国が変われば好まれる犬種にも違いがあります。日本では小型の愛玩犬が圧倒的に人気ですが、欧米では大型の使役犬や狩猟犬が好まれているようです。
私たち日本人は犬に「懐っこい」「従順」などの愛玩的要素を求めがちですが、その反面家や家族を外敵から守る「警戒」の要素はあまり重視していません。
しかし、時には見た目の可愛さで選んだ犬が実はとても警戒心が強く、持て余し気味という残念なケースも。この記事では警戒心が強い犬について解説しています。
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日本では警戒心が強い犬は基本的にあまり好まれない
日本では近隣との距離が近く住宅面積もあまり広くないという住環境から、飼育されている犬の7割以上を小型犬が占めています。
密集した住環境では犬の鳴き声が騒音とされてしまうことも多く、「無駄に吠えない」ことが重要視されがちなのは、ある意味仕方がないことなのでしょう。となると、警戒心が強い性格の犬種が日本で敬遠されてしまうのは、当たり前なのかもしれません。
とはいえ、何かを警戒している犬は、吠えることで仲間に危機を知らせようとしています。それを「無駄吠え」で片づけられてしまうわけですから、犬にしてみればなんとも釈然としない話ですよね。
犬の性格を決める4つの要因
日本では警戒心が強い性格の犬種はあまり好まれない、ということは前項で述べた通りです。しかし、一般的に警戒心が強いとされている犬種が飼いにくいのかといえば、必ずしもそうとは限りません。
同じ犬種であっても警戒心がとても強い犬もいれば、不必要に大騒ぎすることのない穏やかな態度の犬もいます。
では、犬の性格はいったい何によって決まるのかといえば、以下4つの要素が複雑に混ざりあうことで、犬の性格を形作っているのです。
犬の性格を決める要因:犬種の持つ特性
人間と同じように犬も個々の性格に違いはあります。しかし、こと純血種に関していえば、ある程度「このような気質」という共通した傾向が見られることは間違いありません。
なぜなら、「そのような気質」になるように、何代にもわたってブリーディングされてきた結果が、今の犬種の特性として固められているからです。
こういった犬種の特性は、一見したところ失われたように見えたとしても、遺伝子にはいまだしっかり刻まれているはず。普段は穏やかな闘犬が何かのきっかけで咬傷事故を引き起こしてしまうのを見るにつけ、気質は簡単には失われないと実感させられます。
犬の性格を決める要因:性別の違い
一般的な傾向として、犬のオスとメスには性格的な違いがあると考えられています。
● オス……遊び好き、活動的、甘え方がストレート、何度も同じイタズラをして飼い主に叱られる、縄張り意識が強い
● メス……冷静に物事を見ている、甘え方の表現が複雑、あまり同じ失敗は繰り返さない
もちろん、これらはあくまでも傾向であり、すべてのオス犬・メス犬にピッタリあてはまるわけではありません。しかし、多くの犬と接すれば接するほど、どうもこうした傾向があるように感じてしまうのは、飼い主あるあるといえそうです。
犬の性格を決める要因:遺伝的な要素
親犬から体格・体型・毛色・毛質などが子犬へ遺伝するように、ある程度性格的な特徴も受け継がれているのではないかと考えられています。
とりわけ攻撃的・臆病といったどちらかといえばネガティブな性質は受け継がれる傾向が強く、警戒心が強いといった気質も同様です。
ただし、遺伝的と思われる性格はトレーニングで改善することが充分に可能なため、「遺伝だからどうしようもない」とあきらめる必要はありません。
犬の性格を決める要因:環境による影響
子犬から成犬へと育つ環境は、犬の性格を形作る大きな要因です。特に生後3週齢から13週齢は社会化期と呼ばれ、物事に対して柔軟に対応するための力を養う、とても重要な時期といえるでしょう。
この時期に正しく社会化ができないと、本来はあまり警戒心が強くないはずの犬種でさえ、過度に警戒心が強くなってしまう可能性があります。
何か危険なものを避けるうえで、警戒心は必ずしも悪いものではありません。しかし、避けるべきものと避けなくても大丈夫なものの区別がつけられない犬は、周囲を取り巻くすべてを警戒しなければいけなくなるでしょう。
これは、犬にしてみればかなりストレスが強くかかっている、とてもよくない状態です。
警戒心の強い犬が多い犬種グループ
ジャパンケネルクラブ(JKC)では、公認している355犬種を生存目的や形態・用途別に10種類のグループに分類しています。
その中で、警戒心が強い傾向にあるのは次のグループの犬種です。
1G:牧羊犬・牧畜犬
牧羊犬・牧畜犬は家畜を守るためにブリーディングされてきた歴史から、家庭犬として飼育されることの多い現在でも警戒心が強い傾向にあります。
日本で飼育されている代表的な1Gの犬種
● ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
● シェットランド・シープドッグ
● ジャーマン・シェパード・ドッグ
● ボーダー・コリー
● ラフ・コリー
2G:使役犬
使役犬には、あえて警戒心を強くするブリーディングがされてきた歴史から、番犬に適した犬種が揃っています。
日本で飼育されている代表的な2Gの犬種
● グレート・ピレニーズ
● ドーベルマン
● バーニーズ・マウンテン・ドッグ
● ミニチュア・シュナウザー
● ミニチュア・ピンシャー
5G:原始的な犬・スピッツ
このグループの犬は、人の手による改良が比較的少なめであることが特徴です。そのため、犬にもともと備わっている警戒心が今も強く残されています。
日本で飼育されている代表的な5Gの犬種
● 秋田犬
● 甲斐犬
● サモエド
● 柴犬
● ポメラニアン
1G・2G・5G以外の犬種にも、当然のことながら警戒心の強い犬はいます。また、警戒心が強いとされている犬種の中にも、警戒心をどこかに置き忘れてしまった呑気な犬もいることでしょう。
とはいえ、犬が基本的に警戒心が強い生き物であることは間違いありません。大切なのは、警戒心が強くなり過ぎることなく、オンとオフの緩急がきちんとつけられる犬に育てることです。
警戒心が強そうに見えない意外な犬種
こちらの章では、ヌイグルミのように可愛らしい見た目をしているのに、実は警戒心が強いという意外性のある犬種をご紹介します。
ルックスの好みだけで犬種決めてしまった結果、「全然懐っこくない!」「吠えまくって困る!」「うるさくてかなわない!」といったことにならないよう、きちんと性質を理解したうえで犬種を選ぶことが大切です。
見た目は可愛いのに警戒心が強い犬種
● チワワ……体は小さくても犬界随一の気の強さと警戒心の強さを誇る犬種です。
● パピヨン……基本的には穏やかな犬種ですが、一定数かなり警戒心の強い神経質な個体がいるので注意したほうがよいでしょう。
● ポメラニアン……ヌイグルミのような見た目からは想像できないほど警戒心が強い一面を持つ犬種です。
● マルチーズ……犬種解説には穏やかな性格と書かれることが多いものの、かなり警戒心が強い個体が一定数存在しています。
警戒心が強い性格の愛犬と楽しく暮らす住まいのヒント
警戒心が強い性格の犬は、飼い主が上手にコントロールすることで、お家や家族の安全を見守るガードマンになってくれることでしょう。
● 犬が不用意に玄関へ飛び出さないよう、玄関ドア付近にはペットゲートやペットフェンスを設置しておく。(逃げ出しや迷子の防止)
● 窓の外が見え過ぎると四六時中気が休まらなくなるため、愛犬のケージやサークルは窓から離れた位置に設置する。
● 犬の居場所はリラックスできるように、照明が強すぎない場所を選ぶ。
ただし、警戒心が強い愛犬が年がら年中気を張らなくて済むように、「この人のそばにいれば安心だ!」と思える飼い主でいることも大切です。