何度も面談を重ね、保護犬がいよいよ自宅にやって来た日になりやすいのが、動かないことです。面談をしていたときとは雰囲気も違い、せっかく楽しく過ごせると思っていたのも束の間その場から動かない。ということが良くあります。保護犬センターにいた時は、散歩など遊べていたはずなのに、突然警戒されてしまうと新しい飼い主となった方はどうしたらわからないでしょう。今回は、保護犬が自宅に来たが動かない場合の理由や接し方などを紹介します。

保護犬が動かないその訳は?恐怖と不安の解消法

保護犬が新しい家に来たばかりで動かない場合、その主な理由は大きく分けて恐怖と不安です。新しい環境、見知らぬ音や匂い、見慣れない人々に囲まれて、保護犬は圧倒されてしまうことがあります。このような状況での兆候としては、体を小さくする、震える、目をそらすなどの行動が見られます。

保護犬によくある怖いもの

保護犬は急な環境の変化が苦手です。一例をあげていきます。

今までとは違う場所
騒がしい場所
聞きなれない声がする
知らない動物がいる
大きな音がする
突然触られる

上記は、保護犬が引っ越しした時にありがちな環境の変化です。保護犬の性格にもよりますが、多くは上記のことが苦手です。

環境への慣れと安心感を与える方法としては、まず保護犬に安全なスペースを提供しましょう。保護犬専用の寝床や避難できる隠れ場所を用意することで、心を落ち着かせる場所を確保できます。また、日常のルーチンを確立し、穏やかな声で話しかけることも重要です。そうすることで徐々に信頼関係を築いていきます。力づくで無理に行動させようとせず、保護犬が自分のペースで自ら新しい環境に慣れるよう配慮することが大切です。

強引な行動は絶対NO!優しいアプローチで信頼を築く

保護犬を迎える際、強引な行動は避けるべきです。特に新しい家に慣れる過程で、無理やり引っ張るといった行動は逆効果になることが多く、保護犬の心理的なストレスを増大させる可能性があります。保護犬が自宅に来たばかりの時は、特に繊細なアプローチが求められます。

無理やり引っ張るのは逆効果

新しい環境に恐怖を感じている保護犬を無理やり引っ張ると、それがトラウマにつながりかねません。その結果、人と馴染むまでにかなり時間がかかってしまいます。保護犬が自宅に来た際には、まずは静かな環境を提供し、彼らが新しい空間に慣れるための時間を与えることが重要です。そっと見守りつつ自由に探索させることで、彼らの好奇心を引き出し、不安を軽減することができます。

たとえば、お散歩に行こうと外に出したとき、動かないということもあります。初めてくる土地の道路には、色んな犬の臭いもあることでしょう。そんな中、突然歩かせようと思っても全くその場から動かず結局家に帰る羽目に。特に首輪を使っている場合、そこにトラウマがある可能性もあります。胴輪など、体に負担のかからないものをつけて、最初は家の前をリードをつけたまま少し自分で歩けばそれでOKです。なるべく同じ時間帯に出すようにして慣らしていきましょう。慣れてくると少しずつ距離が伸びていくはずです。

ポジティブな強化を利用した接し方

保護犬に対しては、ポジティブな強化を利用したトレーニングが効果的です。たとえば、新しい行動を学ぶたびにおやつで報酬を与えることで、その行動を積極的に繰り返すようになります。声のトーンを優しく保ち、穏やかに接することで、保護犬は徐々に飼い主に信頼感を抱くようになります。

「最初の一歩」が踏み出せないなら悩むより相談がおすすめ

新しい家庭に迎え入れられた保護犬がなかなか最初の一歩が踏み出せないとき、専門家の意見を聞くのも有効です。今ある疑問を相談することで、犬の過去の経験と現在の行動を見比べ、適切なトレーニングプランを立てることができるでしょう。ここでは、最初の一歩を踏み出すために専門家に相談するメリットを紹介します。

専門家の助けを借りるメリット

保護犬が動かない場合、そのままにしておくのは健康的にも良くありません。一人で悩むよりも訓練士などの専門家に相談すると素早い問題解決につながるでしょう。メリットとしては、保護犬に合わせた解決策を提示してくれることにあります。訓練士などの専門家は保護犬の行動パターンを正確に評価し、それに基づいた個別のトレーニング方法を提案してくれます。

これにより、不適切なしつけによる逆効果を避け、犬の不安を和らげる効果的なアプローチが可能になります。また、専門家は犬の行動に関する科学的な知識を持っているため、飼い主が理解しにくい犬のサインを読み解く手助けをしてくれます。

ただし、保護犬にも状況を受け入れる時間は必要です。トレーニングは急ぐ必要はなく、じっくりゆっくりを目安としてください。

譲渡元や動物保護団体との協力

保護犬を譲渡する団体やシェルターと協力することも、新しい環境での保護犬の適応を助ける上で重要です。保護犬からすると実家の様な場所にあたり、これらの団体は、保護犬の過去の環境や健康状態、行動特性についての詳細な情報を持っています。その情報を活用することで、飼い主は犬に最適なケアを提供するための具体的な指針を得ることができるでしょう。

また、団体はしつけの初期段階で遭遇するかもしれない問題に対してサポートやアドバイスを提供することができるため、新しい飼い主と犬の間の信頼関係の構築を助けます。
困り事があればすぐに相談してみてください。

時間も味方にしてじっくりと関係を築く方法

時間を味方につけ、保護犬とじっくりと関係を築くには、環境やアプローチの工夫が必要です。特にストレスの少ない日常生活を提供し、共に過ごす時間を大切にすることが、信頼関係を深めるためには欠かせません。

ストレスの少ない日常生活の提供

保護犬は、新しい環境に対する不安や過去の経験からストレスを感じやすいため、日常生活での安心感の提供が重要です。例えば、騒音の少ない静かな場所での休息や、一定のルーチンを作り、規則正しい食事や散歩の時間を設けることで、犬の精神的な落ち着きを促します。また、安全で快適な居場所を確保することで、犬は新しい環境に対する恐怖を徐々に克服していきます。

一緒に過ごす時間を増やすことの重要性

保護犬との絆を深めるためには、一緒に過ごす時間を増やすことが不可欠です。時間をかけて犬のペースに合わせて接することで、犬は飼い主の存在を安心の源として認識し始めます。遊びやトレーニングの時間を共有することは、犬とのコミュニケーションを促進し、相互理解を深める機会を作り出します。また、犬がリラックスできるようなケアやマッサージを取り入れることも、絆を強化する助けになります。

保護犬との関係を築くには、時間をかけて、着実に信頼を築いていくことが大切です。愛情と忍耐をもって接し続けることで、保護犬も新しい家族としての幸せを見出すことでしょう。

保護犬は時間をかけて慣れることで動くようになる

保護犬も人間と同じように緊張もすればドキドキすることもあります。特に悲しい過去を持っている保護犬であれば新しい環境に警戒するのは当たり前とも言えます。保護犬との生活が始まって動かなくて困っているのであれば時間をかけてみてください。1ヵ月、3ヵ月と、少しずつ少しずつお互いが寄り添えばきっと心を開いて動いてくれるはずです。