犬を飼っていると、人間と同じように犬がいびきをかいている場面を見たことがある人も少なくないのではないでしょうか?
愛犬であれば「いびきも愛くるしい」と微笑んで見ていられるかもしれませんが、いびきを一つの「症状」として心配する必要はないのか、といった疑問もあるかと思います。
また、なぜいびきをかくのか純粋に興味を持つ方もいるかもしれません。
このコラムでは、犬のいびきの種類から、それぞれの原因や推奨される対応を紹介しています。

いびきの仕組み

そもそも、まずいびきがどのようにして起こっているのかを理解しておきましょう。
いびきとは、鼻や喉の空気の通り道(気道)が何らかの原因によって狭くなることで引き起こされます。
狭い気道に無理やり空気を通すことで、気道が開いたり閉じたりして音が出るという仕組みです。

深い睡眠時に一時的に出るようないびきは、気道を確保するための筋肉が緩くなることで発生しています。
こういった場合は、姿勢を変えたり目覚めたりすることで止まるもので、特に心配する必要はありません。
なお一般的には構造上、鼻呼吸よりも口呼吸の方が気道が狭くなり、就寝時のいびきが起こりやすくなります。

いびきの種類・考えられる原因

いびきといってもその種類や原因は様々です。
場合によっては早急に対応が必要になる可能性もあるので、まずはあなたの愛犬がどのようないびきをかいているのか確認してみましょう。

① 一時的ないびき

鼻づまりなどにより無意識に口で呼吸をするようになり、いびきをかいているパターンです。
体勢を変えることで止まったり、日によっていびきの有無が変わるのであれば、特に心配しなくても良いでしょう。

② ある時期からいびきをかくようになった

以前はいびきをかいていなかったのに、いびきを毎日のようにかくようになったというパターンです。
加齢によっていびきをかきやすくなるものですが、それだけではなく急に鼻や喉に炎症やできものなど、呼吸を妨げるようなものができた可能性も考えられます。
これだけでは原因が特定できないので、一度動物病院の受診をされることをおすすめします。

③ 短頭種(パグやフレンチブルドッグ、チワワ、シーズーなどの鼻ぺちゃタイプ)

生まれつき鼻から喉の構造が狭いため、日常的にいびきをかきやすいという特徴があります。
ただし、歳を重ねるにつれていびきがだんだん大きくなっていると感じたら注意が必要です。
炎症の慢性化や加齢によって、さらに気道が狭くなっている可能性が考えられます。
念のため動物病院で受診して、特に支障がないのかを確認することをおすすめします。

④ 断続的にいびきをかく(いびきが急に止まって、また始まる…をくり返す)

睡眠時無呼吸症候群が引き起こされている可能性があります。
無呼吸の時間が長くなってしまうと、窒息死にいたる危険性が高まってしまいます。
早めに動物病院の受診をされることをおすすめします。

動物病院では、レントゲンなどで気管や肺の状態を確認してもらうのが良いでしょう。
炎症などによりいびきがひどくなっているような場合には、消炎剤が処方されるのが一般的ですが、構造的な異常など、原因や状況によっては外科手術を要することもあります。

いびきを引き起こしやすい病気や身体状況

いびきの種類から犬の身体の状態をある程度推測することもできますが、ここでは各種いびきを引き起こしやすい病気や身体状況を紹介します。
まだいびきをかいていない犬でも、以下の特徴が一つでも当てはまる場合は注意して様子を見ておきましょう。

① 肥満

いびきは気道が狭くなることで引き起こされるため、肥満の場合は「脂肪」により気道が圧迫されて発生するということになります。
また、太っていると少しの運動でも体温や心拍が上がってしまうため、呼吸が速くなり、気道に負荷がかかりやすくなってしまいます。

② 外鼻孔狭窄(がいびこうきょうさく)

鼻の穴(外鼻孔)が狭く(狭窄)なっていて、鼻から充分な空気を取り込むことができない状態のことをいいます。
一般的に犬の外鼻孔の形はコンマのような形をしていますが、短頭種の外鼻孔はL字のような形をしているため、外鼻孔狭窄になりやすい傾向があります。

③ アレルギー

花粉やダニ、ホコリなどのアレルギー物質により、鼻の内部に炎症が引き起こされます。
症状としてはくしゃみや鼻水が出るだけでなく、粘膜が腫れて気道を圧迫し、いびきをかきやすくなります。

④ 軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)

犬にも人間にも、軟口蓋(上顎の奥の柔らかい部分)というものがあります。
飲んだり食べたりする物が鼻の方に逆流するのを防いでくれるものです。
これが長く分厚いことで喉の入口に引っかかって気道が確保しづらくなり、いびきを引き起こします。
軟口蓋過長症は一般的に先天性のもので、短頭種に多く見られます。

⑤ 加齢

気管がつぶれないように支える筋肉がありますが、年齢とともに筋肉は衰えていくため、姿勢によっては気管を支えられず気道が狭くなり、いびきを引き起こしやすくなります。
気をつけたいのは、加齢以外の原因として鼻や喉のあたりに腫瘍ができた可能性が挙げられることです。
腫瘍の場合には、加齢によるいびきよりも緊急性は高くなるため、早めに動物病院で受診するようにしましょう。

いびきの対処法

炎症剤や外科手術といった処置が必要とならないように、いびきをかく犬に対して私たちが対処できることもあります。
適切な予防方法を知っておくことで、犬の健康上のリスクを減らしていきましょう。

◆ 就寝時の体勢を変えてあげる

普段からいびきをかく犬が就寝時にいびきをかいていた場合、まずは体勢を変えてあげましょう。
気道がしっかり確保されて、呼吸がしやすくなります。

◆ アレルゲンを排除してあげる

ハウスダストやダニなどが原因でアレルギーを起こしている場合には、小まめに掃除をすることで解消される可能性があります。
アレルギーの原因については一度検査を受けてみるのもおすすめです。
また、タバコの煙を吸い込むと鼻の粘膜が刺激されて鼻水が出やすくなるので、鼻づまりからいびきを引き起こすこともあります。
家族に喫煙者がいる場合には、犬の近くでは吸わないようにするなどの工夫をしてあげるだけでも改善される可能性が高まります。

◆ 過度な運動や興奮を避けてあげる

短頭種に限らず、気道が狭く息を吸うのに力を要する犬の場合、日中に呼吸が増えると喉がむくんでいびきをかきやすくなります。
そのため、呼吸を増やすような過度な運動や興奮状態はあまり望ましくはないでしょう。
また、同じ理由で暑さもいびきをかきやすくなる原因となります。
夏場などは特に気をつけて、なるべく涼しい環境を整えてあげましょう。

◆ 体重管理をしてあげる

肥満はいびきの原因になるだけでなく、日常の呼吸にも負担がかかることになります。
また、体重の増加によって足や内臓に負担が増えるなど、さまざまなリスクが挙げられます。
食事やおやつの量、運動量などは適正な目安を設けて維持しておき、小まめに体重をチェックしてあげることも心がけましょう。

いびきに限らず、気になる症状がある場合には念のため早めに受診するのが良いでしょう。
もし何ともなかった場合でも、早めに安心できるというメリットがあります。
逆に受診を先送りにして、万が一「手遅れ」になってしまったら…と考えると、後悔してもしきれませんよね。
家族と同様に大切な愛犬と少しでも一緒に過ごせるように、変化には敏感に気付いて、リスクは早めになくせるように行動していきたいですね。