警察犬というと、警察で育てられたシェパードやゴールデンレトリーバーなどの犬種が、事件の現場で活躍しているイメージがあるかと思います。所属が少し違いますが、保護犬も警察犬の道を歩むことは可能です。もちろん、保護犬が警察犬として活躍するまでには、非常に厳しい訓練を受けなければなりません。

本記事では、保護犬が警察犬になるための訓練内容に加えて、どのような性格が求められるのか、飼い主やトレーナーの役割についても詳しく解説します。保護犬が新たなキャリアを切り開くために、必要なことはどんなものなのかを一緒に見ていきましょう。

警察犬は大きく分けて2種類ある

警察犬には大きく分けて「直轄警察犬」と「嘱託警察犬」の2種類があります。それぞれの役割や運用方法に違いがあります。以下にまとめました。

1. 直轄警察犬

直轄警察犬は、警察が直接管理・運用している警察犬です。これらの犬は、警察内に専属の訓練施設やハンドラー(犬の管理者)があり、警察犬としての訓練や活動を日常的に行っています。直轄警察犬は、常時警察に所属しており、緊急時や特別な任務が発生した際に迅速に出動することができるよう、常に待機しています。

特徴

警察が直接管理し、専属の施設で訓練を行う
高度な訓練を日常的に行い、特別な任務に従事する
常に待機状態で、迅速な出動が可能

2. 嘱託警察犬

嘱託警察犬は、一般の飼い主が所有し、必要に応じて警察から依頼される形で活動する警察犬です。嘱託警察犬は日常的には一般家庭で過ごしており、特定の事件や捜索活動が発生した際に警察から呼び出され、任務を遂行します。嘱託犬の訓練は飼い主や専門のトレーナーが行い、試験に合格することで警察犬として認定されます。

特徴

一般の飼い主が所有し、警察から依頼される形で活動
日常的には家庭で生活し、事件や捜索活動時に出動
訓練や管理は飼い主やトレーナーが行う

保護犬がなれる警察犬の種類とは?

保護犬の場合、警察直轄ではなく嘱託ですが、保護犬は適切な訓練を受けることで様々な警察犬として活躍することができます。保護犬が持っている能力や特性を活かして、捜索や探知、救助など、多岐にわたる分野で重要な役割を果たすことが可能なのです。ここでは、保護犬がなれる代表的な警察犬の種類を紹介します。

嘱託警察犬(しょくたくけいさつけん)

地方自治体が依頼して活動する嘱託警察犬は、行方不明者の捜索や地域のパトロールなどに従事する仕事です。保護犬でも、地域のコミュニティでその能力を発揮し、社会に貢献することができます。嘱託警察犬は、比較的規模の小さい自治体や特定の地域での任務が多く、地域住民とのつながりが強い点も特徴です。警察と民間の飼い主の協力によって、柔軟に運用されるケースもあります。保護犬は特にこの分野で採用されることが増えています。

捜索犬(そうさくけん)

捜索犬は、行方不明者や遭難者を見つけるためにその優れた嗅覚を活用します。特に山岳地帯や災害現場での捜索活動では、犬の力が不可欠です。保護犬の中でも嗅覚が鋭く、人間との強い信頼関係を築ける犬が、この任務に向いています。また、災害救助活動でも活躍することが多く、被災者の捜索や人命救助に大きく貢献します。捜索犬は体力と集中力が求められ、厳しい訓練を経て、現場での高いパフォーマンスが期待されます。

麻薬探知犬(まやくたんちけん)

麻薬探知犬は、空港や港湾などで違法薬物の探知を行い、犯罪の抑止や捜査に重要な役割を果たします。麻薬の匂いを正確にかぎ分ける能力が求められ、細かい作業に耐える集中力が求められる仕事です。保護犬が持つ特性として、困難な状況でも強い忍耐力を発揮するため、麻薬探知犬としての適性を示すケースが増えています。

爆発物探知犬(ばくはつぶつたんちけん)

爆発物探知犬は、危険物の匂いを嗅ぎ分け、テロ対策や大規模イベントでの安全確保に貢献する仕事です。保護犬も適切な訓練を受けることで、この役割を担うことができます。爆発物を扱うため、高度な集中力と冷静さが求められるのが特徴です。大規模な国際イベントやVIPの警護など、非常に高い精度が必要とされる任務に従事することもあり、保護犬の中でも、ストレス耐性が高く、迅速に対応できる犬がこの任務に適しています。

災害救助犬(さいがいきゅうじょけん)

災害救助犬は、地震や洪水などの災害現場で、生存者や被害者を捜索する仕事です。保護犬もこの分野で非常に高い適性を示しており、人命救助活動で活躍しています。災害現場では、瓦礫の中や悪天候の中でも迅速に動き、精密な嗅覚で被災者の位置を特定するのが仕事です。また、保護犬は特に人間との絆を深めやすく、被災者との接触時にも安心感を与える存在としても重要です。感情的なサポート役としても、災害救助犬は重要な役割を果たしています。

保護犬が警察犬になるためのトレーニング場所とは?

保護犬が警察犬になるためには、特定のトレーニング施設や訓練プログラムを受ける必要があります。トレーニングの内容や場所は、警察犬としての役割に応じて異なりますが、以下のような場所や施設でトレーニングが行われることが多いです。

民間の警察犬訓練所

民間の警察犬訓練所では、主に嘱託警察犬を目指す犬が訓練を受けることが多く、保護犬もここで警察犬としての技術を習得することが可能です。飼い主やトレーナーが依頼して訓練を行うため、警察犬としての基本的な技術を学ぶプログラムが提供されています。

訓練には、家庭犬としての性格や習慣を警察犬に適応させるための技術が含まれます。また、保護犬にはメンタルケアやストレス管理も重要で、個々の犬の適性に合わせたトレーニングプランが作成されます。この施設では、犬の特性を生かし、警察犬としての能力を引き出すことが目標です。

警察犬になるにはどんな性格が向いてるの?

保護犬が警察犬になる場合、特定の性格や資質を持つ犬が向いているとされています。以下に警察犬に向いているとされる特徴を持つ保護犬の性格をまとめました。

1. 忍耐力がある犬

警察犬の任務は、長時間の捜索や追跡など、集中力と持続力が求められます。そのため、忍耐強く、長時間の作業を我慢できる犬が向いているでしょう。保護犬の中には、過去の厳しい経験から忍耐力が身についている子もおり、この点が警察犬に向いているとされています。

2. 集中力が高い犬

警察犬は、騒音や多くの刺激がある環境下でも、与えられた任務に集中する必要があります。特に捜索や探知の任務では、指示をしっかりと聞き、周囲の状況に左右されない高い集中力が必要です。保護犬の中でも、訓練を通じて集中力を高められる犬が適しています。

3. 強い信頼関係を築ける犬

警察犬はハンドラー(トレーナー)との信頼関係が極めて重要です。特に保護犬は、新たな飼い主やトレーナーと深い絆を築くことができる子が多く、これが警察犬としての任務において大きな強みとなります。信頼関係が築ける犬は、指示に従いやすく、任務中でも冷静に対応できます。

4. 勇敢で冷静な犬

警察犬は危険な任務にも従事するため、怖がりすぎず、状況に応じて冷静に行動できる勇敢な性格が必要です。保護犬の中にも、過去の困難な環境に適応し、冷静さを保てる犬がいます。この特性は、爆発物探知や捜索救助といった任務で特に重要です。

5. 適応力がある犬

警察犬は、さまざまな環境や状況に対応できる適応力が求められます。保護犬の中でも、新しい環境や刺激に素早くなれる犬は、警察犬の任務にも適応しやすいです。適応力のある犬は、変化に対応しやすく、実際の現場でも活躍できます。

これらの特徴を持つ保護犬は、厳しい訓練を乗り越え、警察犬として社会に貢献する可能性が高いでしょう。訓練を通じて、保護犬の持つ潜在能力を引き出すことができれば、警察犬として成功するチャンスは十分にあります。

まとめ

保護犬が警察犬になるためには、厳しい訓練と適切なサポートが欠かせません。特に保護犬は、育ってきた環境によって、トラウマを克服する必要があるなど時間のかかる場合もあるります。警察犬に向いているかどうかは、保護犬それぞれの特徴を見極めて、チャレンジしてみるのも良いでしょう。道のりは険しいですが、一緒に乗り越えれば絆も深まります。もし警察犬デビューを目指すなら、まずは訓練所などに相談してみてください。