可愛い愛犬のぬくもりを感じながら眠る…。想像しただけで、毎晩幸せな夢が見られそうな気がしますよね。
しかし、犬と一緒に寝るのはシツケによくない、衛生面に問題がある、そもそも飼い主が熟睡できないといった否定的な意見があるのも事実です。

そこで、この記事では愛犬と飼い主さんが一緒に寝ることについて、肯定的な面と否定的な面の両面から考えてみました。
愛犬と一緒に寝てもいいものか迷っているかたは、ぜひ参考にしてください。

犬と一緒に寝るのはよくないと言われる理由

一昔前まで、犬は屋外飼育が主流でした。
そのため、そもそも「愛犬と一緒に寝る」という発想自体が、あまりなかったのではないでしょうか。
しかし、いまでは飼育されている犬の8割以上が室内で暮らすようになり、犬という存在はペットから家族の一員となりました。
その結果、飼い主さんが愛犬と一緒に寝たいと考えることは、ある意味とても自然な流れなのかもしれません。

しかし、犬と一緒に寝るのはよくないとする意見には、それなりに理由があるのです。
すでに愛犬と寝ている、あるいはこれから愛犬と寝たいと考えている飼い主さんは、きちんとデメリットも理解しておきましょう。

就寝中に犬がケガをするリスク

愛犬と一緒に寝ることで一番避けなければいけないのは、犬にケガをさせてしまうことではないでしょうか。
飼い主さんが寝返りを打ったひょうしに犬の体の一部に強い力がかかり、関節を傷めたり内臓を圧迫してしまうかもしれません。
また、勢いでベッドから落下する可能性も考えられますよね。

大型犬ならまだしも、小型犬の場合は大きなケガにつながりかねません。
人と犬という体格が違うもの同士が一緒に寝ることには、そういったリスクがあることを常に念頭に置いておきましょう。

飼い主の安眠を妨げてしまう可能性

犬と一緒に寝ることが、飼い主の熟睡を妨げてしまう可能性があります。

健康な成人は一晩に約20回前後寝返りを打つといわれていますが、すぐそばに愛犬が寝ていると、無意識のうちにぶつからないよう気遣うものです。その状態が連日のように続いてしまうと、睡眠の質そのものを低下させてしまう可能性も…。

睡眠が浅くなると様々な体の不調につながるため、愛犬と一緒に寝てもぐっすり眠れるかは、重要なポイントの一つといえるでしょう。

衛生面の問題

犬と同じ寝具で寝ていれば、抜け毛やよだれなどが付着することは避けられません。
また、肛門や陰部の汚れがシーツや毛布に付くこともあるでしょう。
さらには、いつの間にか犬の体に寄生していたダニやノミなどが、飼い主さんに移る可能性も考えられます。

うちの犬は清潔にしているから大丈夫、と安易に考えるのではなく、そういった衛生面でのリスクがあることもきちんと理解しておきましょう。

人獣共通感染症の不安

人間と犬が共通してかかる感染症――人獣共通感染症(ズーノーシス)のこともきちんと知っておくべきです。
現在、WHO(世界保健機関)で確認されている人獣共通感染症はおよそ150種類ありますが、そのうち約50種類は日本でも確認されています。

病原体にはウイルス・細菌・真菌・寄生虫などいろいろありますが、いずれも目視できないため、どのタイミングで感染するかはわかりません。
そのため、免疫力の低下しているかたや高齢者、免疫力が未熟な幼児、妊娠しているかたなどは特に注意が必要です。

犬がひとり寝できなくなる可能性

毎日飼い主さんと一緒に寝ている犬は、それが当たり前になってしまいます。
すると、なんらかの理由でひとり寝しなければいけなくなったとき、精神的に強いストレスを感じることになるでしょう。

自分は愛犬を絶対にひとりにしない!と決めていたとしても、病気やケガで入院したり、災害で離ればなれになる可能性はゼロではありません。

「飼い主と愛犬が一緒に寝る」と「愛犬がひとりで寝られない」を、イコールで結んではいけないのです。

犬と飼い主が一緒に寝ることのメリット

飼い主と愛犬が一緒に寝ることのメリットは、なんと言っても幸福感を味わえることです。
お互いの温もりを感じながら穏やかに睡眠をとることができたら、これぞまさしく癒しのひとときという感じがしませんか?

これはなにも、飼い主側だけのことを言っているのではありません。

群れの動物である犬にとって、リーダーである飼い主さんのそばで寝られることは、大きな安心感につながるはずです。
動物にとって不安なく睡眠をとれる環境は、間違いなくメリットといえるでしょう。

ただし、これはあくまでも飼い主と愛犬が正しい主従関係を築けている場合に限ります。

愛犬が飼い主のことを群れのリーダーだと認めていなければ、犬にとって飼い主と一緒に寝ることが安心感にはつながりません。
飼い主と一緒に寝ることで愛犬を心身ともにリラックスさせられるかは、飼い主のリーダーシップにかかっています。

愛犬と快適に寝るためのヒント

犬と一緒に寝ることのデメリットをきちんと理解することは、愛犬と快適に寝るためのヒントにつながっています。
ただ単純に自分の布団に愛犬を寝かせるのではなく、犬と人の双方が気持ちよく眠れるよう、次のポイントについて考えていきましょう。

ベッド(布団)は飼い主と犬がゆったり寝られるサイズを選ぶ

犬と一緒に寝るベッドや布団は、できるだけのびのび眠れるサイズを選びましょう。
狭いベッド(布団)でも犬と一緒に寝ることはできますが、気持ちよく寝返りが打てないと飼い主も犬も安眠できないからです。

寝室用のトイレを別途設置しておく

犬と一緒に寝ていて一番困るのは、オネショなどの粗相です。
そのため、普段使っているトイレとは別に、寝室にもトイレを準備しておきましょう。
寝室にトイレがあれば夜中の排泄もしやすくなるため、愛犬がトイレを我慢しないですみます。

また、オネショをされたら嫌だからという理由でオムツをするのはNGです。
オムツをつけなれない犬にとって、オムツはストレスにしかなりません。

もしも愛犬のトイレトレーニングが不十分だとしたら、その状態で一緒に寝るのは我慢したほうがよいでしょう。
一日でも早くトイレトレーニングを完成させることが優先です。

あえて一緒に寝ない日を設定する

飼い主と一緒に寝ることが当たり前になってしまうと、犬にとって一緒に寝られない日がストレスになってしまいます。
そういったことを回避するには、意識的に愛犬と一緒に寝ない日を設定することが大切です。

なんらかの事情で飼い主と一緒に寝られないときも、ストレスをなるべく軽減できるよう、一緒に寝ない日はクレートやケージの中で寝るように習慣づけておきましょう。

ただし、クレートやケージの中を犬が安心できる空間にするためには、日頃からのクレートトレーニングが欠かせません。

愛犬が不安がるから一緒に寝るのではなく、一緒に寝るときもひとりで寝るときも、愛犬がぐっすり眠れるように準備しておくことがなによりも大切です。

愛犬の気持ちを正しく尊重しよう

犬と一緒に寝るときに考えなければいけないこと――それは、犬の気持ちを正しく理解して尊重することです。
飼い主さんは愛犬と一緒に寝たかったとしても、犬がいつの間にか自分の寝床に戻っているとしたら、ひとり寝のほうが落ち着くのかもしれません。

犬と一緒に寝ることには良いという意見と悪いという意見の両方があります。
どちらが正しいということではなく、大切なのは犬も人も気持ちよく安眠できることではないでしょうか。