現在、ペットとして様々な動物が飼われていますが、飼育頭数は長らく「犬1位」「猫2位」の時代が続いていました。しかし、2017年に順位が逆転したのは記憶に新しいですよね。

犬と猫はどちらも素晴らしい伴侶動物ですが、最大の違いは何かといえば――。猫はどの種類もフォルムやサイズ感が似通っているのに対し、犬はフォルムも体格も犬種によって大きく異なることです。

この記事では、数ある犬種の中から「牧羊犬・牧畜犬」について詳しくご紹介します。

イヌの犬種は公認・非公認を合わせて700~800種類!

犬と一口に呼んではいても、驚くほど種類は様々です。血統証明書などの発行をおこなっているジャパンケネルクラブ(JKC)によると、世界にはなんと700~800種類もの犬種が存在しているのだとか。

JKCでは加盟している国際畜犬連盟(FCI)に準じて、355犬種を1~10のグループに分けて公認犬種としています。そして犬種ごとにそれぞれの理想像を犬種標準として記述し、ドッグショーやブリーディングの参考にしているのです。

<参考>JKCの犬種グループ

1G:牧羊犬・牧畜犬
2G:使役犬
3G:テリア
4G:ダックスフンド
5G:原始的な犬・スピッツ
6G:嗅覚ハウンド
7G:ポインター・セター
8G:7グループ以外の鳥猟犬
9G:愛玩犬
10G:視覚ハウンド

ちなみに、猫種の数は認定団体によって多少の違いはありますが、およそ50~60種類ほどが公認されています。

非公認品種を合わせても100~300種類程度といわれていることからも、犬の種類がいかに多いかがわかりますよね。

牧羊犬・牧畜犬は知力・運動能力を兼ね備えた体力自慢の犬

1グループに分類されているのは、羊や牛といった家畜の群れを誘導・保護するために働く牧羊犬と牧畜犬です。

広大な放牧地を縦横無尽に駆けまわりながら、外部から侵入するかもしれない野生動物から家畜の群れを守っています。さらには、飼い主の指示通りに群れが移動するのを手伝うのも、牧羊犬や牧畜犬の重要な役割です。

1Gには体力・知力・運動能力の三拍子揃った牧羊犬と牧畜犬が、合計31犬種分類されています。日本で飼育実績の多い人気犬種については後述していますので、参考にしてください。

牧羊犬・牧畜犬の優れた性質には気力と体力の充実が欠かせない

牧羊犬・牧畜犬は身体能力と理解力の両方を併せ持った犬を作出するために、長い年月をかけて改良してきたという歴史があります。

しかし、メリットであるはずの高い能力は、家庭犬という枠の中では収まりきらないことも…。というのも、1グループの犬達にとって運動不足や知的欲求が満たされない生活は、苦痛以外の何ものでもないからです。

牧羊犬・牧畜犬が家庭犬としてふさわしくないといっているのではありません。むしろ、愛犬と一緒にアクティブな生活を楽しみたい人にとって、牧羊犬・牧畜犬は素晴らしい家族の一員になってくれることでしょう。

問題は、牧羊犬・牧畜犬の性質を正しく理解しないまま飼育してしまうことです。

運動不足や知的欲求の不足で心身ともに大きなストレスを抱えた1Gの犬達は、破壊行動・噛み癖・無駄吠えなどの問題行動を引き起こしてしまうことがあります。

日本で飼われているお馴染みの牧羊犬・牧畜犬

1Gの「牧羊犬・牧畜犬」には全部で31種類の犬種が分類されています。しかし、すべての犬種が日本で飼育されているわけではありません。

この章では、日本でも飼育頭数の多い犬種についてご紹介します。

ウェルシュ・コーギー・ペンブローク

胴長短足と愛らしい顔立ちが人気の中型犬。イギリス原産の牧畜犬(牛追い)です。

もともとは牛のかかとを噛んで誘導していたことから、噛み癖が強く出てしまうことも。子犬の頃からしっかり噛み癖を矯正することで、誰からも愛される良い犬に成長します。

シェットランド・シープドッグ(シェルティー)

フサフサでカラフルな長毛が美しい中型寄りの小型犬。イギリス原産の牧羊犬です。

羊の足を噛んで誘導していた名残から、突然噛みついてしまうことがあります。小型だからと噛み癖を放置せず、きちんとシツケをすることが大切です。

ジャーマン・シェパード

狼を思わせる野性的な風貌と、訓練性能の高さが魅力の大型犬。ドイツ原産の牧羊犬です。

ストレスのかかる状況下でも落ち着いて行動できる性質のため、牧羊犬・牧畜犬だけではなく軍用犬・警察犬・警備犬など、使役犬としても様々な分野で活躍しています。

ボーダー・コリー

長すぎない長毛と均整の取れた体型が魅力の大きめの中型犬。イギリス原産の牧羊犬です。

数あるイギリス原産の牧羊犬の中でも、最も作業能力が高いといわれています。実際に、犬の知能テストにおいては1位を獲得しました。

この犬は凝視することで羊をコントロールする性質があることから、シツケにおいてもアイコンタクトをとることが重要です。

ラフ・コリー

豊かな長毛とバランスの良いプロポーションが美しい大型犬。イギリス原産の牧羊犬です。

体格はかなり大きいですが性質的に落ち着いており、小型犬などとも仲良くやっていける友好的な性格の持ち主です。ただし、群れ(家族)を守るために吠えることがあるため、無駄吠えにつながらないシツケが欠かせません。

室内で牧羊犬・牧畜犬を飼うときに注意することは?

牧羊犬・牧畜犬は屋外飼育をしたほうがよさそうなイメージがありますが、実際には意外なほど室内飼育に向いています。

というのも、牧羊犬・牧畜犬は群れで行動することを得意としているため、リーダーである飼い主家族と同じ空間で過ごすことが精神的な安心感につながるからです。

とはいえ、小型の愛玩犬と同じような感覚というわけにはいきません。牧羊犬・牧畜犬を室内飼育するのであれば、しっかり心しておかなければならないことがあります。

● 長めの散歩で毎日しっかり体を動かす
● ダメ・マテ・スワレ・フセ・オイデなどの基本的なしつけを徹底する
● 知育トイ・ドッグスポーツなどを生活に取り入れて知力を刺激する
● 定期的に屋外で全力疾走させてストレスを発散させる

また、室内で牧羊犬・牧畜犬が安全に過ごせるように準備することも必要です。

● 犬の足が滑りにくい床材を敷きつめておく(カーペット、タイルマット等)
● 電化製品のコードやコンセントはイタズラされないようにしっかり隠しておく
● 犬が届く範囲には壊れやすいものや危険物を置かない

牧羊犬・牧畜犬は身体能力が高く、「ここなら大丈夫だろう」という高さにジャンプで届いてしまうことは珍しくありません。また、ダイナミックに動いた結果、ガラステーブルなどを破壊してしまうこともあります。

しっかりシツケとトレーニングをすることでだんだんと落ち着いていくものですが、子犬期特有のあり余るようなエネルギーを甘く見てしまうのは禁物。

また、牧羊犬・牧畜犬と室内で楽しく暮らしていくには、「ちょっとくらいぶっ壊れてもいいや!」と思える飼い主さんのおおらかさも必要です。

牧羊犬・牧畜犬の能力を引き出して楽しいドッグライフを送ろう!

日本国内でも真の牧羊犬・牧畜犬として日々仕事をしている犬はいます。しかし、間違いなく少数派。ほとんどの犬は家庭犬として暮らしています。

せっかく身体能力・知力ともに優れている牧羊犬・牧畜犬を家族に迎えるなら、とことんまで能力を引き出してあげましょう。

日本の家屋は欧米に比べて狭いから…、などと残念に思う必要はありません。愛犬とともにドッグスポーツやアウトドアを楽しむことで、1Gの犬達はどんどん魅力的な犬に成長していけるのです。