える効果や体を温める作用が健康につながることから、不老長寿の実として珍重されてきたのかもしれませんね。

犬は甘味を好む生き物なので、甘くてジューシーな桃は大喜びすること間違いなし。桃の季節には甘くて美味しい桃を愛犬におすそわけし、仙果パワーで健康長寿を目指しましょう。