いろいろな性格の人がいるように、犬の性格も様々です。大胆で無鉄砲なことばかりする犬がいると思えば、すぐに怯えてしまう臆病な性格の犬も…。
犬の臆病な性格は生まれ持った気質だけではなく、成長過程で経験する後天的な要因も強く影響しています。両方が複雑に絡み合っているからこそ、一朝一夕で解決できる問題ではないのでしょう。
この記事では、犬が臆病な性格になる原因について解説しています。
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犬はもともと臆病で慎重で用心深い生き物だった
いまでこそ、犬は飼い主である人間に守られて生活しています。しかし、その昔は野生で暮らす生き物でした。臆病であるということは、何事にも慎重であり、用心深いということでもありますよね。
野生下においてはいつ命の危機にさらされるかもわからず、臆病であることは生き延びるために必要な性質だったはずです。
犬が人間と暮らすようになってから、およそ1万5千年。私たちの時間感覚では途方もなく長い年月に思えますが、生き物の性質が大きく変わっていく進化や変化というレベルから見れば、大した時間経過ではないのでしょう。
となると、まだまだ犬の遺伝子には、野生時代に必要だった用心深さがしっかり残っているはずです。
犬は社会化が上手くいかないと臆病な性格になりやすい
臆病な性格の犬が怖がっているのは「変化」です。住み慣れたお家――狭い縄張りの中から一歩外に出れば、外の世界のありとあらゆるものは常に変化し続けていますよね。
行きかう人や動物、通り過ぎる車や自転車、太陽や雲の位置、気温や湿度、風の強弱、におい、物音や騒音など、周囲のすべてが刻々と移り変わっていきます。変化を苦手としている臆病な性格の犬にとって、これほど不安になることはないでしょう。
だからこそ、いろいろな変化を当たり前のこととして受け入れるための「社会化」は、犬にとって大切なのです。
犬の社会化期は、生後3週齢から13週齢(生後3ヶ月)あたりまでが最も重要とされています。この時期に外界の様々な変化に触れることで、柔軟な対応力の基礎を身に付けなければなりません。
そのため、適切な社会化ができないまま成長してしまうと、出会うものすべてに怯えてしまう臆病な性格の犬になりやすいのです。
犬が臆病な性格になる要因はひとつじゃない!
犬が臆病な性格になる要因には、先天的なものと後天的なものがあります。とはいえ、どちらか一方が原因というよりは、その両方が作用することにより、犬の性格が作られているのは間違いなさそうです。
たとえば、チワワはとても警戒心が強く、縄張り意識が強い性質の持ち主。そのため、社会化が充分でないといろいろなことに過敏に反応しがちになり、その結果として臆病な性格になることもあります。
これはまさに、犬種の特性という先天的な要因と、社会化不足という後天的な要因が合わさったことにより、臆病な性格を作り上げたと考えるべきでしょう。
また、同じ母犬から生まれた同胎子であっても、臆病な性格の犬とそうではない犬がいるものです。しかし、生まれつきの性格がそのまま成長後も反映されるとは限りません。
臆病な性格の子犬が適切な社会化により、成長した後は穏やかな性格を獲得することもあります。反対に、生まれ持った性格は臆病ではなかったはずが、その後の成長過程で臆病な性格になることもあるでしょう。
いわゆる持って生まれた気質には遺伝に関わる部分が大きく、ここをどうにかしようとするのは至難の業。しかし、どのように成長していくかも犬の性格を作り上げるうえでは重要な要因です。
むしろ、家庭犬を臆病すぎない犬に育てるには、後天的な要因をより重視すべきなのは間違いありません。
臆病な性格の犬の仕草と行動
臆病な性格の犬が何かに怯えているときにみせる仕草や行動には、一見しただけでは怯えていることが伝わりにくい場合もあります。
悪気なく犬を追いつめてしまわないよう、犬が怯えているときに見せる仕草や行動について知っておきましょう。
● キャンキャンと甲高い声で吠える。
● シッポを足の間に巻き込んで肛門を隠している。
● 腰を下げぎみにした状態で立っている。
● 眠そうには見えないのに、やたらとあくびをする。
● 目を見ようとしても視線を合わせようとしない。
● どこかに隠れてしまう、あるいは隠れようとする。
また、臆病な性格の犬は背中の毛を逆立てて唸り声をあげることがあります。こういった行動は好戦的な性格と勘違いされがちですが、相手が怖いからこそ「どっかへ行ってくれ!」と必死になって威嚇しているのです。
「弱い犬ほどよく吠える」ということわざは人間に対して使うものですが、犬の性質を実によく表しているとも言えますよね。
愛犬を臆病な性格にしてしまう飼い主のよくない行動
愛犬を臆病な性格にしてしまう後天的な要因に、飼い主のNG行動があります。
生まれつき臆病な気質の犬がいることは間違いありません。しかし、愛犬を過度に臆病な犬にしてしまう原因には、次のような飼い主の行動が影響していることが多いのです。
● 愛犬に外界の刺激を与えない……散歩に連れ出さない、散歩は人通りの少ない時間帯に少しだけ、家族以外と触れ合う機会がほとんどない
● 愛犬を怒鳴りつける……吠えるたびに大声で叱りつける、あれもダメこれもダメと大声でダメ出しをして愛犬の動きを抑え込もうとする
● 愛犬が嫌がることを無理強いする……怯えている相手と無理に触れ合わそうとする、嫌がっている場所を強引に歩かせる、無理矢理抱っこしようとする
また、飼い主としては愛犬を大切にしているつもりの行動が、愛犬をより臆病な性格にしていることもあります。
● 愛犬を守り過ぎてしまう……知らない人や犬と出会ったとたんに犬を抱き上げて遭遇を回避してしまう、ドッグランなどの不特定多数の犬がいる場所を避けて通る
● 愛犬と一緒にいすぎる……飼い主がそばにいる時間が長すぎて、犬がひとりになるタイミングがほとんどない
愛犬の安全を守ることは大切ですが、やり過ぎれば飼い主への依存度を高めることになります。どんなに愛犬が可愛くても、適度な距離感を保つことが、ひいては愛犬を余計なストレスから守ることにつながるのです。
臆病な性格の愛犬が安心して暮らせる住まいの工夫
どんなに適切に社会化期を過ごさせたとしても、もともとの性質が強く影響した結果、臆病な性格の犬になることもあります。
また、社会化期を過ぎた月齢から飼いはじめることもあれば、臆病な性格の成犬あるいは老犬などの保護犬を、家族として迎え入れることもあるでしょう。
臆病な性格の犬が少しでも安心して暮らせる環境を作るには、飼い主が一貫して穏やかな態度をとり続けることが大切です。と同時に、お家の中にもひと工夫をして、より安心して過ごせる空間を作ってあげましょう。
● いざという時に逃げ込める安全地帯を作っておく。(ケージ、サークルの中)
● 外の様子が見え過ぎない位置にサークルを設置。どうしても窓の近くに置く場合は、ステッカーなどを貼って曇りガラスにしたり、カーテンをひいて犬が外を見づらくなるように工夫をする。
● 家具の配置を工夫することで、犬の居場所を家族の動線上から遠ざける。
● 玄関、ドアの近く、音響機器から離れた場所に犬の居場所を設置する。
● 犬が過ごす部屋は遮音カーテンにする。
臆病な性格だからといって、犬をかまいすぎるのはNGです。かといって、孤独を感じるような居場所も臆病な性格の犬には向きません。
大切なのはほどよい距離感を保つことであり、それこそが人と犬の双方にとって快適なお部屋をつくるためのポイントです。