梨といえば、爽やかな甘い果汁とみずみずしいシャリシャリ食感がたまりませんよね。甘いにおいに誘われた愛犬に「ちょーだい」とおねだりされることもあるでしょう。梨の可食部分には犬の体に有害な物質は含まれていません。犬も食べられる果物で、和梨の約88%、洋梨の約85%は水分です。ちょっとした水分補給にも役立ちますよ。

この記事では犬が食べてもよい梨の適量や、与える際に気を付けたほうがよいことを解説しています。

犬の体に良い効果が期待できる梨の栄養成分5選

梨はリンゴに比べて栄養価が低い――といわれることがあります。リンゴはスーパーフルーツと称されるほど栄養価の高い果物。リンゴと比較されてしまったら梨はやや分が悪いといえますが…。

実は、梨にはリンゴにはない良さがあります。それは、リンゴに比べてカロリーと糖質量が低いことです。となると、ダイエット中のワンちゃんにも楽しんでもらえるのは嬉しいポイント。もちろん、梨には犬の健康維持に効果が期待できる成分がちゃんと含まれています。この章では代表的な成分を5種類ご紹介しますので、愛犬に梨を与える際の参考にしてください。

犬の健康をサポートする成分①カリウム

カリウムは体内の浸透圧調節に関わっているミネラルです。過剰なナトリウムを排出する働きにより、高血圧の予防が期待できます。ちなみに、梨とリンゴそれぞれ100gを比較してみると、梨140mg・リンゴ110mg。梨の方が多くカリウムを含んでいます。
犬の健康をサポートする成分➁食物繊維

梨には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれています。梨の可食部分100gに含まれている食物繊維の量は…

● 水溶性食物繊維→0.2g
● 不溶性食物繊維→0.7g

リンゴに含まれている食物繊維は水溶性0.4g・不溶性1.0gです。そのため「リンゴより食物繊維の含有量が少ない」と判断されがちですが、お腹の調子が整いにくいワンちゃんにとっては、むしろ多すぎないことがメリットになるケースも。

特に便秘がちの犬は食物繊維が多すぎると便が硬くなり過ぎてしまい、かえって排便しにくくなることがあります。便秘解消に果物を食べさせるとしたら、まずは梨から始めて次にリンゴを試す方法がおすすめです。

犬の健康をサポートする成分③アスパラギン酸

アスパラギン酸はアミノ酸の一種で、中枢神経系の保護や有害物質のアンモニアを体外へ排出する働きがあります。また、疲労物質の乳酸をエネルギーに変換する作用が期待できるため、ドッグスポーツを頑張っているワンちゃんのオヤツにも効果的ですよ。

犬の健康をサポートする成分④ソルビトール

ソルビトールは糖アルコールの一種で、低カロリーで甘味のある物質です。水分を保持する性質と便のpHを下げる作用があるため、便を柔らかくして排便しやすくする効果が期待できます。

また、ソルビトールには解熱効果があるので、暑い時期には水分補給+体の熱を冷ます目的で適量の梨を与えるのも良い方法です。ただし、お腹が弱い犬は下痢をしやすくなる可能性があるため、与える際はお腹の調子に注意してください。

犬の健康をサポートする成分⑤プロテアーゼ

プロテアーゼはタンパク質をアミノ酸に分解する酵素の総称で、分解速度を上げる働きに関与しています。すりおろした梨と肉を合わせると肉を柔らかく仕上げられるのは、プロテアーゼが働くからです。

この効果を利用することにより、老犬など胃腸の機能が衰えはじめた犬の消化促進に効果が期待できます。梨を上手に取り入れて、元気で長生きを目指しましょう。

犬が安全に梨を食べられる適量は?

梨がリンゴに比べてカロリーと糖質量が低いのは事実ですが、だからといって欲しがるだけ与えるのはNGです。あくまでも、1日の食事量と栄養バランスを崩さない範囲にとどめなければ、梨のメリットを最大限に活かすことができません。

基本的には1日に食べる食事量の10%以下のエネルギー量に抑えることが望ましいといわれていますが、どの程度が10%以下なのかわかりにくいですよね。

そこで、一般的なサイズの梨(幸水・豊水・二十世紀など)を与える際の1日の目安量を記載しました。ぜひ参考にしてください。

※梨の重さ/340g程度/皮と芯を取り除いた可食部分→289g(全体の85%)
 1/4カットは1きれ約72g、1/8カットは1きれ約36g

● 体重5kg以下の小型犬→約29g
● 体重10kg以下の小型犬→約58g
● 体重25kg以下の中型犬→約72g
● 体重30kg以上の大型犬→約96g

上記はあくまでも目安の量です。愛犬に梨を与える際は体調や持病などをきちんと考慮したうえで、適切な梨の量を考えるようにしましょう。

また、梨が体調不良の原因にならないように目安量は最大量と考え、これより少ない量を基本にすることが大切です。

犬に梨を食べさせるときに気を付けるポイント

梨は水分補給や便秘解消に一役買ってくれる良い果物です。しかし、必ずしも犬が食べなければいけない食材ではありません。

1日に与えてもよい適量を守るのはもちろんのこと、次のことにも留意することが大切です。

梨の皮・芯・種は取り除き、可食部分だけを与える

果物は皮つきで食べたほうが栄養価が高い――というのは人間が食べる場合の話です。梨の皮と芯はとても硬く、犬の胃腸ではまともに消化することができません。

また、梨の種にはアミグダリンという成分が含まれています。アミグダリンは体内に入ると強い毒性を持つシアン化水素(青酸)に代謝されるため、青酸中毒を引き起こす可能性があります。

せっかくの梨が胃腸の負担や体調不良の原因にならないよう、可食部分だけを選んで食べさせるようにしましょう。

熟していない梨は可食部分であろうと食べさせるのはNG!

熟していない未熟な梨は、本来であれば可食部分である果肉にもアミグダリンが含まれている可能性があります。

スーパーなどで販売されている梨は熟しているので心配はいりませんが、木になっている未熟な実や、未熟な状態で地面に落下した梨を愛犬が口にしないよう、充分に注意してください。

庭や近所に梨の木が生えている、あるいは梨狩りに愛犬を連れていく時などは要注意です。

梨は加熱せずに生で与えるのがおすすめ

犬の健康維持にぜひとも役立てたい梨の成分「カリウム」「アスパラギン酸」「プロテアーゼ」は、いずれも熱に弱い成分。せっかくの効果を失わないためにも、梨は生のまま与えるのがベストです。

とはいえ、「食物繊維」と「ソルビトール」は加熱しても効果は変わりません。

腎機能が低下している恐れのあるハイシニア犬などは、あえて加熱してから与えたほうが安心です。解熱効果のあるソルビトールが心配な場合も、ほんのり温かい状態ならお腹を冷やし過ぎることなく食べられます。

愛犬に梨をおすそわけするときは喉に詰まらない大きさにカット!

ほんのり甘く良い香りのする梨は、犬が喜んで食べるフルーツです。適量を守ればヘルシーなおやつになること間違いありません。

ただし、シャリシャリ食感を楽しませたいからと塊のまま食べさせるのはNGです。万が一丸呑みしても喉に詰まらないよう、必ず細かくカットしてください。

また、梨を食べさせたあとに嘔吐や皮膚の赤みなどの症状が出たら、愛犬の体質には合わなかった可能性が高いといえるでしょう。いずれにしろ、初めて梨を食べさせるときは、ごく少量から試してみるのが鉄則です。