さつまいもを焼いていたら、甘いにおいに誘われた愛犬におねだりされた――。こんな経験をお持ちの飼い主さんもいらっしゃることでしょう。

さつまいもは犬が食べられる野菜です。手作りご飯の具材やオヤツなど、加熱してからストックしておけば何かと便利に使えますよ。

この記事では、栄養豊富なさつまいものどの成分が犬の体に良いのかを、詳しく解説しています。お家で甘い焼き芋が簡単に作れる方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

さつまいもに含まれている犬の体に良い効果が期待できる成分

この章ではさつまいもに含まれている成分の中から、特に犬の体に良い効果が期待できるものについて取り上げました。

炭水化物(糖質)

さつまいも全体のおよそ3割は、炭水化物(糖質)です。

近頃は悪者のような扱いを受けがちな糖質ですが、本来は私たち人間や犬にとっての生命活動を支える大切なエネルギー源。だからこそ、過剰摂取してしまうと肥満や血糖値上昇の原因になってしまうわけですが…。

食べ物を食べると、タンパク質や脂質より先にまずは糖質が分解されてエネルギーに変わります。つまり、手っ取り早くエネルギー補給をするなら、糖質が最も優れているのです。

食物繊維

皮つきのまま蒸したさつまいも100gには、水溶性食物繊維が約1.0g、不溶性食物繊維が約2.8g含まれています。

● 水溶性食物繊維 → 糖質の吸収スピードをゆるやかにする、腸内細菌のエサとなって善玉菌を増やす
● 不溶性食物繊維 → 水分を吸収して便を大きくする、大腸の腸壁を刺激して排便を促進させる

食物繊維は犬の体に良い効果をもたらしますが、気をつけなければいけないのは水溶性と不溶性の割合です。

さつまいもには不溶性食物繊維が水溶性食物繊維の約3倍含まれているため、便秘の解消には効果が期待できる反面、下痢をしがちな犬には大腸が刺激され過ぎて悪化させてしまう可能性があります。

ビタミン類

さつまいもは、みかんに匹敵するほどビタミンCが豊富です。また、その他にも様々な種類のビタミン類が含まれています。

● ビタミンC → 抗酸化作用、鉄の代謝
● ビタミンE → 細胞の酸化ストレス抑制、血行促進
● ビタミンB1 → 神経系の機能維持、疲労回復
● ビタミンB6 → タンパク質分解の補助、免疫機能の維持
● パントテン酸 → 細胞のエネルギー生成に関わる糖と脂質の代謝

ミネラル類

さつまいもには、ビタミン類だけではなくミネラル類も豊富に含まれています。

● カリウム → 細胞の機能正常化(不要なナトリウムの排出)、神経刺激の伝達
● 銅 → 補酵素としてメラニン合成や代謝反応に関与
● マンガン → 細胞のミトコンドリア機能維持に関与、関節軟骨の形成
● マグネシウム → エネルギー代謝全般に関与
● 鉄 → ヘモグロビン・ミオグロビンの構成要素

ヤラピン(ヤラッパ樹脂)

ヤラピンとは、さつまいもを切ったときに断面からしみ出てくる、あの白い液体のことです。その正体は糖脂質――糖を結合した脂質であり、古くから緩やかに便通を良くする効果で知られています。

昔からさつまいもが便秘に効くとされてきたのは、食物繊維とヤラピンの相乗効果だったというわけですね。

さつまいもに含まれているレジスタントスターチにも注目したい!

レジスタントスターチとは、小腸では消化・吸収されずに直腸まで到達する性質を持ったでんぷんのことです。別名「難消化性でんぷん」とも呼ばれています。

レジスタントスターチはでんぷんでありながら、大腸はおろか直腸まで届いてしまうことが最大の特徴。これの何がスゴイのかといえば、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維両方の効果が期待できることです。

そもそも、水溶性食物繊維は小腸を通過して大腸に到達する頃には、善玉菌に食べつくされてしまいます。そのため、大腸を通過して直腸までくると、もはや不溶性食物繊維しか残っていません。

これに対し、レジスタントスターチは善玉菌と短鎖脂肪酸を直腸まで届けてから便として排出されます。つまり、直腸のケアにも一役買ってくれるのです。

とはいえ、さつまいもに含まれているでんぷんのすべてがレジスタントスターチというわけではありません。さつまいも100gあたりで換算すると、レジスタントスターチの含有量はおよそ1.1g程度。

たったそれっぽちと思われるかもしれませんが、わずかな含有量だからこそ犬の大腸や直腸に強い刺激を与えすぎることなく、良い働きが期待できるのです。

ちなみに、レジスタントスターチは加熱によって消化しやすくなりますが、冷めると消化しにくい構造に戻ります。というわけで、愛犬の便秘解消を期待するなら、さつまいもは「加熱してから冷ます」ことが条件です。

犬が食べてもよいさつまいもの適量

さつまいもは栄養豊富な野菜ですが、カロリーが高く糖質の含有量が多いことに注意しなければなりません。

喜んで食べるからといって欲しがるまま与えると、肥満や便秘の原因になるため注意が必要です。

犬が食べてもよいさつまいも(蒸したもの)の目安量(1日分)

● 体重5~10kgの小型犬 → 20~30g程度
● 体重15~20kgの中型犬 → 40~50g程度
● 体重30kg以上の大型犬 → 100g程度

上記はあくまで目安の量。腎臓病や心臓病の犬はもっと少なめにしたほうが安全ですし、お腹が弱い犬は下痢を誘発しないか少量から試すことが大切です。

犬にさつまいもを与えるときに注意すること

さつまいもは犬が喜ぶ栄養豊富な食べ物ですが、与える時は注意すべきことがあります。

● 生のさつまいもは消化に悪いため、必ず加熱してから与える
● 熱々のさつまいもは火傷をする恐れがあるので、必ずしっかり冷ます
● のどに詰まらないサイズにしてから与える
● 子犬は消化管が未発達なため、さつまいもを与えるのは成犬以降から
● 皮は消化に悪いが栄養豊富なため、食べさせるなら粉々に粉砕する
● 干しいもは水分量が少ない分カロリーが高いため、ふかしいも感覚で与えない

さつまいもの甘味を引き出して愛犬と一緒に楽しもう

甘くてホクホクのさつまいもはとても美味しいですよね。しかし、単純に加熱しただけでは期待したほど甘くならないのが現実です。

さつまいもの甘味である麦芽糖を増やすには、酵素が活性化する60~75℃を長く保ちながら加熱しなければなりません。

● レンジで加熱 → 濡れたキッチンペーパーでさつまいもを包み、その上からラップで包んだものを600Wで30分加熱したあと、200Wで12分加熱
● オーブンで加熱 → 濡らしたさつまいもをアルミホイルで包み、160℃で90分焼く
● フライパンで加熱 → さつまいもをアルミホイルで二重に巻き、フタをしてから弱火で15分焼き、ひっくり返してさらに15分間焼く

どの方法も普通に茹でる、蒸す、焼くより甘いさつまいもに仕上がるはずです。愛犬と飼い主さんが一緒に甘いさつまいもを心行くまで楽しめるよう、ぜひ時間をかけてゆっくり加熱してみてください。

さつまいもは犬に人気!飼い主さんも一緒に楽しもう

犬は甘み・苦味・酸味・塩味を感じることができますが、人間ほど味を感じるセンサーが高感度ではありません。

さつまいもは犬の味覚でも甘味が感じられるのに加え、香りも犬好みです。そのため、さつまいもを喜んで食べる犬は多く、手作りご飯の具材やオヤツ代わりにとても使いやすい食材といえるでしょう。

前章では手軽にさつまいもの甘味を引き出す簡単な方法をご紹介しましたが、60~75℃が長時間維持されればされるだけ、さつまいもの甘さを引き出すことができます。

愛犬にさつまいもを与えるなら、本格的に甘さを引き出す調理方法で、飼い主さんも一緒に糖度の高いさつまいもを楽しんでくださいね。